1 研究主題
伝えたい事柄や根拠を明確にして自分の考えを表現するための国語科学習指導のあり方
〜単元を貫く言語活動を位置付けた授業の工夫を通して〜
2 主題設定の理由 本校は H27 年度の研究に お い て 特 に
「 読 む 力( 読 解 力 )」 を 身 につけること を課題として
取り組んできた。しかし,H27年度末に行った学力診断のためのテスト(以下:学診テスト)では「読 むこと」に関しては引き続き課題が見られた。また,「書くこと」も平均を下回っている学年が多い。
学診テストのみで学力は判断できないが,「思考力 ・ 判断力 ・ 表現力」の育成は本校の課題である。
そこで今年度は「読むこと」と共に「書くこと」も含めた授業の工夫が必要であると考え,本主題 を設定した。
3 研究のねらい
相手や目的に応じて,自分の考えや根拠を明確にして書き,表現できる力を育てるための国語科 学習指導のあり方を追究する。
4 研究の仮説
単元を貫く言語活動を位置付けた単元を構成し,付けたい力を明確にした学習過程を工夫してい けば,児童は目的をもって文章や資料を読んだり書いたりすることができるようになるであろう。
5 研究の内容
(1)単元構成の工夫をする。
単元を貫く言語活動を位置付けた授業を意識したものとする。例えば第一次から第三次の構成 とした単元では,第一次において単元のゴールを児童に示し,見通しをもたせる。第二次では,
教材を目的をもって読む活動を行う。それらを通して自分の思いや考えを深めたり広げたりしな がら,第三次の自分の表現に適用する。このように,児童が目的をもって言語活動が進められる ようにする。
(2)書く活動を充実させる。
書く時間を確保し,自分の言葉で表現ができるようにする。また,書く観点や目的を明確にして,
戸惑った際に目的に戻ることができるようにする。
① 目的を明確にする。何のために書くのか,誰に対して作成するのか等,目的を明確にするこ とで意欲が高まり,表現を工夫しようと意識することができる。
② 書くための情報や資料を適切に与え,それらから選択できるようにする。
③ 読み手に分かりやすい文章を意識させる。表現は長い方が伝わるわけではないことを知らせ る。長い文,抽象的な文を簡潔に,具体的に表現させる。
【学力診断のためのテスト(国語)の県平均との差と前年度との差(経年)】
6 実践事例(第6学年 説得力のある呼びかけ文を書こう「資料を生かして呼びかけよう」)
(1)付けたい力と単元を貫く言語活動
小学校学習指導要領国語編(H 20 年8月文部科学省)では B(1)イ「自分の考えを明確にす るため,文章全体の構成の効果を考えること」及び,エ「引用したり,図表やグラフなどを用い たりして,自分の考えが伝わるように書くこと」を指導のねらいとしている。書く題材である環 境問題は,他教科との関連や社会的な問題という点から,児童が普段の生活の中でも目にしやすい。
そのため,書く目的をはっきりと意識させやすい教材である。また,図表やグラフ,写真などを 含むさまざまな資料から情報を読み取る力や,読み取った情報を活用して文章を書く力を身に付 けるには適した教材である。
(2)指導の実際
① 第一次
環境問題について知っていることを話し合ったり,環境を取 り扱った動画を見たりすることで,環境に対する問題意識をも たせた。複数の資料から情報を読み取り,効果的な資料を選択 して呼びかけの文章を書くことに意欲をもつことができた。
② 第二次
教材文を読み,それぞれの資料がどのように活用されている か確かめた。特に資料の特徴や文章と資料を対照して,文章構 成を捉えた。種類の異なる複数の資料を読み比べ,効果的に資 料を選択することの良さに気付くことができた。また,資料の 活用の仕方について知り,資料を生かした文章の書き方を理解 できた。
③ 第三次
第二次で学習した資料の活用の仕方をもとに複数の資料を用 いて,環境について呼びかける文章を書いた。図鑑やインター ネットなどの膨大な量の情報を基に必要な情報のみを選択し,
読み取ることは困難であるため,教師独自の自作教材を作成し
た。環境問題の本やインターネットの資料を用いての自作教材は 28 種類の資料を用意した。第 二次で学習した文章の構成をもとにして,事実と自分の考えを明確に表現した文章を全員が書 き上げた。また,作成した文章を児童同士で読み合い,資料の活用の仕方や文章の書き方につ いて良いところや課題について意見を交換することができた。
