第 1 章 各国の電気事業
第 2 節 ロシア
1. 電気事業の概要
(1) 電気事業供給体制
ロシアの電気事業は1992年8月に連邦会社であるRAO UESが設立され、独占的に電力供給を担っ ていた。水力発電設備、送電設備及び研究開発部門等がRAO UESに移管され、70社に及びエネルギ ー企業を所有し、40箇所以上の発電設備を所有していた。2000年代半ばの需要増に対して発電設備の 増強が不十分であったため、2005年にモスクワ停電を引き起こすに至った。その後RAO UESの再編 が2006年から着手され、発電子会社WGC-5及びTGC-5が分離され、その他の全子会社も2008年1 月までに分離された。最終的にRAO UESは連邦送電会社であるFederal Grid Company of Unified
Energy System(以下、UNEG)に吸収された。結果的に6社の広域発電会社、14社の地域発電会社、
Rushydro(水力発電会社)、ROSATOM (原子力発電会社)、RAO Energy System of the East及びInter
RAO UESが独立事業体として事業を行なっている。このうちInter RAO UESが電力の輸出入独占権
を有している模様であり、フィンランド子会社がRAO Nordic Oyである。
なお送配電部門、原子力発電部門及び水力発電部門は政府の出資関係の下で、株式所有比率が政府系 等で5割を超える構造が維持されている。一方で火力発電会社はドイツE.on、イタリアEnel及びフィ
ンランドFortumや、国内のガスプロムや他の電力会社による買収が進み、グループ化が進行している。
送配電部門はROSSETI(JSC Russian Grids)の系列に整理されている。
図 1-20 ロシアの電気事業供給体制
(出所)各種資料より日本エネルギー経済研究所作成 連邦送電会社(UNEG)
水力発電会社
(Rushydro)
原子力発電会社
(ROSATOM) 発電会社 Inter RAO(国
際取引)
極東地域
RAO Energy Systems of the east
地域配電会社 IDGCホールディング
(持株会社)
地域配電会社
供給保証事業者 販売会社
系統運用会社(SO UES) 市場運営会社(OAO ATC)
発電
送電
配電
小売
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図 1-21 ロシアの政府関係電気事業者の相互関係
(出所)各種資料より日本エネルギー経済研究所作成
表 1-12 ロシア発電会社の所有者
発電会社 最大所有者(2008年) 最大所有者(2011年)
OGK1 Rushydro InterRAO
OGK2 Gasprom Gasprom
OGK3 NorilskNikel InterRAO
OGK4 E.on E.on, InterRAO
OGK5 Enel Enel
OGK6 Gasprom Gasprom
TGK1 Gasprom, Fortum Gasprom, Fortum
TGK2 Sintez Sintez
TGK3 Gasprom Gasprom
TGK4 Kvadra Kvadra
TGK5 IES IES
TGK6 IES IES, InterRAO
TGK7 IES IES
TGK8 Lukoil Lukoil
TGK9 IES IES
TGK10 Fortum Fortum
TGK11 SUEK, Lukoil InterRAO
TGK12 SUEK SUEK
TGK13 SUEK SUEK
TGK14 Energopromsbyt Energopromsbyt
RusHydro ロシア政府 ロシア政府
Rosatom ロシア政府 ロシア政府
(注)TGK:地域発電会社、OGK:卸発電会社、SUEK:シベリア石炭エネルギー、IES:
Integrated Energy Sytems
(出所)IEA, “Russian Electricity Reform 2013 Update: Laying an Efficient and Competitive Foundation for Innovation and Modernisation”, 2013
ROSSETI
(JSC Russian Grids)
JSC FGC UES
(連邦送電会社)
各地域配電会社14社 政府
61.7%
80.6%
RAO Energy System of East(極東電力会社)
JSC Rushydro
(水力発電会社)
74.91%
66.837%
ROSATOM
(原子力発電会社)
SO UES
(送電系統運用会社)
100%
100%
Inter RAO UES
(発電・国際電力取引)
13.76% 18.57%(グループ)
4.92%(グループ)
Inter RAO Capital 13.93%
45%~100%
25.09%
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ロシアの送電設備はFederal Grid Company of Unified Energy System(以下、UNEG)が独占的に 所有している。保有する送電設備は送電線124,000km及び854変電所に達する。ロシアは73の配電地 域に分けられており、Federal Grid はこれら配電会社や大口需要家へ送電サービスを提供している。
UNEGは2001年の構造改革に伴い2002年6月に設立され、ロシア政府が79.55%の株式を所有して いる。2012年11月にプーチン大統領はMRSKホールディング(現IDGCホールディング)がOJSC
Russian Gridに改名して現在の79.55%の保有する株式について金銭授受を介してOJSC Russian Grid
