第 1 章 各国の電気事業
第 4 節 台湾
6. 国際系統連系
台湾の国際系統連系については、中国、日本、フィリピンなどとの間に系統連系を実現に向けた様々 な構想がある。例えば、中国福建省と台湾本島の系統連系や日本も含むいくつかの民間機関による構想 があるが、台電に対する聞き取り調査によると、台湾側には、こうした国際系統連系構想に呼応するよ うな計画や構想が全くない。一方、中台間の送水パイプラインや天然ガスパイプラインに関しては、政 府間及び民間ベースで具体的な構想や動きが出ており、最近は通信ケーブルの敷設が実現した。また、
台湾と中国のエネルギーや水資源の供給をめぐる協力については、中国福建省に近い金門島との間で計 画や関連インフラの建設が進展しているが、台湾本島と中国との間では未だ行われていない。
(1) 台湾と中国との間のエネルギー及び水供給をめぐる協力
① 福建省と金門島とのLNG供給協力
最近、福建省と金門島の間でLNG協力が展開されることになった。2014年1月17日、台湾の星崴 股份有限公司(Foxlink Groupの子会社)と中海石油福建新能源有限公司(CNOOC傘下の中海石油気 電集団と福建投資集団の共同出資企業)が金門島におけるLNG供給をめぐる協力で枠組協議書に調印 した。福建省から金門島へ天然ガスを供給して島内の酒造業の燃料やバス、発電等に用いる計画である が、中海石油福建新能源有限公司は、当初は金門島へLNGを船で輸送し、将来一定規模に達すれば、
パイプラインによる輸送も検討するとしている。
金門島は台湾本島から158カイリにあり、人口約6万であるが、これまで発電、交通、工業用の石油 製品や民生用 LPG は全て台湾本島から輸送しなければならず、コスト、温暖化ガス排出、大気と海水 汚染等の問題が深刻化していた。枠組協議書の調印式に出席した台湾環保署の沈世宏署長は金門島の
「低炭素島」実験に向け、1人当たり炭素排出量を減らしたい考えである。
但し、台湾と中国の企業間の合意は成ったものの、台湾政府所管部門の認可、承認や場合によっては 法律の改正も必要であり、星崴股份有限公司はLNG 協力が実現するのは早くても2014 年末との見通 しを示している87。
87 中国新聞網、2014年1月17日。http://www.chinanews.com/tw/2014/01-17/5751532.shtml
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② 中国福建省から台湾金門島への水供給
中国から金門島への水供給については、18 年間にわたって中台間に協議が続けられていたが、2013 年8月に、中台間の窓口機関である中国側の海峡両岸関係協会と台湾側の海峡交流基金会との連携によ り、台湾と福建省の水利当局の間で合意が成立し、福建省供水有限公司と金門県自来水廠が事業機関に 指定された。パイプラインの経路は、福建省晋江市の龍湖から同市の圍頭を経て、金門島田埔ダムとす ることが決まった88。
水供給パイプラインのルートと距離は次のようになる。福建省晋江龍湖ダムから海底パイプラインの 入り口の圍頭まで陸上8km、圍頭から金門島の田埔ダムまで12kmの海底パイプラインが敷設される。
田埔ダムからは太湖浄水場と栄湖浄水場までそれぞれ陸上 4~7キロになり、起点の晋江龍湖ダムから 金門市街まで全長25km程度になる89。
図 1-70 中台間の送水パイプラインのルート
(出所)バイドゥ百科
③ 台湾と中国間の海底通信ケーブル
また、エネルギー協力ではないが、台湾と中国との間には、将来の電力系統連系や電力貿易へと発展 する可能性もある海底通信ケーブルがすでに実現している。
88 中国新聞網、2013年9月3日。http://www.chinanews.com/tw/2013/09-03/5236736.shtml
89 バイドゥ百科。
http://baike.baidu.com/link?url=fziWi2iQYT0eIT16L5w-OLj6tBXLStmYDEOaxzlLL5gqTaxmhN7LlW6tzPIz1-jlg35 YViY7tc2TquaZITnV2K
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図 1-71 台湾淡水~中国福州間の海底通信ケーブル「海峡光纜 1 号」
(出所)中国新聞網2014年1月17日
2013年1月に「海峡光纜1号」(淡福海纜)の敷設が完了した。「海峡光纜1号」は台湾の淡水と中 国の福州市長楽を結ぶ台湾海峡横断海底ケーブルであり、全長 207km になる。台湾の中華電信や、中 国の通信キャリア3大手のチャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコムが共同で敷設した。
これまで台湾と中国の間の通信ネットワークは日本や香港を経由しなければならず、通信速度の問題が あったが、直通の光ケーブルにより、迂回の必要がなくなった。
一次エネルギーのほぼ全てを輸入に依存する台湾は、中国を初めとする周辺国との間で、石油・天然 ガス、電力事業など種々のエネルギー協力を展開している。
(2) 石油・天然ガス分野における周辺国との対外協力
