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ジェンダー視点からの研究課題の考察

ドキュメント内 テレビニュースに表象される女性被害者 (ページ 130-134)

第 4 章 テレビニュース内容分析 2(質的分析)

3 ジェンダー視点からの研究課題の考察

ここでは第2章でまとめたジャーナリズムにおける5つのジェンダー・バイアスと3章 のはじめで設けた研究課題の考察を本章の質的分析結果から行う、次いで被害者報道の質 的問題点を指摘していく。

①送り手のジェンダー・バランスの偏り

送り手のジェンダー・バランスの偏りについては、ニュースの伝え手に関して一部認め られた。『ニュースウオッチ9』と『報道ステーション』はコ・キャスター制、『NEWS23』

は複数のキャスター制をとっている。その中で女性キャスターはニュース導入部、または フラッシュニュース等で原稿の読み手として主な役割を果たしていた。男性キャスターは ニュースの解説やコメントをすることによってニュースへ意味づけをすることが多かった。

特に、『報道ステーション』の女性キャスターは、男性キャスターのコメントに同意するこ とが多く、この傾向が認められた。男女のキャスターが大差なくニュース原稿を読み、コ メントする『NEWS23』でも、最も権威あるキャスターは新聞記者出身の男性であるため、

この傾向が一部認められた。また、被害者報道のナレーターの多くは男性で、事件現場に 出るレポーターやアナウンサーもほとんど男性であった。

これはもともと記者・レポーターに女性が少ないという数の問題でもある。画面に登場 するキャスターやアナウンサーに女性が多く起用されることも重要であるが、同時に、実 際に取材やインタビューを行う記者やレポーターや、編集や番組制作の場面で意思決定で きるディレクターやプロデューサーの地位に、女性が就くことはさらに重要な課題である。

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②RQ1:NHK と民放の被害者報道量

3番組共通の傾向は、1つのニュースの報道時間が長くなればなるほど、ドラマのような ストーリー展開で被害者のプライバシーが事件の手がかりとして語られ、インタビューの 多用により、“かわいそうな被害者”への受け手の感情喚起を促す点である。ただし、テロ ップやCGや地図、再現映像やイメージ映像、BGM・効果音を駆使したニュース演出をす るのは民放2番組である。『ニュースウオッチ9』は音の演出に関しても民放と比較して限 定的であった。ただし、イメージ映像や再現映像使用時『ニュースウオッチ9』はテロップ でその旨表示し、注意を促しており、ドラマのような演出には慎重な姿勢を示していると いえよう。

③RQ2:被害者報道の情報源

情報源を「官公庁等」(発表モノ)に依拠する時、「客観報道型」は、必要最低限の事実 のみ報道する。一方、「ヒーロー/ヒロイン型」は、被害者のプライバシーや人柄、夢・希 望等についての情報が事件を物語化する。これらの情報は取材活動によって得るものと推 測され、事件関係者等のインタビューで語られる傾向にある。このように事件の背景や問 題を報道しない被害者報道、あるいはドラマ仕立ての娯楽化された被害者報道は、ジェン ダー・センシティブな内容は取り上げにくい。「悪女型」の場合、ドラマの主人公は悪女で ある容疑者/被害者であるため、それ以外の人のプライバシー等が取り上げられることは 少なかった。

④RQ4:報道される犯罪の種類と被害者の性別

性的犯罪において女性被害者のみ取り上げ、かつ偏った加害者像を報じている点におい て、被害者を被害内容と被害者のジェンダーによってカテゴライズする報道パターンが存 在した。今回調査期間中に報道された強姦事件は、容疑者が公務員、マス・メディア社員、

人を教育する・支援する・守るといった職業(教師、警察官、米軍兵士)の場合、あるい は大勢が被害にあった場合に取り上げられることが多かった。しかし、「異性から無理矢理 性交された経験がある」人(7.7%)のうち、加害者と「面識あり」の被害者は76.9%である(内 閣府男女共同参画局 2012)。テレビニュースによって「強姦は見知らぬ者による犯罪」と いう強姦神話が強化される可能性がある。

また、今回確認された性犯罪のなかで「強姦」は「暴行」や「乱暴」と言い換えられて いた。その他にも子どもが被害者の場合に多くみられる性犯罪行為を「いたずら」と言い 換えることがある。「光市母子殺人事件」の被害者遺族のように、罪を明確にするために「強 姦」という表現や実名報道を望む場合もあるが、性犯罪の被害者は匿名報道が多い。被害 者を推知させるような情報は報道せず、同時に被害者を匿名報道にすれば「強姦」と報道 することは可能である。犯罪の防止等の点からの工夫が課題である。

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調査期間中に発生した米兵による暴行事件の被害者は、中学生の少女への犯罪というこ とで犯人憎しの感情を増幅させるという意味で「女子中学生」「少女」という存在は受け手 の感情を喚起しやすい。

