Ultrasound
Torsional Oscillator
図4.4 同時測定で観測された基板から離脱する吸着膜の質量の割合の比較
伴う音速と共振周波数の変化量について,膜厚ごとに図示したものである。ねじれ振り 子測定では,膜厚がおよそ23.2 µmol/m2までは両温度で膜厚に比例した降下量を示し,
それ以上の膜厚では0.1 K での値は折れ曲がり別の直線に乗る振る舞いが見られる。こ れは超流動転移に伴い,吸着膜の基板振動からの離脱が発生していることが原因である。
二つの温度での値から,実際に基板に存在する4He液層膜のうち,超流動転移に伴い離 脱している割合はおよそ25%と見積もった。一方超音波測定においては超流動転移にと もなう離脱以外に,4Heが基板に吸着したことによる弾性定数の変化とこれに伴う音速 の変化を観測している。低温域での音速降下量は,基板の弾性定数の変化により抑制さ れている。0.1 Kの音速降下量は23.2µmol/m2で上向きに折れ曲がり,これ以上の膜厚 ではほぼ直線に乗る振る舞いを示す。この直線の傾きから,吸着している液体膜の総量 のうち40%の離脱に相当する音速変化であると求められた。
超音波測定とねじれ振り子測定では,基板から離脱する質量の割合が異なって観測さ れている。図4.4に膜厚22.4 µmol/m2 と 27.4 µmol/m2 の測定について,基板からの 離脱量温度依存性の,両測定での比較を示す。音速測定については,Tcより高温側の弾 性定数変化に伴う音速変化について直線であると仮定し差し引いている。図に示される ように,観測にかかる離脱量の温度依存性は二測定の間で異なっている。
4.2 同時測定による多孔質ガラスGelsil細孔中の4Heの超流動の観測
0.0 0.5 1.0 1.5
10 20 30 40
T (K) n (µmol/m2)
Nomal fluid Superfluid
図4.5 吸着膜領域での4Heの超流動相図。比較に山本らの報告を˜に示してある。
薄膜領域での超流動転移温度相図を図4.4に示す。比較のために山本らの報告を重ね て示してある。
4.2.2 加圧液体領域での同時測定
図4.6に,加圧液体状態で測定した,ねじれ振り子測定の共鳴周波数,並びに同時に超 音波測定で測定した音速の温度依存性を示す。音速,ねじれ振り子とも孔内の4Heの超 流動転移に伴う立ち上がりがTcにおいて観測されており,Tcは圧力の増加とともに低 温側にシフトしている。
ねじれ振り子の共振周波数は多孔体試料 Gelsilの孔内に導入される4He の量に比例 する形で減少する。孔内が4Heで満たされた後圧力の上昇に従い共振周波数は減少する が,これは試料容器の内側表面や Gelsilの表面に存在する液体 4He の粘性侵入長分の 質量が,振り子の慣性モーメントに寄与するものである。ねじれ振り子の共振周波数,
約2.43 kHzでは,粘性侵入長は約1.3 µm で,超音波測定の周波数約8.35 MHz では
23 nm 程度であり,バルク液体4Heの寄与はねじれ振り子測定で大きく観測されている。
ねじれ振り子と超音波測定,二つの測定方法の間で超流動の観測量の比較を行う。こ の場合,多孔体試料外に存在する4He が超流動に転移する分の寄与を差し引く必要があ る。ねじれ振り子測定では試料容器内の常流動成分の寄与を周波数変化から差し引く。
その後,それぞれの圧力について,バルク4He の超流動転移温度で規格化し,温度を基
0 1 2 -0.8
-0.75 -0.7 -0.65
T (K) F - Fempty (Hz)
0.13 MPa
0.6 MPa 0.9 MPa 1.2 MPa 1.5 MPa 1.8 MPa
2.1 MPa
2.4 MPa 2.45 MPa
0 1 2
-2.4 -2.2 -2 -1.8
-0.6 -0.4 -0.2 0
0.13 MPa Empty
2.45 MPa
T (K)
∆v/v (%)
Tc
Tc
Tλ (a) Torsional oscillator
(b) Ultrasound
図4.6 加圧領域で測定したねじれ振り子共振周波数と音速の温度依存性の一覧。(a) ねじれ振り子共振周波数は空の状態での周波数からの差分で示してある。(b) 音速は 空の試料の音速v0を基準にした変化量∆v/v0である
4.2 同時測定による多孔質ガラスGelsil細孔中の4Heの超流動の観測
0 1 2
-1.6 -1.5
0 1 2
-3.0 -2.0
(b) Torsional oscillator (a) Ultrasound
0.17
0.96 1.26 1.88 2.31
T (K) T (K)
∆v / v0 (%)
0.17
0.96 1.26 1.88 2.31
F-F0 (Hz)
TC TC
Tλ 0.65
0.65
図4.7 加圧領域で測定したねじれ振り子共振周波数と音速の温度依存性。数字は超流 動転移温度における圧力。ねじれ振り子共振周波数については空の状態で2Kの共振 周波数f0 (2428.684 Hz)からの差分で示してある。音速の図中の点線は欠陥の寄与に よる音速変化。
