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細孔内の 4 He の超流動と試料状態依存性

図4.21に,本研究で得られたGelsil中の4Heの超流動相図を示す。RUN1とRUN2 の超流動転移温度Tc をそれぞれ¤で示してある。また比較のため山本ら報告の超 流動転移温度と固化融解曲線を重ねて示している[12, 13]。低圧域では二つの測定ではほ ぼ同じ Tc を観測しているが,超流動転移温度の圧力依存性は,RUN1に対してRUN2 には大きな圧力依存性があり,圧力により大きく超流動が抑制されていることが分かる。

図4.22で,RUN1とRUN2で観測された超流動の振る舞いについて比較する。薄膜 領域においては,Tc の膜厚依存性については二つの測定でほぼ一致している。このこと から試料の熱処理の影響は表面積には影響を与えていないと言える。その一方で,超流 動転移に伴う音速の変化 ∆v/v|supについては,RUN2は1.45倍した量がRUN1と一致 している。これは,超流動転移後にも基板の振動から離脱しない成分,χファクターが熱 処理によって減少したことを示唆している。RUN2においては1−χ,すなわち超流動の 測定にかかる成分の割合はおよそ25 %と見積もられる。加圧領域においては,低圧では RUN1とRUN2ではほぼ同じTc を示すが,加圧に従って2測定のTcは離れ,RUN2の 方が超流動の抑制がより大きく観測された。∆v/v|sup も同様な振る舞いが観測された。

このように,事前の熱処理が異なる試料を比較すると,超流動の抑制はそれぞれで異な る振る舞いを見せることが分かった。低圧の圧力領域ではその違いは小さなものである が,圧力の増加とともにその違いは大きくなる。また音波の緩和にかかるパラメーターが 熱処理の差異で増減することが分かる。この機構の寄与による音速変化が,孔内の4He が圧力増加に伴い液体から固体に変わる領域でも連続的な変化を示すことから,この緩

4.5 細孔内の4Heの超流動と試料状態依存性

0.0 1.0 2.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

T (K)

P (M P a)

Tmc* Tfo*

Tc*

Tc (Run 2)

Tc (Run 1)

4.21 多孔質ガラスGelsil中の4Heの超流動相図。RUN1RUN2の超流動転移 温度Tcをそれぞれ˜で示した。比較のため山本ら報告の超流動転移温度と凝固 融解曲線を*に示した[12, 13]

和機構の起源は不活性4He層か,不活性層と孔内4Heとの境界面に由来すると考えられ る。基板の熱処理の差異は基板表面ポテンシャルの状態に影響を与え,そこからさらに 基板に吸着した4He不活性層の状態に差異をもたらしていると考えられる。

ここで,図4.23に,Tc と前述の緩和の量を表すフィッティングパラメーターϵC/2σ0 との関係を示す。ここから分かるように,ϵC/2σ0Tc は,RUN1とRUN2ともに同 じ線上に一致することが分かる。試料の熱処理の差異による超流動抑制の振る舞いの変 化は,表面状態に関連した緩和に関わるパラメーターで説明できる。つまりこの緩和に 関わるパラメーターが同一であるなら,試料の熱処理,基板の状態の変化に依存せず,超 流動の抑制が決定されると言える。これは超流動の抑制現象には,緩和機構の起源であ る不活性層と孔内4Heとの境界面の状態が強く関与していることを示唆するものである。

この場合考えられる描像としては,孔内で超流動に転移する液体4He4Heが壁から感じ る,有効な孔径が不活性層の増減により変化している可能性が考えられる。圧力の変化 により有効な孔径の増減が起こり,超流動の抑制量に変化が発生するというものである。

また,1.3.2節で述べたように,この多孔質ガラスGelsil中の4Heの超流動抑制現象は

0 2 4

0 10 20 30 P (M P a) n ( µ m ol /m

2

)

Run 1 Run 2

(a) (b)

Tc (K)

4

v

=

v

sup

0 0.001 0.002 0 0.5 1 1.5

Run 2â1.45

4.22 熱処理が異なる試料の4He超流動性の比較

LBECによる説明が提案されている。LBECとの関連では,多孔質ガラスGelsilの表面 ポテンシャルの状態がLBECの発現に大きく関与しているといえる。

4.5 細孔内の4Heの超流動と試料状態依存性

0 0.005 0.01

0.5 1 1.5 2

T

c

(K)

Run 1