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質的分析の結果

ドキュメント内 テレビニュースに表象される女性被害者 (ページ 105-130)

第 4 章 テレビニュース内容分析 2(質的分析)

2 質的分析の結果

(1)事例分析

①「宅配便業者強姦事件」(被害者:女性)

・事件概要

2008年1月8日、茨城県神栖市の宅配便業者に勤める佐久間清孝容疑者が婦女暴行の疑 いで逮捕された。容疑の内容は宅配先で好みの女性がいた住宅に後日侵入し、女性に暴行 をした疑いであった。近隣地域では同様の手口で若い女性が被害にあっており、容疑者は ほかにも十数件行ったと供述しているため、警察が裏付け捜査を進めている事件として報 道された。

・報道量

本事件の報道量(3番組合計87秒)は表4-3のとおりである。

表 4-3 「宅配便業者強姦事件」

『ニュースウオッチ9』 『NEWS23』 『報道ステーション』

日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量

1/8 11番 30秒 1/8 11番 37秒 1/8 10番 20秒

・項目分析 a.映像表現

3局とも30秒前後のストレートニュースであり、容疑者が勤めるヤマト運輸営業所の外 観VTRのみでニュースが構成されていた(映像資料4-1、2、3)。

b.テロップ

『ニュースウオッチ 9』と『NEWS23』は見出しテロップ、発話テロップ、名前・肩書 きテロップが使用されている(映像資料4-2)。『報道ステーション』は番組最後のニュース 時に、タイトルテロップとは異なる画面下に帯状のテロップを使用し、発話テロップも同 様の仕様にしている(映像資料4-3)。短いストレートニュースであったが、『ニュースウオ

ッチ9』はテロップで情報源を警察と明示していた。

c.音の演出

『NEWS23』はBGMなし、『ニュースウオッチ9』はストレートニュースを続けて報道 する時に使用されブリッジ音、『報道ステーション』は番組最後のストレートニュースで使 用する金管楽器のBGMを使用していた。

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映像資料4-1 容疑者勤務先(1/8 NHK) 映像資料4-2 容疑者勤務先(1/8 TBS)

映像資料4-3 容疑者勤務先(1/8 テレ朝)

e.音声内容

警察発表の事実が中心であるが、3局すべてテロップ、音声ともに強姦を「女性乱暴」(『ニ ュースウオッチ 9』)、「女性を乱暴」(『NEWS23』)、「女性に暴行」(『報道ステーション』)

となっていた。また『報道ステーション』は「おととし12月茨城県神栖市の20代女性に 乱暴した」という被害者情報を伝えていた。『NEWS23』は「近隣地域では同様の手口で若 い女性が被害にあっている」としていた。

今回の事件は宅配便業者による犯罪であったため、職業記載に注目すると『ニュースウ

オッチ9』はテロップでは企業名を出さず音声と映像でわかるように報道していた。一方民

放2局は「ヤマト運輸」とテロップでも音声でも報道していた。

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②「川口会社員強盗殺人事件」(被害者:女性)

・事件の概要

2007年11月1日、埼玉県川口市のマンションで会社員の渡辺沙織さん(26)が死亡し ているのが発見された。死因は首を絞められた事による窒息死で、後ろ手に縛られ、体に は殴られた跡があった。警察は付近住民の証言等から殺害されたとみて捜査を進めていた。

その後、事件現場近くのスーパーの防犯カメラに、渡辺さんのキャッシュカードを使って 現金を下ろそうとする男の映像が録画されており公開された。同じアパートで7月に1人 暮らしの20代女性の部屋に侵入し同様の手口でキャッシュカードを奪い現金約100万円を おろした事件が発生しており、この映像の男の関与も疑われていた。

12月4日、7月に同アパートで発生した強盗事件の容疑で清田龍也容疑者(39)が逮捕 された。清田容疑者のDNAと渡辺さんの部屋の遺留物のDNAがほぼ一致したが、清田容 疑者は容疑を全面否認していた。

・報道量

本事件の報道量(3番組合計2,307秒)は表4-4のとおりである。

表 4-4 「川口会社員強盗殺人事件」

『ニュースウオッチ9』 『NEWS23』 『報道ステーション』

日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量

11/1 5番 49秒 11/1 2番 183秒

11/2 6番 52秒 11/2 3番 298秒

11/16 3番 187秒

12/4 12番 67秒 12/4 10番 51秒

12/5 2番 278秒 12/5 1番 675秒

12/6 17番 72秒 12/6 4番 44秒 12/6 3番 351秒

・項目分析 a.映像表現

この事件のシンボル映像は、繰り返し報道された事件現場のアパートと、被害者渡辺沙 織さんの顔写真(映像資料4-4、5、6、7、8、9)、防犯カメラに映っていた男の映像、清田 龍也容疑者の顔写真(移送時映像)である。

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映像資料4-4 被害者顔写真(12/6 NHK) 映像資料4-5 被害者顔写真(12/5 NHK)

映像資料4-6 被害者顔写真(11/2 TBS) 映像資料4-7 被害者顔写真(11/2 TBS)

映像資料 ニュース導入部での顔写真(12/5 テレ朝) 映像資料 アイキャッチ映像(12/5 テレ朝)

映像資料4-8 アイキャッチ映像(12/5 テレ朝) 映像資料4-9 アイキャッチ映像(12/5 テレ朝)

105 映像資料4-10 アイキャッチ映像(12/4 TBS)

民放 2 番組は渡辺さんの同じ顔写真を繰り返し使用していた。渡辺さんの顔写真に徐々 にズームしていく表現が『ニュースウオッチ9』、『報道ステーション』で見受けられた。『報 道ステーション』は CM をはさんで同じニュースを報じる際、CM 直前にアイキャッチ映 像を挿入するが、その際に渡辺さんの写真を使用した(映像資料4-8、9)。一方『NEWS23』