準に密度比 ρ(1.88 MPa)/ρ(P)を周波数変化に乗じた。適当に調整を行った周波数変化 は,各圧力とも高温側の振る舞いが一つの曲線上に乗る。これをバルク4He の超流動の 寄与として差し引くことができる。バルク4Heの寄与を差し引き,多孔体中の4Heの超 流動の寄与∆fp を求めた。
超音波測定については,音速変化の背景には多孔体表面の4He不活性層がアモルファ ス固体として振る舞うことによる影響が寄与しており,これは格子欠陥の移動にともな う音波の緩和現象として説明される。Gelsilより孔径の大きな多孔質Vycorガラスの測 定では,孔内の 4He の寄与による音速と吸収の変化から格子欠陥の影響が観測されて いる [11]。不活性層としての4Heの影響については報告されていないが,孔内に在する
4He の総量の内,不活性層として存在する割合の違いによると考えられる。Gelsilの場 合,単位体積あたりの表面積が603 m2/cm3 と大きく,孔内に在する4Heの中の不活性 層の割合も 60%と大きいことから不活性層中の格子欠陥の量も大きいことが期待され る。図4.7では欠陥の寄与による音速変化を点線で示してある。温度低下とともに音速 の上昇として寄与し,低温域では飽和する振る舞いを示す。これを全体の音速変化から 差し引くことで孔内の4Heの超流動転移にともなう音速変化∆vp を求めた。
図4.8に,圧力0.96 MPa と2.04 MPaにおける∆vpと∆fpの温度依存性を示す。孔 内の4Heの総量に対する比率で比較するため,4Heで孔内が満たされることによる音速 と共振周波数の変化量∆vf ullと∆ff ullで除した割合で比較する。ここで∆vf ullは圧力 0.17MPaの結果から,∆ff ull は,ねじれ振り子内に在するバルク4Heの影響を考慮して 面密度33 µmol/m2 で孔内が4Heに満たされた状態での結果から求めた[12]。いずれの 圧力でも,超流動転移温度からおよそ0.5 Kまでの間では両測定では離脱量の割合はほ ぼ一致している。この同時測定の結果から,多孔体試料中の4He について,観測される 超流動成分の割合の温度依存性は測定方法に依存していないことが示される。観測され た超流動成分の割合が一致していることから,Gelsil中の4Heの観測では観測周波数に よってχファクター,すなわち超流動転移後にも基板から離脱しない成分の割合は測定 周波数(ねじれ振り子はkHzオーダー,超音波測定では MHzオーダー)に依存してい ないことが示される。ねじれ振り子測定では観測された超流動成分の割合は0.8K以下の 領域では温度依存性が小さくなり,0.5K以下ではほぼ一定となる。一方超音波測定にお
いては,0.5 Kにおいても上昇が観測され,およそ0.8 Kから立ち上がるように観測され
た。0.8 K以下の温度域での音速変化の振る舞いは圧力に依存していないので,これは超
流動成分の寄与によるものではなく差し引かれていない背景の音速変化があることを示 唆する。空の試料での音速測定では,ガラス固有の二準位系(TLS)に由来する音速の
ピークを0.15 K 付近に観測している。TLSによる寄与が低温域における温度依存性に
影響を与えていると思われる。
図4.9に,超流動転移温度Tcの圧力依存性を示す。超流動転移温度は両測定で一致し ていることが分かる。これは山本らのねじれ振り子測定によるGelsil内の超流動の相図 との相違は観測方法が異なることによるものでは無いことを示している。これらのTcの 相違は室温にて行った熱処理が異なることが影響していると考えられる。
観測される超流動成分の割合,∆fp/∆ff ull と ∆vp/∆vf ull の圧力依存性について は,0.5Kにおける結果を図 4.9 に示した。この温度以下では∆fp/∆ff ull は温度依存 性が小さく一定で,絶対零度における超流動成分の割合を示していると期待される。
∆fp/∆ff ull は圧力上昇とともに単調に減少している。音速変化の圧力依存性について
はねじれ振り子の結果と同様な振る舞いを見せるが,全圧力領域については約1.5%異 なっている。この違いは前述した,音速の温度依存性の背景にある音速変化によるもの であると考えられる。音速に寄与するTLSの影響を除いて,観測される孔内の4He超流 動成分の圧力依存性は両測定で一致していると言える。
4.2 同時測定による多孔質ガラスGelsil細孔中の4Heの超流動の観測
0 0.5 1 1.5
0 0.1
0 0.1 0
0.1
0 0.1
T (K)
2.04 MPa
∆fp / ∆ffull
0.96 MPa
∆vp /∆vfull
∆fp / ∆ffull ∆vp /∆vfull
Tortional oscillator Ultrasound
図4.8 同時測定による観測にかかる超流動成分の比較。ねじれ振り子の共振周波数の 温度依存性と音速温度依存性から求めた,観測にかかる超流動成分の割合を比較する。
0 1 2 3
0 0.5 1 1.5
0 2 4 6 8
0 2 4 6 8 T C (K)
P (MPa) Torsional oscillator Ultrasound
∆fp (0.5K) / ∆ffull (%) ∆vp(0.5K) / ∆vfull (%)
(a)
(b)
図4.9 (a)観測されたTcの圧力依存性。両測定で一致している。(b)観測された 超流動成分の圧力依存性。