第3章 実験準備
3.3.2 静電容量圧力計の製作
高圧試料容器の底面には切削加工によりダイヤフラムを形成し,ここを静電容量圧力 計として利用できるようにしてある。試料容器のダイヤフラム中央の変位を取り出すた めにヘソ状の突起を設け,ここに可動電極を接着した。電極の接着にはStycast 2850を 用いた。電極と本体との絶縁を取るために薄い紙片を挟み込む必要があるが,本実験で は薬包紙を用いた。電極にはあらかじめハンダ付けによって同軸線を接続しておく。こ のとき同軸線の外皮がGNDに接続しないよう適切に先端を処理しておく。対向する固 定電極も同様に工作を行って固定部品に接着を行う。
コンデンサーギャップの形成は,固定電極の保持部品と試料容器との間にマイカの切 片を挟み込むことで平行な隙間を作った。あらかじめ固定側電極と試料容器の電極をサ ンドペーパーとラップフィルムで研磨し,周囲の固定部品と同一面となる平滑な平面を 形成しておく。電極の研磨は鏡面仕上げまで行う。マイカは20 µm程度の欠片から切り 出し,同一の厚さの切片を用意する。マイカは電極固定部品に3カ所等間隔に接着し,電 極間の隙間が平行になるよう固定を行った。
静電容量の測定はキャパシタンスブリッジによって行う。今回の実験ではAndeen社
の2550Aを用いて測定した。
Gelsil Transducers
(LiNbO3)
Stycast 1266 Coaxial cables
BeCu Electrode (Brass)
図3.8 ねじれ振り子と音速の同時測定装置
も導電性接着剤(ドータイト)を用いてトランスデューサの電極に固定される。同軸線は
直径0.3 mm のUT8を用いた。試料をねじれ振り子装置に固定するためのケースは固化
したStycast 1266を切削加工し,組み立てもスタイキャストを接着剤として用いて行っ
た。試料は同軸線が試料の外側を回り込む形に整え,スタイキャストケースに固定した。
固定にはRTVゴムを用いた。これは熱収縮による破壊を回避するためである。加工後の 資料の写真を図3.9に示す。白く見えるのがスタイキャストケースで,上部から延びる線 は超音波信号を導出する同軸線である。
ねじれ振り子装置は高Q値が得られ熱伝導性がよい,ベリリウム銅合金を切削して作 成した。測定に用いる振り子は,式2.4.8におけるIcellが小さい方がρs(T)に対する周 波数変化が大きくなるので,この値が小さくなるような設計を行う。共振周波数は1kHz 前後になるよう,式2.4.1,式2.4.2,式2.4.3から形状やロッドの外径,内径を設計した。
切削時には,特にロッド部分の加工には注意が必要である。旋盤における加工では通常の 胴側面の加工のようにバイトを横に動かす加工ではQを高くすることができない。突っ 切りバイトを用いてロッド部分を削り出すようにした。切削加工後,時効硬化処理を施 した。ねじれ振り子のロッドの中心には試料の4He導入ラインと同軸線取り出し経路を 兼ねた貫通穴が加工されている。加工後の写真を図3.10に示す。
超音波測定の用意を施した多孔質ガラスGelsil試料を格納した試料ケースは,このね じれ振り子の試料空間に設置される。同軸線はロッド内を通し振り子の外まで導出する。
振り子ヘッド内への固定には前述した理由により RTVゴムを用いた。試料を固定した 後,振り子の試料容器部分を同様にベリリウム銅合金で切削加工したキャップを用いて
第3章 実験準備
図3.9 同時測定装置に用いた超音波測定試料。超音波測定用の準備を施した多孔体試
料Gelsilを,スタイキャストで作成した試料ケースに格納し,固定している。超音波
信号は極細い同軸線を用いて外部に取り出す。
封止した。接着にはスタイキャストを用いて行い,リークを起こさぬようシールに万全 を期した。
ねじれ振り子装置の組み立てでは共振Q値を落とさぬよう配慮する必要がある。本測 定では複雑な構造の試料を試料容器に収めるため,振動を吸収し共振を妨げる可能性があ る箇所が多くある。Q値を高めるため,まず試料容器内の固定は完全に行った。試料空 間内の同軸線は導電性接着剤を用いて動かぬよう固定してた。試料容器自体も接着剤で 固定される。装置を冷凍機に設置する際には外部からの振動ノイズを遮断するローパス フィルターとして,質量の大きな銅のプラットフォームを介して冷凍機に固定する。試 料空間のシールには,ガスケットとしてインジウムシールを用いた。
また共振を妨げる要因として,ねじれロッド内を経由する同軸線とねじれロッドとの 干渉が上げられる。ロッド内で同軸線が内壁面に接触することで吸収が発生し振動を妨 げることになる。それを防ぐために同軸線は貫通穴の中心を通るように加工し,ロッド の上下で完全に固定するようにした。
図3.10 同時測定装置に用いたねじれ振り子。図3.9で示した超音波測定用の準備を 施した試料はこのねじれ振り子の試料容器内に固定される。同軸線はロッド内を経由 して信号を外に取り出す。
3.4.2 ねじれ振り子測定装置の駆動(検出)電極
ねじれ振り子測定では平板コンデンサーを振り子本体と外部の固定電極との間に形成 し,静電的な機構で振り子の駆動と検出を行う。振り子側の電極は黄銅の切削加工によ り製作し,Stycast 1266によって振り子のヘッド部分に固定した(図3.11)。
外部の固定電極は無酸素銅を加工して製作した。図 3.12に構造を示す。円筒状の外 部電極の中に円錐形の内部電極が固定されている構造である。外部と内部の電極はテー パーではめあわせになるように加工した。電極間の絶縁を確保するためにカプトンテー プの切片を挟み込んである。内部電極と同軸線の心線をハンダ付けし,外部電極も同軸の シールドと導通を取る。内部にStycast 1266を流し込んで固化させ,内部電極を固定す る。振り子の電極と対向する面はStycast 固化後に平面を切削加工により削りだし,サ ンドペーパーとラップフィルムによって電極面を鏡面加工した。
固定電極と振り子の電極間のコンデンサーギャップは十数分の1 mm程度になるよう,
適当な隙間基準を用いて距離を管理,かつ固定電極と振り子電極との間が平行を保つよ うに固定を行う。
第3章 実験準備
(1)ねじれ振り子本体 (2)キャップ
(3)電極
図3.11 同時測定に用いたねじれ振り子の設計
同軸線 内部電極
Stycast 1266
絶縁層(カプトン)
図3.12 ねじれ振り子の固定電極の構造
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図3.13 ねじれ振り子測定のブロックダイヤグラム
3.4.3 ねじれ振り子装置の構成
ねじれ振り子は外部の固定電極と振り子の電極との間に平板コンデンサーが形成され ている。振動の検出と振り子の駆動はいずれも電気的に行われ,電極間に働く電気力を 用いて振動を励起し,同様に電極間隔の変化を静電容量の変化として電気的に検出する。
図3.13はねじれ振り子測定の電気回路の概略と測定装置をブロックダイヤグラムに示し たものである。駆動電極には100V 程度のBIAS電圧が印加されており,外部の信号発 生器から発生させたサイン波の電圧を BIAS電圧に加えることで電極間に周期的外力を 発生させ,振り子がねじれる方向に力を加えることができる。また振動の検出側も同様 に電極にはBIAS電圧を印加してあらかじめ電荷が蓄えられた状態にあり,振り子がね じれる方向に変位すると電極間隔が変化することで,回路に電流が発生し,その電流を電 流AMPで増幅することで,振り子のねじれ変位を検出することができる。