阿見町立阿見中学校
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平成 28 年度 研究の全体構想
1 主題設定の理由
中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会では,共生社会の形成に向けたイン クルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)の中で「『共生社会』とは,これ まで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が,積極的に参加・貢献してい くことができる社会であり,誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い,人々の多様な在り方を相 互に認め合える全員参加型の社会を目指すことは,我が国において最も積極的に取り組むべき重要 な課題である」と述べている。
また,報告では,インクルーシブ教育システムにおいては,障害がある子どもと障害がない子ど もが同じ場で共に学ぶことを追求するとともに個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して,
自立と社会参加を見据えて,その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる,多様 で柔軟な仕組みを整備することが重要であり,小・中学校における通常の学級,通級による指導,
特別支援学級,特別支援学校といった,連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必 要であるとされている。
本校ではこれらのインクルーシブ教育システムの理念に基づいた,生徒の多様性を尊重した授業 を実施し,基礎基本の定着と自ら学び考える力が身に付いた生徒を育成できるようにするため,教 員の意識変革を含めた校内の研修体制の整備に力を入れてきた。これらの取り組みを確認し,さら なる授業改善に向けて取り組める方法を探るため,本題材を設定した。
2 研究のねらい
インクルーシブ教育システムの理念を意識した授業の実施や環境整備,相互授業参観を通した研 修を通して,多様な教育的ニーズに対応できる教育活動の在り方について探る。
3 研究の仮説
インクルーシブ教育システムの理念を意識し,合理的配慮を提供するための手立てを活かした学 習方法を実施し,教員が互いに授業参観を行いその内容について検討し自身の授業に活かしていく ことができれば,生徒は学習内容の基礎基本を定着させ,自ら学び考える力を身に付けられるであ ろう。
4 研究の内容と実践
(1)基本的な考え方
文部科学省の中央教育審議会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のた めの特別支援教育の推進(報告)」(平成 24 年)の中では「基本的な方向性としては,障害のある 子どもと障害のない子どもが,できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである」と述べら れている。
インクルーシブ教育の考え方としては,教育を行うにあたり障害のある生徒とない生徒は連続 上にあるとし,生徒を「生徒たち全体」ととらえた上で,必要な生徒に対して個々に応じて配慮 することで全ての生徒の学びを保証しようとするものである。
学級の中で一斉授業での学習に困難を抱えた生徒に対して工夫を行うことは,その生徒以外に もよりよい理解に役立つことがある。本校の研修の中で,このようなインクルーシブ教育を意識 した授業を計画・実践し,互いに授業を参観し合うことは学習内容の基礎基本を定着させ,自ら 学び考える力を身に付けるためには大変有効であると考えた。
(2)実践研究
① 授業のユニバーサルデザインについての理解と実践
すべての生徒にわかりやすい授業をめざすために,教室環境の整備をユニバーサルデザイン を意識して行った。
ア 刺激量の調整
視覚による刺激量の調整として,教室前面には月や週の目標,給食関連の掲示物などは掲 示せず時間割表のみにし,簡素化した。
イ 視覚化
授業の場面の中で特に,授業の課題を把握する場面,概念や事象の説明などの場面で視覚 化を進めた。方法としては,板書の他に,拡大した掲示物,ICT を活用した動画や写真の投影 によるものなどである。掲示した課題がどんな場面なのか,生徒にふれさせたい事象がどう いうものなのかなど,言葉だけでは伝えづらいものを視覚的に捉えられるようにした。
ウ 共有化
課題を解決する場面で,グループやペアによる話合い活動を取り入れた。生徒間の意見や 情報交換を促進させ,他の生徒の意見をもとに考えを発展させたり,自分の考えを言葉にす ることで理解を深めたり,助言を得たりできるようにした。
