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ダーの視点で論じられることは少ないため、重要であると思われる。その際、内外の倫理 綱領・ガイドラインを参照する。そこからジェンダー・センシティブな項目について考察 する。ジェンダー・センシティブとは、ジェンダーに配慮すること、ジェンダーの差に敏 感であることとする。
民間や当事者による報道被害の救済については、第 6 章でメディア・リテラシーやメデ ィア教育とともに、社会の各セクターにおける取組みの中で論じることとする。
なお、第 5章・第 6章における分析視点の1つに被害者学2)を用いている。被害者学は 被害者と加害者についての研究だけでなく、被害という現象とその救済についても重要な 研究課題としている。本稿はテレビニュースにおける被害者の描かれ方、およびそれに付 随する報道被害を分析対象とし、その問題点を明らかにしてきた。犯罪などの二次被害と して起こる報道被害を回復するための支援や対策、その他活動について被害者学には参考 とすべき研究が数多くある。そのため「犯罪学的視点」ではなく、「被害者学の視点」を用 いて救済方法を考えていく。
被害者学では被害の定義をめぐり大きく 2 つに分類する。それは狭義(犯罪被害のみ)
と広義(被害全般)である。さらにこれを分類して 4 つの立場がある。第一の立場は、法 律上の犯罪被害に限定する最狭義の被害である。第二の立場は犯罪全般の被害を範囲とす る狭義の被害。第三の立場は、犯罪のみならず何らかの違法行為を範囲とする広義の被害 である。第四の立場は全ての被害を範囲とする最広義の被害である。最近の被害者学の動 向は「被害」を広義に捉え、犯罪被害だけでなく何らかの違法行為の被害、あるいはすべ ての被害を含めた考え方になってきている。広義の被害概念の典型例としてはセクシャ ル・ハラスメントや悪徳商法、公害や騒音などの環境被害、プライバシーの侵害などがあ げられる。本稿で研究対象となる被害者は、セクシャル・ハラスメントや悪徳商法による 被害を含んでいる。
1 司法による救済
司法による救済は、大きく分けて刑事上および民事上の救済の 2 つある。刑事上の対応 としては名誉毀損罪等での告訴である。民事上の救済としては、①仮処分による差止め② 訴訟、に大きく分けられる(第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会2010:135)。
刑事上の救済措置として刑法 230 条では、名誉毀損の罪は①他人の社会的名誉(人に対 する社会一般の評価)が、②不特定または多人数が認識しうる状態で、③具体的事実を告 げることにより、害される危険性が生じた場合に成立する。この場合 3 年以下の懲役、も しくは禁錮または罰金となっている。
民事上の救済措置としての、①仮処分による差止めは、名誉毀損やプライバシー侵害と なる新聞・放送・雑誌記事等により報道されることを事前に知っている場合、それにより 被害を受けることを予測する者は、裁判所に記事の事前差止めを求めることができる。差
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止めの事例として、政治家・田中真紀子氏長女の離婚記事が掲載された『週刊文春』の販 売差止めがある3)。
表 5-1 刑事・民事における報道被害の救済
法律 罪・措置
刑事 名誉毀損罪 侮辱 信用毀損
民事 ①仮処分による差止め
②訴訟
・損害賠償
・原状回復措置(謝罪広告、訂正放送)→民放 723 条謝罪放送 放送法 ※訂正/取消し放送
②の民事による訴訟は、損害賠償と原状回復措置に分類できる。前者では、マスメディ アによって名誉・プライバシーが侵害された場合、その救済手段として損害賠償請求が考 えられる。民法 709 条、710 条に基づいて行われ、財産上の損害の他、精神的な損害に対 しても認められる。名誉・プライバシー侵害の場合は、精神的な損害に対する賠償(慰謝 料)が中心となる。
損害賠償が主として金銭による解決であるのに対し、原状回復措置は名誉や信用を元に 戻すための情報による解決手段である。その中の 1 つ謝罪広告は、名誉を毀損した者が自 らの誤った発言により名誉を傷つけたことを謝罪する広告のことをいう。民法 723 条は、
