第3章 実験準備
温度測定
試料容器付近には酸化ルテニウム抵抗温度計が取り付けてある。この温度計は温度に より変化する電気抵抗を測定することで温度計として用いられるものである。現在の電 気抵抗とあらかじめ得られている校正表とを比較することで現在の温度を知ることがで きる。電気抵抗の測定には4端子法による交流ブリッジで電気抵抗を測定する温度制御
装置(Lake shore 340)を用いた。極低温では電気抵抗測定の測定電流による温度計の発
熱が無視できない程度に測定に影響を与える。そのため極低温領域では測定電流を小さ くしないと温度が正確に測定できなくなるので注意が必要である。
ヒーター制御
試料の温度を任意の温度に設定し,なおかつその温度に安定させるためには試料を加 熱するヒーターを適切に制御する必要がある。今回測定に用いた温度制御装置では試料 ヒーター制御にPID制御を利用している。PID制御は温度制御だけではなく圧力制御な ど広く使われる制御方法である。
3.6 試料ガスの導入と多孔体試料の孔内の状態
He ガス導入,面密度増加
面密度ゼロ 不活性層 不活性層 + 液相膜
液体 He 導入,キャピラリブロック法による加圧
固体 液体
不活性層 + 液相膜
図3.15 4He導入時の細孔内の様子。空の状態から4Heを導入することで吸着膜の状 態になり,さらに導入量を増やすことで孔内に液体4Heが満たされる。さらにキャピ ラリブロック法による加圧で孔内に固体4Heが満たされた状態を作る。
最低温度領域があり,そこから試料の4Heの固化が始まり細管が閉塞する。このような 状態では試料導入細管内の4Heが固化するため外部から加圧を行うこと,内部の圧力を 知ることはできない。そのため,高圧域での測定ではキャピラリブロック法により試料 の圧力条件の制御を行った。これは,冷凍機を停止し試料を高温にした状態で目標とす る圧力より高い圧力に調整し,冷凍機を作動させて配管の4Heが固化した後に最終的に 到達した圧力を試料圧力とするものである。,キャピラリブロック法による試料の圧力は,
冷凍機内部,試料容器に設置してある静電容量型圧力計で測定する。
3.6.2
4He の試料への導入と制御
測定に用いる試料ガス(4He)は以下の要領で導入した。試料容器には内径0.2mmの キュプロニッケル製細管を接続してあり,クライオスタットの外から試料ガスを導入で きるよう配管してある。内径が非常に小さいので高圧力の下で管が受ける応力は小さく,
第3章 実験準備
Press. Gauge
To Sample
To Vac.RP
LN2 Trap To He Bottle
Sample Gas
Vent Valve
図3.16 試料ガス導入用GHS
ヘリウムボンベから導入した試料ガスは液体窒素トラップを通り不純物を除去され試 料容器へ導かれる。圧力は接続されたガスボンベの圧力レギュレータを用いて調整を 行った。 導入圧力の測定はGHS付属の圧力計を用いた。
本測定で用いる高圧力に十分耐えることができる。冷凍機内に設置されている細管の全 長は約3mであり,細管同士の接続,また試料容器への導入ポート部ではハンダ付けによ り接続を行っている。
試料ガスの操作には図3.16のようなガス操作システム(Gas Handling System, GHS) を製作し測定に用いた。GHS は操作性よく試料ガスの制御,測定作業を行えるよう設計 する。GHSはパネルにバルブ,配管や圧力計など必要な機器が配置され,試料容器への ガスライン,試料ガス源の4Heガス容器,排気系(油回転真空ポンプ,油拡散真空ポン プ)など必要な機器に接続される。配管内部の容積は,外部に体積が既知の標準体積を接 続し,ガスを導入して圧力変化を測定することで知ることができる。試料ガスの試料容 器への導入に際しては,4Heガス中の不純物を除去して純度を確保し,細管が水などの不 純物による閉塞するなどのトラブルを防ぐ必要がある。試料4He ガスの精製には液体窒 素トラップ(コイル状の銅パイプを液体窒素に漬けた構造。パイプ内を通るガスを液体 窒素で冷却,水など固化する不純物を取り除く)を通し,不純物を取り除いた。
多孔体試料に薄膜4Heを生成し面密度を制御するためには面積に応じた物質量の 4He を導入する必要があるが,実際に多孔体試料に吸着した導入試料ガスの計量は,配管内の
体積と試料導入時の圧力変化から求める。また,加圧領域での試料4Heの加圧操作には,
4He ガスボンベの内圧を適当に減圧し利用した。圧力の調節はボンベに取り付けた高圧 レギュレーターとGHSのSetra社製の圧力計により行った。
第 4 章
結果と議論
本研究では超音波測定による音速測定(RUN 1)と,ねじれ振り子と超音波測定を同 時刻に行う同時測定(RUN 2)の,二段階の測定を行った。RUN1とRUN2は同一の試 料を用い,試料準備段階での熱処理方法が異なっている。本章では,各測定方法の基本的 な諸元の取得結果について説明を行い,そして多孔体試料に4Heを導入し孔内に4Heを 閉じ込めた状態で行った超流動測定の結果を,吸着膜状態,加圧液体および固体状態につ いて説明する。同時測定においては超流動性の観測方法依存性について結果の評価を行 う。またRUN1とRUN2の結果を比較し,試料の熱処理の違いが多孔体試料に与えた影 響と,孔内の4Heの超流動性に与える影響について,音速測定の結果を基に議論を行う。