② 授業実践
インクルーシブ教育システムの理念を意識した授業を実施し,相互に参観してその内容につ いて検討することを通して,互いの授業改善に生かした。授業を公開するに当たり,校内研修 のねらいと公開する授業の関連をより明確にするために「本時のねらい」と「本時の見どころ」,
「板書計画」の3点を焦点化した「見どころカード」を作成した。授業公開の際にこれに記入し,
全職員に配付した。「見どころカード」の下にある「授業を参観して」の 10 項目に3段階評価を して,感想を添えて授業者に戻し,互いに学び合えるようにした
ア 指導の実際(各教科における実践の例)
(ア)板書の工夫
外国語(英語)科においては,ペアになって電話での場面の会話文を作って練習し,表現 を身に付ける授業を行った。授業課題を黒板に掲示するとともに,電話による受け応えの 定型文も掲示し,会話をする上で生徒が参考にできるようにした。また,本時の活動の流 れを番号をつけて明示し,生徒が授業の見通しをもって参加できるように工夫した。
(イ)ワークシートの工夫
国語科の授業においては,漢文の読み方を学ぶためのワークシートを用意し,グループ になって話し合いながら,活動を進めた。黒板で確認した約束に従いながらワークシー トの空欄に読む順番の数字を記入していくことによ
り,漢文の読み方の知識を定着させた。
(ウ)ICT の活用
音楽科の授業においては,プロジェクタやイラストを 用いた掲示物を使って楽曲「魔王」の説明をし,グルー プごとにタブレットを用いて鑑賞して役割(語り手,
父,子,魔王,ピアノ伴奏)ごとの音楽的な特徴を捉 える活動を行った。タブレットを用いることで字幕付 きの映像と音で,外国語の歌詞でありながらも楽曲を 違和感なく鑑賞することができた。
【音楽科】タブレットを用いることで 字幕付きの映像と音で外国語の歌詞で ありながら楽曲を違和感なく鑑賞する ことができた。
(エ)教材の工夫
美術科の授業において,八角鏡を作るためのアイデアスケッチを行う授業では,実際の 完成された参考作品を提示した。それにより,彫刻刀による凹凸感を味わい,自分たちが 作ろうとしている作品のイメージを明確にもつことができた。また,グループ形式の活動 を行うことにより,友人の作品を参考にしながら自分のアイデアスケッチが描けるように した。
(オ)少人数形式の授業
数学科の授業においては,基礎基本の定着を目指し て,1学級を2つに分け,複数の教室で少人数指導を 行った。それによりきめ細かな支援が可能になるとと もに,友人同士で支え合い,課題に取り組むことがで きた。複数の定理を使いこなして課題解決に取り組む 授業では,既習の定理をそれぞれの教室で黒板に大き く掲示し,生徒が学ぶ上での材料とした。
(カ)授業形態の工夫
国語科においては,書いた批評文を互いに読み合っ て評価し,ものの見方や考え方を深めるための授業 を行った。ワークシートに「批評文の評価ポイント」
を明示し,それに従って級友の批評文の良いところ,
感想等を記入し,評価の材料とした。机を一対一で 向かい合わせて円形に配置し,生徒相互の意見交換 や教師の助言をしやすくした。黒板には評価のポイ ントについて書いたものを掲示して,級友の批評文 の評価に役立てた。
5 研究のまとめ
通常の学級においてもそれぞれの生徒の教育的ニーズに応じた合理的配慮を考え実践することで,
障害のある生徒ばかりではなく,学級の生徒全体に学習内容の基礎基本を定着させることができ,
教科の学習内容に対する興味関心を高め,自ら考える力を身に付けられることがわかった。
また,様々な教育的ニーズを抱える学級の大部分の生徒に対して,ICT を活用した学習は授業課題 の理解を助け,生徒が興味をもって自ら進んで取り組めることが多くの授業実践から見て取ること ができた。ICT を加えての授業形態・板書の仕方・ワークシートの工夫も有効であり,生徒の実態に 合わせた配慮を加えることができれば,生徒が授業の課題を的確に理解し,級友と共同して課題に 取り組み,学習した内容を定着させることができることが分かった。
6 今後の課題
インクルーシブ教育システムを意識した合理的配慮には,教科や単元によって固定された方法だ けではなく,それぞれの学級,それぞれの生徒の実態に合わせた工夫が必要である。教師が互いに 工夫した授業実践を公開し参観することで,その方法やアイデアを共有し,方法を身に付けていく ことは大切ではあるが,生徒が変われば求められるニーズもその都度異なり,効果的な学習方法も おのずと変化してくる。このことを踏まえた上で,今後も研究を重ね,評価・改善を重ねながら様々 な方法を確かめていく必要がある。
【国語科】机の配置を工夫し,一対一で向 かい合ったペアを円形に配置して生徒の 意見交換や教師の指導をしやすくした。
【英語科】電話による会話の定型文を黒板 に掲示し,生徒が会話の内容を考えやす くした。