(3)自作教材の活用について
本単元の学習指導を効果的に行うため,次のような自作教材を作 成した。児童が読み取りやすいグラフ,写真を用意し,文章も読み やすく理解しやすいように書き直した。児童用に自作教材を作成し たことは,児童の書くことへの関心意欲を高め,構成に基づいた文 章を書き上げるには効果的であった。
<資料の主な内容>
異常気象の発生件数,宇宙から見た夜の日本付近,大気中の二酸 化炭素の経年変化,しずんでいく島,産業革命以降に人類が排出し た温室効果ガス,等28種類の資料で6ページになる資料を準備した。
【環境問題への児童の意見】
【構成を明確にしたワークシート】
【教師作成の自作教材】
7 児童の変容
(1)テストの結果から
6年生において ,「根拠に基づいて書く」ことを中心に授業を展開したところ,学期末のテスト や学力診断テストにおいて「資料を基にして考えたことを書く力」や「資料を読み取る力」で大 きな伸びが見られた。
これらのことから,思考力,判断力,表現力に結びつく項目が授業改善によって,伸びてきて いるという結果を得ることができた。
(2)国語学習に関する児童の意識調査から(平成 28 年度1学期と2学期の比較)
㻜㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻠㻜㻚㻜 㻢㻜㻚㻜 㻤㻜㻚㻜 㻝㻜㻜㻚㻜
䛭䛖ᛮ䛖 䜔䜔䛭䛖ᛮ䛖䛒䜎䜚䛭䛖ᛮ䜟䛺䛔䛭䛖ᛮ䜟䛺䛔 㻠㻢㻚㻜㻌
㻟㻞㻚㻜㻌
㻝㻢㻚㻜㻌
㻢㻚㻜㻌
㻠㻜㻚㻜㻌 㻠㻜㻚㻜㻌
㻝㻤㻚㻜㻌
㻞㻚㻜㻌 䠄䠂䠅 ⮬ศࡀ᭩࠸ࡓࡇࢆㄞࡳ┤ࡋ㸪ࡼࡾࡼ࠸⾲⌧
࡞ࡿࡼ࠺ᕤኵࡋ࡚࠸ࡿࠋ
ᖹᡂ㻞䠔ᖺ㻣᭶
ᖹᡂ㻞䠕ᖺ䠎᭶
䠓䠔䠂 ї 䠔䠌䠂 䠒䠔䠂 ї 䠓䠔䠂
㻜㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻠㻜㻚㻜 㻢㻜㻚㻜 㻤㻜㻚㻜 㻝㻜㻜㻚㻜
䛭䛖ᛮ䛖 䜔䜔䛭䛖ᛮ 䛖
䛒䜎䜚䛭䛖
ᛮ䜟䛺䛔
䛭䛖ᛮ䜟䛺 䛔 㻟㻢㻚㻜㻌 㻟㻞㻚㻜㻌
㻞㻞㻚㻜㻌
㻝㻜㻚㻜㻌 㻞㻤㻚㻜㻌
㻡㻜㻚㻜㻌
㻝㻢㻚㻜㻌 㻢㻚㻜㻌 䠄䠂䠅 ⮬ศࡢ⪃࠼ࢆ㐍ࢇ࡛Ⓨ⾲ࡋ࡚࠸ࡿࠋ
ᖹᡂ㻞䠔ᖺ㻣᭶
ᖹᡂ㻞䠕ᖺ䠎᭶
国語の「自分が書いたことを読み直しよりよい表現になるよう工夫している。」について「そう 思う・ややそう思う」と答えた児童は 80%(+2 pt.),「自分の考えを進んで発表している」は,
78%(+10pt.)と増加している。これは,根拠に基づいて書くというテーマのもと授業改善を行っ た結果,児童が書いたことをもとに自信をもって発表したり,言語活動の充実を図るため1時間 単位のなかでも書く時間の確保や短作文を書いて表現する時間を設けてきたりした結果である。
これらのことから,全体的に書くことについての児童の意識が高まったことが分かる。
8 研究のまとめ
(1)研究の成果
伝えたい事柄や根拠を明確にして自分の考えを表現するための国語科学習のあり方を追究する ために,単元を貫く言語活動を位置付けた授業の工夫を行い,次のような成果が得られた。
・ 単元構成の工夫をしたことで,児童は「書く」力が伸びてきており,思考力,判断力,表現力 の育成につながった。
・ 書く時間を確保したことで書くことに慣れてきた。
・ 文章の構成への指導や事実と意見を分けて書くことに重点をおいて指導してきたことにより,
読み手にわかりやすい文章を書くように意識するようになった。
これらの結果,テストで思考力・判断力・表現力に関わる内容に伸びが見られた。これは,単 元を貫く言語活動を位置付けて授業改善をしてきたことによって,児童の意識の変容とともに 「 書く能力」を付けることにつながってきたからである。
(2)今後の課題
国語の研究は今年度で2年目となった。1年目は読むことを中心にした授業改善,2年目は書 くことを中心とした授業改善を研究してきた。テーマにそって重点的に指導したことは児童の力 として伸びが見られている。しかし,教材を使ってそれに関連する並行読書を生かして思考を広 げていく授業の充実にはまだ課題が残っている。教科書の内容からさらに広げていくことで日常 に生かす力が付くと考える。一単位時間のなかで言語活動を充実させ,読む,書く力をさらに定 着させていきたい。