石油・天然ガス上流分野では台湾中油公司(CPC)と台塑石化公司(台湾プラスチック)が外国企業と の間で、探査、開発など協力事業を行っている。
その中で台湾近海海域のエネルギー開発については、台湾中油公司が2008年12月、中国海洋石油総 公司(CNOOC)との間で、協力意向書を含む3件の合意文書に調印し、またアフリカの鉱区について も協力を進めることになった。
表 1-35 台湾中油と CNOOC の 2008 年 12 月協力合意内容
(出所)各種資料に基づき作成
調印文書 協力内容
協力意向書
海外探査開発で協力。海外事業への入札や権益譲渡で協 力。天然ガス市場の開発、原油の委託精製、原油と石油製 品貿易で協力協議。石炭探査、石油化学、天然ガス工業の 技術交流、人材研修。
台南盆地と潮汕凹陥部分海域契約区石油 契約(改定)
2010年12月末に満期になる探査期間を延長して、未完の探査
作業を継続。
南日島盆地協議区共同研究協定
面積約9,804平方キロの協力鉱区を対象に、1年かけて協力エ リア内の石油探査データをもとに石油ガス資源量の研究を 進め、共同研究報告を作成。評価報告の結論をもとに、次 の探査や石油契約を行うかどうかを決定。
ケニア9号鉱区一部権益譲渡協定 CNOOC傘下のCNOOC AFRICA LTD.がケニア9号鉱区の作業権 益の30%を台湾中油傘下のOPIC CHAD CORPORATIONに譲渡
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また、台湾中油は中国企業以外にもカナダのハスキー・エナジーとの間で、2012年12月、台湾近海 の石油ガス開発について「台湾海峡台南盆地深海鉱区協力探査採掘契約」に調印し、7 年間で 20 億台 湾ドルを投じて、3段階に分けて探査開発を進めることになった。権益比率は台湾中油が25%、ハスキ
ーが75%であるが、商業価値のある石油ガス鉱床が発見された場合、中油の権益を 50%に増やすこと
になっている90。
その他、台湾中油公司は、アジア地区では、オーストラリアの AC/P21 鉱区(台湾側の権益30%、以 下同)並びにNT/P76鉱区(40%)や、インドネシアのSanga Sanga鉱区(16.67%)、Bulungan鉱区(20%) 、 CB鉱区(20%) 及びArafura Sea鉱区(24.5%)でも権益を得て協力事業を進めている。また、アジア太平 洋地区以外では、米国、エクアドル、ベネズエラ、リビア、チャドでも共同探査開発を進めている91。 また、石油化学分野では、台湾最大の民間企業である台湾プラスチックが中国浙江省寧波北倉経済技 術特区においてポリ塩化ビニルの生産工場を設けており、また、2012年には年産30万トンのアクリル 酸エステル生産工場を建設することを申請、さらに2013年9月には同特区に年産30万トンのポリプロ ピレン生産工場を建設することを決定した92。
(3) 電力分野における周辺国との対外協力 i) 中国における台湾資本の発電事業
中国は、経済成長に伴って拡大する電力需要に供給が追い付かず、電力不足問題が深刻であった1990 年代に、発電事業を外資にも開放し、台湾企業も中国の発電事業に参入した。
台湾資本による中国における主な発電事業には、台湾プラスチックの王永慶会長の投資による漳州発 電所、台湾亜能聯合会春公司と常州武進電力発展公司の合弁による常州亜能熱発電所などがある。また、
台湾聯電集団は山東省済寧市との合弁で華鴻(山東)能源投資有限公司を設け、薄膜太陽電池の生産を 行うとともに、9億人民元を投じて太陽光発電所を建設している。
ii)ベトナムにおける台湾資本の電力事業
前出の台湾プラスチックはベトナムにおいても大規模な投資を行っており、2012年 12月にハティン 省において着工した一貫製鉄所Formosa Ha Tinh Steel Corporation (FHS)に合わせて付属の石炭火力 発電所の建設を進めている。なお、この発電所の取付工事は中国能源建設集団傘下の山西電建三公司が 受注した93。
iii)台湾国内における電力関連の対外協力
台湾南投県所在の名間水力発電所は、民間企業の名間電力股份有限公司が台湾経済部との BOT 契約 により建設した発電所であり、名間電力股份有限公司が 25 年間の経営権を取得している。名間電力股 份有限公司は台湾の中興電工と日本の関西電力の合弁企業である。また、名間水力発電所の水力タービ ンは中国の四川東風電機廠が設計と製造を行い、中国の水力タービンが初めて台湾に納入されたケース
90 台湾経済部ウェブサイト、2012年12月18日。
http://www.moea.gov.tw/Mns/populace/news/News.aspx?kind=1&menu_id=40&news_id=28812
91 台湾経済部能源局「能源局年報」2012年版。
92中国機経網、2013年9月25日。http://www.mei.net.cn/shty/201309/518402.html
93 中国火力発電網、2012年12月3日。http://www.hlfdw.com/a/xingyekuaixun/xiangmujianshe/20121203/17396.html