裁判所が損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命 ずることができることを定めている。しかしながら、謝罪は一定の道徳的判断に基づく行 為であるため、憲法19条が保障する思想・良心の自由との衝突が問題となる。このような 問題点を回避するため、これに代わる救済手段として提案されているのが、反論文や判決 文(要旨)の掲載の義務づけである。
また、放送法4条1項は、虚偽の放送により他人の権利を侵害した放送事業者に対して、
訂正・取消放送を義務づけている。報道被害者が放送法に基づき訂正または取消しの放送 を求める権利を有するか否かについては、『生活ほっとモーニング』事件で争われた。この 事件は、NHK総合テレビ『生活ほっとモーニング』(1996年6月8日放送)の特集「妻か らの離縁状・突然の別れに戸惑う夫たち」、に出演した男性の離婚した元妻が、離婚の経緯 や離婚原因に関して真実でない放送がされたことにより名誉棄損、プライバシー侵害によ る慰謝料等の支払と、謝罪放送および訂正放送を求めたものである。2004年最高裁判所は、
名誉を棄損された元妻が、放送法による訂正放送などを求める権利はない、と判決を下し た4)(長谷部恭男2005:196-197;ミドルトン2010:131-132)。この判例は、報道被害者 が裁判によって訂正放送を勝ち取ることが困難であることを示している。
前述したように、報道被害者は名誉毀損・プライバシー侵害、肖像権の侵害等を理由に
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裁判所に訴訟を提起することができる。しかし、訴訟の場合、期間を要するだけでなく、
相当な費用がかかる。また、裁判時にはそれまで公開されていなかった個人情報や不名誉 な情報を示唆するような証拠が法廷において被告側から提出されるため、被害者の屈辱感 や困惑が増大するおそれもある。
そこでそのような法による救済でなく、裁判所以外の独立機関において迅速に、かつ費 用をかけずに救済を受けることができる制度ができている。これについて次節で述べる。
2 行政による救済
近年、マスメディアによる名誉・プライバシーなどの人権侵害に対し、法務省の人権擁 護局がこれを人権侵犯事件として調査し、報道機関に対して勧告を行うケースが増えてい る。また総務省による行政相談・行政苦情救済制度も存在する5)。
警察による犯罪被害者支援も行われている。事件発表時に匿名を希望することもできる が、対応は各警察や被害の程度により異なる6)。被害者自宅周辺や葬儀会場での集団的過熱 取材への対応では、大阪教育大付属池田小児童殺傷事件での以下のような事例がある。
「会場前には葬儀場の警備員に加えて、約10人の警察官が張り付いていた。報道関 係者が近づくと『遺族の意思なので』と立ち去るよう求められ、私たち(報道陣※筆 者注)は片側二車線の道路を隔てた位置から見守った。法要は二階で行われ、中の様 子は何も見えない。出棺の時も車の出入り口に白い幕が張られ、最後まで遺族の姿を 見ることはできなかった。(中略)現場の責任者らしい私服警官は『遺族の気持ちに配 慮して、すべての葬儀場に警官を配置した』と話した」(徳山喜雄2005:21)。
このように、報道被害者に対する救済が行政でも行われている。特に警察による犯罪被 害者支援では、メディア関係者を上記のように排除する方向に向かう時もあれば、マスメ ディアの代表による取材や記者会見開催時の調整窓口となる場合もある。
3 日本のマスメディアによる救済システム
マスメディアの自主的な救済システムは、マスメディアの取材・報道活動に対する国家 権力(法律・裁判所、行政等)の介入を極力回避するために、被害者が法的救済手段に訴 え出る前に、まずマスメディアの自主規制によって「報道被害」に対する救済手段を提供 しようとするものである。その目的は、国家権力から報道の自由・編集権の保持、マスメ ディアと視聴者間の信頼関係と相互コミュニケーションの構築・維持をすることにある。
このようなマスメディアの自主規制による救済システムは、メディア・アカウンタビリ ティ制度(Media Accountability System、MAS)と呼ばれる。メディア・アカウンタビリ