は清田容疑者が逮捕された日に事件現場映像をアイキャッチとして使用している(映像資 料4-10)。

また、清田容疑者逮捕時には川口警察署の映像、清田容疑者移送時の映像が 3 局で使用 されている。

事件発生から容疑者逮捕までは渡辺さんに関する証言のみであったが、容疑者逮捕を境 に容疑者関連のインタビュー映像と容疑者の顔写真が一気に増える。そして事件を説明す るために地図などが用いられた。

なお、『ニュースウオッチ 9』と『報道ステーション』で容疑者逮捕後防犯カメラの男と 容疑者が同一人物か、という部分で両者の映像を交差させる同様の表現が確認された。

b.画像素材

防犯カメラの映像が3局とも使用されていた。『報道ステーション』のみこの映像が公開 された日に取り上げており、捜査本部の電話番号をテロップで明示し情報提供を求めてい る。しかし、防犯カメラの映像であるとテロップで表示しているのは『ニュースウオッチ9』

のみで、民放 2 局は防犯カメラの映像であると音声やテロップで断りを入れてから放送さ れていた。

また、『ニュースウオッチ 9』はイメージ映像使用時には「イメージ」とテロップを表示 し他の映像と区別していた。『報道ステーション』は容疑者逮捕後犯行状況の再現映像を使 い、事件概要を説明していたが、再現映像という断りのテロップは見受けられなかった(映 像資料4-11)。

事件の位置関係を示すために『ニュースウオッチ 9』は空撮による鳥瞰図を用い、『報道

106 ステーション』はCGを用いていた。

映像資料4-11再現映像(12/5 テレ朝)

c.テロップ

3 局ともにタイトルテロップ、見出しテロップ、発話テロップ、名前・肩書きテロップ、

日付・場所テロップが確認された。特に、警察の今後の捜査情報については明示する傾向 がある。

d.音の演出

BGMを使用していたのは唯一『報道ステーション』であった。12月4日容疑者逮捕の 速報時以外、すべてのニュースでBGM使用が確認された。特に事件概要説明時に多く使用 され、恐怖をあおるような、あるいは謎めいたBGMが確認された。また、再現映像時には 鋭い金属音の短い効果音が挿入され、映像表現と一体となり、ドラマのような演出をして いた(映像資料4-11)。

e.音声内容

『NEWS23』はインタビューが少なく、警察発表に基づくニュースが多かった。『ニュー スウオッチ9』と『報道ステーション』は現場にアナウンサーを派遣し、インタビュー内容 から、犯行動機が借金を苦にしたものであり、容疑者の人柄はおとなしく、近所づきあい をしていた普通の人、という説明をする傾向が見受けられた。その中には同一人物へのイ ンタビューも確認された。

女性被害者の遺体発見時の様子について『NEWS23』と『報道ステーション』は「コー トを着たまま、黒のカーディガンで両手を後手に縛られる、頭には黒いストッキングを巻 きつけられた状態でベッドの上で死亡していた(首には手で絞めたような跡(『報道ステー ション』))」と報じていた。

一方『報道ステーション』は容疑者逮捕後、ドラマ仕立てのストーリー演出が確認され た。さらに古舘キャスターによるニュース冒頭や最後のコメント、仕草はニュースに意味 づけをするものであった。たとえば12月5日、容疑者が逮捕されトップニュースで報じら

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れた日に古舘氏は被害者と容疑者の顔写真を背景に、「憎むべき事件が動きはじめました」

と語り始め下記の発言とともにニュースが始まった。

古舘「憎むべき事件が動きはじめました。上に出ています埼玉県川口市のワンルームマ ンションが連なっているアパート群、ここで今年の 7 月ある女性が強盗事件に遭 いました。その容疑者として逮捕されたのがここに映っております清田容疑者で あります。そして同じアパート群こちらに映っている渡辺沙織さんが殺害されま した。そしてこの横に映っているこの写真、この男はですね実はこのあと近所の スーパーでこの渡辺沙織さんの所持していたキャッシュカードで金を引き出そう としたときスーパーの防犯カメラが捉えていた男の写真であります。果たしてこ の男と清田容疑者は同一人物として一致するのかどうか」

ナレーション

「真夜中の住宅街、静寂は突然の喧騒に破られた」

(中略)

古舘「被害にあわれた女性の恐怖、苦痛ってことを想像しますとね、何もないですね言葉 がね」

河野「ほんとに卑劣ですよね」

古舘「ですね」

このコメントのあと、古舘は本事件が特異な事件ではあるが、と断りを入れた上で、社 会システムが乱れ人の心も劣化して、女性の叫び声を聞いても警察に通報しないような世 知辛い社会に日本がなっていると述べた(12/6 にも同様のコメントをニュースのまとめ として述べている)。

③「千葉不動産会社経営者殺人事件」(被害者:男性)

・事件概要

2008年1月17日、千葉県市原市で不動産会社を経営する永野武さん(78)が、事務所 内で刃物で刺され血を流しているのが発見された。病院に運ばれたが死亡が確認された。

・報道量

本事件の報道量(2番組合計248秒)は表4-5のとおりである。

表 4-5 「千葉不動産会社経営者殺人事件」

『ニュースウオッチ9』 『NEWS23』 『報道ステーション』

日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量 日付 放送順位 報道量

1/17 9番 29秒 1/17 1番 219秒

ドキュメント内 テレビニュースに表象される女性被害者 (ページ 105-130)