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女性被害者報道の機能

ドキュメント内 テレビニュースに表象される女性被害者 (ページ 134-138)

第 4 章 テレビニュース内容分析 2(質的分析)

4 女性被害者報道の機能

前述してきたように、テレビニュースで表象される女性被害者には様々な特徴が見出さ れた。それらからテレビニュースにおける女性被害者は視聴者に対し以下のような機能を 果たしていると考えられる。

①サスペンスドラマ機能

女性被害者報道は、テレビ画面の前で犯人捜しをする視聴者を生み出す。捜査の進展を 逐一報道し、犯人探しの手掛かりとして被害者情報を報道することは、まるでニュースの 中でサスペンスドラマが展開し、視聴者が犯人を探す刑事や探偵、もしくはジャーナリス トの 1 人となっているかのような錯覚を生みだす。そして事件の社会的重大性よりも、犯 人探しや物語性に重点を置き、娯楽化された女性被害者報道は、「女児」「少女」「女性」「妻」

「母」といった女性性を作り出し、被害者のプライバシーと被害内容を結びつけ女性のニ ュース・バリューを高めていく。

たとえば本調査期間中に起きた祖母と孫娘二人が祖母の義弟によって殺害された「香川 殺人事件」。当初、被害者3人が行方不明で、加害者不明事件であったため、容疑者逮捕を

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含め3番組で34回報道された。その際、捜査の進展や被害者のプライバシーが「幼い姉妹」

「働き者で孫をかわいがる祖母」と結びついて報道されたのである。

②感情増幅機能

女性被害者報道は、受け手の感情を喚起しやすい。たとえば幼い姉妹と祖母が犠牲にな った上述の「香川殺人事件」は、被害者の幼さと無垢さが容疑者憎しの感情や、かわいそ う、といった同情を視聴者から引き出しやすい。また「川口会社員強盗殺人事件」では、

若い女性の 1 人暮らしの恐怖をあおるような報道となっている。さらに、女性被害者の顔 映像や動画は、ニュース内で繰り返し取り上げられ、その事件を象徴するシンボル映像と なる。

③支配的コード付与機能

主流メディアの送り手は、「支配的コード(dominant code)」に沿った女性被害者像を作り

上げる。S.ホールはメディア表象を一義的なものとして捉えるコミュニケーションモデルか

ら、コミュニケーションの実践の際に、「エンコーディング」と「デコーディング」を行う

「記号論モデル」を提起した。「記号論モデル」において受け手はメッセージの意味を構築 する。この時、主流メディアのメッセージには支配的権力に都合のよい「優先的意味付け

(preferred meaning)」がなされる傾向があると述べている。

テレビニュースは記者や制作者の価値観に基づき女性被害者を多く取り上げ、「支配的コ ード(dominant code)」を社会に流布する。この「支配的コード」には支配的権力つまり主 流メディアの送り手に都合のよい「優先的意味付け(preferred meaning)」をし、女性被 害者にまつわる社会規範やジェンダー秩序を付与する。この「支配的コード(dominant code)」

は、女性は報道される客体である、という記者や制作者の価値観がある。そして身体的犯 罪(家族内での殺人やストーカー殺人、強盗殺人やいじめによる死)、性的犯罪(強姦やわ いせつ)、経済的犯罪(詐欺等)は、記者や制作者たちの価値観に基づく善悪の境界の提示 であり、社会の規範的枠組みを示している。つまり、日本の被害者報道は、性的犯罪(強 姦やわいせつ)、経済的犯罪(詐欺等)の被害者は「客観報道型」がより多く客観的に叙述 されることが多い。一方、身体的犯罪(家族内での殺人やストーカー殺人、強盗殺人やい じめによる死)は、「ヒーロー/ヒロイン型」に分類されかわいそうな女性被害者として報 道される。

しかし、母性神話や性規範を逸脱した場合は「悪女型」として報道される。たとえば「秋 田連続児童殺害事件」は母性神話逸脱の典型である。子殺しによって容疑者は社会規範を 逸脱した「悪女」として報道される。ひとり親家庭の抱える金銭的・精神的問題には触れ られない。また、離婚した夫(殺された子どもの父)についても触れられない。母親はど んな理由があろうとも母性によって子を慈しみ育てる母性神話から逸脱したためにこのよ うに報道されるのであろう。

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「替え玉殺人」は、男や女を破滅させる性規範逸脱の典型である。女性容疑者が財産目 当てで年齢の離れた男性被害者と結婚し、替え玉殺人を行った「悪女」として描かれ、夫 である男性被害者、夫の替え玉だった男性被害者たちについては、夢や希望、人柄には触 れられないのである。

このように、ニュースの選択と表現において男性中心社会の「支配的コード(dominant code)」が流布されるのである。ニュースはジャーナリズムとしての独自の理念を持ちなが らも、以上のようにテレビメディア特有の娯楽的機能や権力行使の機能を果たしているの である。

しかしながら、人権意識やメディア・リテラシーを持った視聴者や多様なアクティブ・

オーディエンスによって「交渉的な読み(negotiated reading)」「対抗的読み(oppositional reading)」(Hall1980:128-138)が存在する可能性が一方ではある。その読みが送り手側 に反射されることがあれば、それはジェンダー・センシティブな女性被害者報道への可能 性が開かれるが、その議論と検証は本論文の範囲を逸脱するので、ここではその可能性に 言及することにとどめる。

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1) 1つのニュース内で、そのニュースの概要、事件名を表したテロップ。通常、各ニュー スの一番最初に、ニュースを伝えるキャスター・アナウンサーとともに画面下に表示 される大きなテロップ。

2) 1つのニュース中で、そのニュースの概要を表す画面上部に表示されるテロップ。ほぼ ずっと表示されているが、映像表現や内容の変化によって文言が変わることもある。

3) キャスターやアナウンサーの読み上げるニュース原稿や、インタビュー時、被取材者の 会話内容を表しているテロップ。

4) 当該ニュースに登場する人物の名前や肩書等を明示するテロップ。

5) 主に場所やVTR映像の日付等を明示しているテロップ。

6) 「沖縄少女暴行事件」は、外交問題に絡む問題であるため、質的分析対象からは外す。

「時津風部屋力士死亡事件」は、最も多く報道されたニュースであるが、女性被害者 の比較対照がないため参考にとどめる。

[注]

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ドキュメント内 テレビニュースに表象される女性被害者 (ページ 134-138)