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第 2 章 政治・外交・軍事

3. 貿易概観

(1) 経済連携の動き

メキシコは、2014年9月現在、世界45カ国8と13のFTA(自由貿易協定)を締結して いる。2013年の輸出入全体に占めるこれら45カ国の割合は、輸出が約9割、輸入が約7 割である。

なかでも重要なのは、1994年1月に米国及びカナダとの間で締結したNAFTAで、4.7 億人の人口と18.7兆ドルのGDP(2014年3月時点)を持つ世界最大規模の自由貿易圏を 構成している。メキシコへ進出した企業は、物流インフラが整備されたNAFTAを通じて、

世界主要市場へのアクセスが可能となる。NAFTAの成立により、輸出志向の進出企業にと って、北米と中南米を結ぶ戦略拠点に立地するメキシコの重要性が高まっている。

米国とは3,100km超にわたって国境を接し、特に貿易・投資において両国間の関係が深

化している。2013年のメキシコの輸出の78.8%が米国向け、2000年~2013年の対内直接 投資の累計残高の47.6%が米国からの受け入れである。また、米国へ移住した移民による メキシコへの送金も年間200億ドル超9まで増加している。米国への過度な依存が続く一方 で、EU、中南米諸国、アジア諸国との関係構築と強化を図っており、二国間協定や国家・

8 EU28カ国を含む。

9 2013年は215.8億ドル(メキシコ中央銀行)

13.6 7.3 15.6 19.6 42.3 1.6

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2008 2009 2010 2011 2012 2013

(年)

その他・不明 サービス 商業 製造業 建設

農林水産業

地域間協定などの締結を推進している。直近では2011年からTPP交渉に参加し、2012年 には周辺国と共に太平洋同盟を発足させた(詳細は第22章を参照)。

(2) 輸出入動向

メキシコは、1980年代後半以降、石油に過度に依存した従来の輸出構造を転換し、工業 製品を中心とした輸出国となった。そして、米国の景気拡大を受けて、メキシコの輸出は 高い伸びが持続した。

1994年1月には、米国及びカナダとの間でNAFTAが発効し、メキシコの対米輸出拠点 としての重要性が一段と高まった。もっとも、安価な労働力を利用した最終製品の組立型 産業が中心であり、多くの原材料や部品などを輸入に依存したことから、輸出の拡大に伴 って輸入も拡大し貿易赤字が拡大するという、構造的な問題が生じることになった。

図表 3-7 メキシコ輸出入額の推移

(出所)メキシコ中央銀行より作成

① 国別輸出入動向

メキシコの輸出入の特徴として、米国への依存度が極めて高いことが挙げられる。特に、

1994年のNAFTA発効以降、両国経済の一体化が進んでおり、現在、輸出の約8割、輸入

3,801.93,812.1

-500 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(億ドル)

(年)

輸出 輸入 貿易収支

の貿易である。なかでも、自動車・同部品や原油を中心に、中国への輸出の伸びが顕著で、

輸出全体に占める割合は、2007年の0.7%から2013年に1.7%へ上昇した。輸入について は、2005年以降、米国に次ぐ第2位で推移しており、全体に占める割合は、2007年の10.5%

から2013年に16.1%へ上昇した。

図表 3-8 メキシコの輸出入の対米依存度

(出所)メキシコ中央銀行より作成

② 品目別動向

かつてメキシコにおけるモノカルチャーの象徴であった石油(原油・石油製品)輸出は、

工業製品輸出の増加と国際石油価格の下落などを受けて、輸出全体に占める割合が1998年

には6.2%まで低下した。しかし、2000年代に入り、石油価格の上昇に伴って輸出全体に

占める割合も拡大し、2000年代半ば以降は15%前後で推移し、2013年には13.0%となっ た。

近年、メキシコの輸出の約8割は工業製品である。1980年代から1990年代前半に輸出 多角化が推進され、1980年代前半に20%~30%程度に過ぎなかった工業製品の割合が上昇 を続けた。特に、1990年代は米国との国境沿いに設けられたマキラドーラ(保税加工区)

で生産された自動車部品や電気・電子製品などの輸出が急増した結果、1990年代末には、

工業製品の輸出額全体に占める割合が80%前後まで上昇した。

2013年のメキシコの工業製品輸出は前年比4.2%増の3,146億ドルと過去最大となった。

輸出全体に占める割合は82.7%で、なかでも自動車・同部品が25.7%(工業製品の31.1%)

を占めた。特に自動車は前年比23.8%増と大きく拡大し、輸出全体を牽引した。一方、同 年の電気・電子機器の輸出は、カラーTVが低迷したことを主因に、2.3%の微増にとどま った。