強制わいせつに関しては、『ニュースウオッチ9』と『NEWS23』が「東京福祉大学総長 強制わいせつ事件」、「福岡都築学園総長強制わいせつ事件」を報じていた。被害者は「女 性教師」「女性職員」とテロップで明示された。いずれも容疑者が教育者であり、大学のト ップということでニュース・バリューが高く報道されたと思われる。ただし、殺人事件の 女性被害者の場合「女性店長」を除き「女性冠詞」が使われなかったのに対し、性犯罪で は「女性強調」が使われているということに注意が必要と思われる。

なお、2008年1月28日に、中学1年の男子生徒8人が刃物で脅されパンツとズボンを 奪われ強盗傷害で男性教師が逮捕されたというニュースが報じられていた。強盗傷害で性 犯罪には分類できないが、男性も性的犯罪の対象となりうる存在であるということを報じ る上では意味のあるニュースであった。

⑤RQ5:女性被害者と男性被害者の報道様式

女性被害者と男性被害者の報道様式で異なる点は、女性被害者の場合、「性」と「プライ バシー」を結び付けて報道する点である。女性被害者が生存している場合の性的犯罪は「客 観報道型」で、被害者のプライバシーは保護され、一切取り上げられない。しかし身体的 犯罪で被害者が死亡している場合、被害者の夢や希望、人柄の良さが繰り返し報じられる。

これは犯罪自体に性的要素が含まれるストーカー殺人(例:「女性店長殺害事件」「ヒーロ ー/ヒロイン型」)にあてはまる。同種のニュースが調査期間中に何度も報じられていた。

また、繰り返し取り上げられる顔映像は、事件を象徴するシンボル映像となる。さらに、

インタビューは被害者の人柄、事件に対する驚き、悲しみ、犯人憎しの発言や涙を取り上 げ、事件の凶悪さ、深刻さを表し、視聴者の同情を得やすい。この点については男女双方 で認められる。しかし、量的分析結果より、女性被害者は性別・年齢・氏名・顔映像が男 性より報じられることが明らかとなっており、これと密接に関連している。

男性被害者と女性被害者で異なっていたのは顔映像の扱いである。特に「ヒーロー/ヒ ロイン型」において死亡した女性被害者や未成年の被害者の顔映像は繰り返し大きく、ア ップにしていた。何度も繰り返し取り上げられた被害者の顔映像は、事件を象徴するシン ボル映像となる。ただし、家族内で殺人事件が起きた場合(「東京一家 4 人殺傷事件」「八 戸母子殺害事件」等)や性的犯罪の被害者の中でも生存している場合や、詐欺事件(「円天」) の被害者は顔映像が報道されることはほとんどなかった。一方、女性容疑者に報道の焦点 が当てられている場合に死亡した男性被害者の場合、顔映像の扱いは、女性容疑者映像と 比較すると少なかった(「替え玉殺人」)。

女性被害者の過失を問う報道は、本調査期間の報道ではこれは認められなかった。

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⑥女性被害者を表すステレオタイプの言語・映像

最後に女性被害者を表すステレオタイプの言語・映像についてであるが、「悪女型」の母 性神話や性規範から逸脱した女性加害者(「秋田連続児童殺害事件」「替え玉殺人」)/被害 者報道で、言語についてみられた。

性別による報道の差異については、音声とテロップで職業表記において「女性強調」が 認められた。それは「女性 店長」(「女性店長殺害事件」(映像資料 4-17、18))である。こ の事件は民放2局のみ取り上げたニュースであったため、『ニュースウオッチ9』で取り上 げた場合はどうなるか不明である。「女性強調」には性別役割分業を前提に「OL」や「主婦」

といった女性専用の職や役割を表す言葉を用い、女性の役割を強調する表現も含まれるが、

「川口会社員強盗殺人事件」ではそのような表現はなかった。「会社員」という中立表記が 多く見受けられた。こちらも改善されていると思われる。被害者が乳幼児、児童・生徒の 場合は男女双方に性別を表わす冠詞がついており、性別による差異は認められなかった。

誰を中心に事件が語られているか、その中でも性別に着目することはニュースに現れる ジェンダー秩序を見出すことである。先行研究では、成年女性が被害者となった場合に「○

○さんの妻××さん」(『東京一家4人殺傷事件」映像資料4-38、39)とする女性の従属表 現が指摘されていた。家族に起きた事件の場合、家族関係の説明のために続柄が必要とい う点を考慮すると、「妻○○さん」という表現は、一概に女性が従属的に表現されていると はいえない。さらに、女性が家族の中で筆頭表記される事例(「東京一家4人殺傷事件」映

像資料 4-40)の出現は、ひとり親家庭の増加やジェンダー・バイアス表現への配慮によっ

て、従来の男性を筆頭表記するスタイルから変化しているとも考えられる。

映像資料4-38 名前・肩書きテロップ(2/11 TBS) 映像資料4-39 名前・肩書きテロップ(2/11 テレ朝)

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