Run 1 Run 2
C.2 共振カーブの位相回りの補正
αl≪1と仮定すると
A = αlcos{kl} −isin{kl}
{αl}2cos2{kl}+ sin2{kl}a (C.1.24) ここで
k = nπ
l + ∆k (C.1.25)
とおくと,
A = αlcos{nπ+ ∆kl} −isin{nπ+ ∆kl} {αl}2cos2{∆kl}+ sin2{∆kl} a
= αlcos{∆kl} −isin{∆kl}
(αl)2cos2{∆kl}+ sin2{∆kl}(−1)na (C.1.26) ここで∆kl ≪1より
A = αl−i∆kl
(αl)2+ (∆kl)2 (−1)na (C.1.27)
ところで,このAは,式C.1.9の振幅,すなわち往復する超音波の振幅を複素数表現 した時の振幅であった。共振の条件はこの振幅が最大になる点であるので,∆kl = 0で ある。この複素振幅を0◦と90◦ の位相成分に分離して表記すると次式になる。
A0 = ∆kla
(αl)2+ (∆kl)2 A90 = αla
(αl)2+ (∆kl)2 (C.1.28) この式は周波数(k)と振幅の関係を意味している。すなわち共鳴カーブの概形の表現で ある。共振の条件は複素振幅の 0◦ 成分がゼロとなる点であることが計算により確認で きた。
付録C 音波の共鳴状態の解析
る。またバックグラウンドの信号の影響でゼロ点がずれていることもあるので,これも オフセットとして補正する。
検出された信号を2 つの位相成分の和として,次式のように表記できる。(式C.1.9 より)
Y´ =a
(A´90 −iA´0
)
exp (iωt) (C.2.1)
この振幅が,位相がθ だけ遅れているとすると,位相をそれだけ回して戻してやることで 実際の試料内の振幅を求めることが出来る。位相をθだけ進ませると,
Y´ exp (iθ) =a
(A´90−iA´0
)
exp (iθ) exp (iωt)
=a
(A´90−iA´0
){cosθ+isinθ}exp (iωt)
=aexp (iωt)
{(A´90cosθ+iA´0sinθ )−i
(A´0cosθ−A´90sinθ )}
(C.2.2) よって,位相を戻された位相成分は,それぞれ以下のようになる。
A0 = ´A0cosθ−A´90sinθ (C.2.3) A90 = ´A90cosθ+ ´A0sinθ (C.2.4) バックグラウンドをずらしているオフセットの補正は,この位相を補正する計算を行う 前にそれぞれの位相成分から差し引くことにより行う。0◦ 成分のオフセットをXof f set, 90◦ 成分のオフセットをY0f f set とすると,最終的な補正は以下の計算を適用することで 求められる。
A0 =
(A´0−Xof f set
)
cosθ−(
A´90−Y0f f set
)
sinθ (C.2.5) A90 =
(A´90−Y0f f set )
cosθ+
(A´0−Xof f set )
sinθ (C.2.6) 図C.1は,位相回りの補正計算の一例である。点線は直接観測された共鳴カーブをプ ロットしたもので,理想的な共鳴カーブとは異なる形を示している。このままでは正確 な共鳴点を求めることができないので,上式を適用して位相回りとオフセットを補正す る。補正した結果は実線でプロットされたグラフである。
位相回り,オフセットともに,最適な値の決定は実際に計算を試行して「見た目」が最 適になるように求めた。
8.05 8.1 8.15 8.2 -1e-05
0 1e-05 2e-05
Frequency [MHz]
Amplitude [V]
8.05 8.1 8.15 8.2
-1e-05 0 1e-05 2e-05
Frequency [MHz]
Amplitude [V]
(A)
(B)
図C.1 位相調節の前後の共鳴カーブ。信号が経路を伝わり検出器で検波されるまで の経路長の違いなどにより,検出される信号の位相が実際の値より回った状態で観測 される。(A)が実際に測定された共鳴カーブで,(B)理想的な共鳴カーブの形になる よう位相回りとオフセットを調節した後の曲線である。
付録 D
ヘリウム吸着膜のスリップ現象
超流動性を示さない低密度の4He の吸着膜について,4Heが基板振動から離脱し摩擦 を持って運動するスリップ現象が起こることが知られている。これは4Heの原子間力が 小さいため4He原子と基板との結合が離れやすく,基板の振動により基板との結合が切 り離されるものである。本研究の超音波とねじれ振り子の同時測定において,Gelsil基板 に低密度の4Heが吸着した状態で,4He吸着膜とGelsil基板との間の摩擦現象が観測さ れた。