に含まれるべきとする政令に署名した。一方で送電系統運用は System Operator of Unified Energy System(SO UES)、市場運営はOAO ATCが担っている。極東地域ではRAO Power Systems of the east が極東地域の発電、配電、販売を担っている。RAO Power Systems of the eastは2008年7月に設立 され連邦政府が株式の 52.68%を所有しており、カムチャッカ、沿海州、ハバロフスク、アムール、マ ガダン、サハリン地域等、ロシアの国土面積の36%にあたるロシア極東連邦管区で事業を行なっている。
図 1-22 ロシア連邦送電会社 UNEG 送電設備所有地域
(出所)UNEGアニュアルレポート2012年版
送電系統運用者は前述の通り、2002年に設立されたSystem Operator of Unified Energy System(SO
UES)が担っている。ロシア国内は7つの需給運用ブロックに分けられており、相互の連系線潮流を管
理しつつ需給運用が行われている。極東地域はIPS東ブロックに所属しており、広域ロシア系統と連系 線で結ばれている。カムチャッカ地方、サハリン地方、サハ共和国(ヤクート)、チュクチ自治管区及 びマガダン州は広域ロシア系統と連系は行われていない。
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図 1-23 ロシアの需給運用ブロック
(出所)SO UESウェブサイト
2007年11月の連邦法No.250に基づき2008年4月よりOAO ATC(英語表記はJSC ATS)が運営 する卸エネルギー容量市場(WECM:wholesale energy and capacity market)という名称で卸電力市 場、容量市場及び小売市場が構築されており、卸電力市場及び容量市場は価格ゾーンごとに市場が形成 されているが、ロシア欧州地域・ウラル地域が一次価格ゾーン、シベリアが二次価格ゾーンとして指定 されており、それ以外の極東やカリーニングラード地域等は技術的な理由のため市場形成が困難であり、
規制料金で販売が行なわれている。
(2) Inter RAO社の概要
Inter RAO UESは、RAO UESの子会社で海外との電力の輸出入を独占的に行う会社として1997年
に設立された。2008年にはロシア国外の資産および主に国境沿いにある発電資産を買収すると同時に、
MICEXおよびRTS stock exchangeに上場した。Inter RAO UESの取締役会会長はIgor Sechin氏、
副会長はDomitry Shugaev氏が務める。
Inter RAO UESは社員47,000人、5つの部門を持つ。発電部門ではロシア国内の火力発電所を中心
とした発電資産(2013年末現在、46の火力発電所、13つの水力発電所、2つの風力発電所)およびロ シア国外の発電資産を保有する。発電能力は33.4GW、発電量は148.7TWh、ロシアの発電量の約15%
を占める。送電部門はロシア国外のグルジアとアルメニアの送電線網を保有し、総延長は34,265kmと なっている。電力販売部門はアゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、南オセチア、カザフスタン、
中国、モンゴルの電力会社に電力を販売し、輸出電力量は 2013 年実績で 18.4TWh、輸入電力量は
2.6TWhである。その他にトレーディング部門、エンジニアリング部門を持つ。2012年の売上は556.2
billion RUB、EBITDAは26.5 billion RUB。
Inter RAO UESは2013-16の4年間に4,036MWの発電所の新設および近代化を計画している。そ
UES 東 UES シベリア
UES ウラル UES ミドル
ボルガ UES 南
UES 中央
UES 北西
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れぞれの発電所は13-14%のIRR、15年の投資回収を計画しており、この期間の投資総額は 60 億US ドルに上る。また発電事業者からの発電所の買収も計画している。長期計画としては2020 年に向けた
Visionを発表している。それによると2020年までに発電能力を40GWまで拡大し、世界有数のエネル
ギー事業者となることを目指している。その実現にあたってはロシアのエネルギー政策に沿った多様化 した資産の形成と、株主に対する確実な利益実現の両立を目指している。
図 1-24 Inter RAO 社の社内部門
(出所)Inter RAOInvester presentation, October 2013
Inter RAO UESは現在ロシアからの電力輸出入事業に関して独占的な立場を有しているが、これは
法律で決まっているわけではなく、他の事業者が電力の輸出入を行おうをすれば可能である。ただし電 力輸出入事業については契約に関する事項だけでなく、実際の実行能力、市場の規制の対応等が必要に なり、Inter RAO UESは過去の事業における経験が豊富であることから、ロシアでの電力輸出入事業 についての優位性を持っている。一方、ロシア国内の送電線の建設・運用についてはRussian Gridが担 当しており、Inter RAO UESがロシア国内に自前の送電線を建設する計画は無い。
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図 1-25 Inter RAO 社の資産
(出所)Inter RAOウェブサイト
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