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異種現象間の結合

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A.2 異種現象間の結合

一般に2系に結合がある場合,相互作用はエネルギーの変換の一種である。ここでは 結合は,物理的変数の変化という形で行われる。このエネルギー変換は準静的変換に分類 され,この場合系の自由エネルギー F は2系の物理的状態変数によって一義的に決まる。

今,その系の状態変数(示量変数)を η, χ とする。2系に結合があるという事は自由 エネルギーをこの 2変数で微分したもの 2F/∂η∂χ がゼロでないということである。

F(η, χ) を展開すると

F(η, χ) = 1

2a11η2+a12ηχ+ 1

2a22χ2 (A.2.1)

このとき,一般に k2 = aa212

11a12 を結合係数という。

■ 次に, η, χ に共役な力を(示強変数) H, X とすると,自由エネルギーの全微分は

dF =Hdη+Xdχ (A.2.2)

と与えられ,HX

H = ∂F

∂η , X = ∂F

∂χ (A.2.3)

となり,具体的にこの場合では

H =a11η+a12χ, X =a12η+a22χ (A.2.4) 2式をつなぐ係数 a12 が系同士の結合を表す。また a11, a22は,2つの系のおのおの独立 な定数でスチフネス定数(逆感受率)と呼ばれる。結合がない,2系が独立している場合 では,測定される逆感受率は a11, a22 であるが,結合がある系でもη あるいは χ を一定 にして測定すれば同様の定数が得られる。

ただしこの場合では,一定にした変数を肩に添えて aχ11, aη22 と書く。これらは,相手 方の示量変数の変化を抑制した条件で測定したものであるので,それぞれの系の本来的 なスチフネス定数と考えられる。

■ ところで,式A.2.4は独立変数を (η, χ) にとったが,他に

(η, X),(H, χ),(H, X)にとることができる。式A.2.4を(H, χ)型に変換すると次のよう になる。

η= ( 1

aX11 )

H (a12

aX11 )

χ, X = (a12

aX11 )

H+ (

aη22 a212 aX11

)

χ (A.2.5)

X の表式の χ の係数は,前出の結合係数を利用すると次のように表す事ができる。

aH22 =aη22 a212

aX11 =aη22(1−k2) (A.2.6) これは H 一定の条件で測定される χ 一定のスチフネス定数である。この場合では,相 手の系の示量変数が一定のスチフネスと示強変数が一定のスチフネスは,結合係数によっ て 1−k2 でつながる事がわかる。

A.2 異種現象間の結合

A.2.1 結合のない系の表現

実際の物理の系で独立したものを考え,状態式をどのように表現できるか考察する。

■力学系の表現 力学系の状態を表す変数には,示量変数では歪み Sij ,示強変数では 応力 Tij がある。いずれも2階のテンソルで次のように定義される。

Sij = 1 2

(∂uj

∂xi + ∂uj

∂xi )

(A.2.7) ここで ui は変位である。

応力と歪みの間には弾性的な関係があり,次式で関連づけられる。

Tij =cijklSkl, Sij =sijklTkl (A.2.8) ここで cijkl, sijkl はそれぞれ弾性スチフネス定数,弾性コンプライアンス定数で4階の テンソルである。(B.1を参照されたい。)

■電気系の表現 電気系の状態を表す変数には,示量変数では電束密度 Di と分極 Pi , 示強変数では電界 Ei がある。いずれもベクトルで次式で関連づけられる。

Di =εijEj, Ei =βijDj (A.2.9) 誘電率 εij と,逆誘電率 βij は2階のテンソルである。

A.2.2 複数の系の結合の表現

電気系と力学系に結合がある場合を考える。この場合先に扱ったように熱力学関数か ら出発してエネルギーのやりとりのある2系の結合を考察する。

独立変数として示強変数の組,応力と電場 (T, E) をとると,これに対応する熱力学関 数はギプスの自由エネルギー G(T, E) である。内部エネルギーを歪みと電束密度(示量 変数)の関数 U(S, D) とすると

G=U −TijSij−EnDn (A.2.10) 全微分は

dG=−SijdTij −DndEn (A.2.11)

で与えられ,

Sij = ( ∂G

∂Tij

)

E

, Dn = ( ∂G

∂En

)

T

(A.2.12) 2系が線形で結合している範囲では (0,0) 付近で次式で展開できる。(式A.2.1 に対応 する。)

G= 1 2

( Tij

∂Tij

+En

∂En

) ( Tkl

∂Tkl

+Em

∂Em

)

G (A.2.13)

式A.2.12にこの展開された関数を適用すると,歪みと電束密度について次の関係式を得

られる。

Sij =sEijklTkl+dmijEm (A.2.14) Dn =dnklTkl+εTnmEm (A.2.15) ここで係数 d は圧電定数で,次のように定義される。

dnij =

( 2G

∂Tij∂En

)

=

(∂Dn

∂Tij

)

E

(A.2.16) これは電束密度の変化から応力の変化を結ぶ定数であるが,逆に歪みの変化から電場 の変化を結ぶ定数 dnij を考える。

dnij =

(∂Sij

∂En )

T

(A.2.17) これは逆圧電効果である。効果,逆効果の間に相反則が成り立つのでdnij =dnijとなる。