農産品は、豆類、野菜、果物の一部が米国へ輸出されているが、米国やカナダの農産品 に対する競争力は弱く、輸出総額に占める割合も2%~3%に過ぎない。

3,801.9

78.8

70 75 80 85

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(億ドル) (%)

(年)

輸出(左目盛) 米国依存度(右目盛)

3,812.1

49.1

42 44 46 48 50 52

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(億ドル) (%)

(年)

輸入(左目盛) 米国依存度(右目盛)

図表 3-9メキシコの輸出の商品別内訳

(出所)メキシコ中央銀行より作成

図表 3-10 メキシコの主要輸出品(2012、2013年)10

(100万ドル、%)

2012年 2013年

金額 構成比 金額 構成比 前年比 輸出総額(FOB) 370,706 100.0 380,189 100.0 2.6

農産・林産品 9,226 2.5 9,862 2.6 6.9 畜産・水産品 1,689 0.5 1,465 0.4 ▲13.3

鉱産品 57,798 15.6 54,288 14.3 ▲6.1

原油 46,788 12.6 42,804 11.3 ▲8.5

工業製品・同部品 301,993 81.5 314,574 82.7 4.2 自動車・同部品 88,377 23.8 97,781 25.7 10.6

乗用車 26,169 7.1 32,389 8.5 23.8

電気・電子機器 68,818 18.6 70,415 18.5 2.3 カラーTV 15,035 4.1 13,755 3.6 ▲8.5 フラットパネル型 14,612 3.9 13,720 3.6 ▲6.1 携帯電話 4,410 1.2 4,994 1.3 13.2 産業用機械機器 43,732 11.8 43,079 11.3 ▲1.5

(出所)メキシコ中央銀行、INEGIより作成

82.7 13.0 3.0 1.2

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

鉱産物 農牧製品 原油・石油製品 工業製品

一方、メキシコの輸入については、中間財が全体の70%~75%で安定して推移している。

国内裾野産業の発達が遅れており、原材料、部品などの中間財が大量に輸入されている。

また、輸入された中間財の多くは国内輸出企業によって最終製品に組み立てられ、米国な どへ再輸出されている。資本財についても、メキシコ国内の生産が限定されているため、

基本的に外国からの輸入に頼っている。当面、外国からの直接投資が順調に伸びていくと 見込めることから、設備投資の増大に伴って、資本財の輸入も増加すると考えられる。消 費財の輸入は景気の影響を受けるため、2009年のマイナス成長を映じて、2010年に13.7%

と低下したが、その後回復し2013年には15.0%となった。中長期的には、経済発展に伴っ て、緩やかに上昇していくものと考えられる。地域的には、中間財、資本財ともアジアか らの輸入が増えている。

図表 3-11 メキシコの輸入の商品別内訳

(出所)メキシコ中央銀行より作成

15.0 74.7 10.2

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

資本財 中間財 消費財

図表 3-12 メキシコの主要輸入品(2012、2013年)11

(100万ドル、%)

2012年 2013年

金額 構成比 金額 構成比 前年比

輸入総額(FOB) 370,752 100.0 381,210 100.3 2.8 農産・林産品 12,696 3.4 11,704 3.1 ▲7.8 畜産・水産品 536 0.1 648 0.2 20.9

鉱産品 42,752 11.5 42,239 11.1 ▲1.2

ガソリン 17,973 4.8 16,338 4.3 ▲9.1

工業製品・同部品 314,769 84.9 326,619 85.9 3.8 繊維・アパレル・皮革 11,643 3.1 12,246 3.2 5.2 自動車・同部品 44,144 11.9 45,884 12.1 3.9 産業用機械機器 53,268 14.4 55,325 14.6 3.9 電気・電子機器 76,625 20.7 82,125 21.6 7.2

(出所)メキシコ中央銀行、INEGIより作成

ひとくちメモ(5): 米国依存からの脱却が課題

メキシコの米国経済への依存度の高さは同国経済の脆弱性に繋がっている。実際、メキシコ経済 は、2007年以降の米国市場の低迷を受け、製造業が減産へ転じた。このような中にあって、政府は世 界各国とのFTAの締結を推進し、多角的な経済連携の下での貿易立国を目指している。これにより、

すでに一部品目においては、対米依存度(対米輸出比率)は低下傾向にあり、一定の成果がみられ る。

メキシコ進出企業にとってみれば、このFTAの締結推進は販売機会の増大を意味しており、メキシ コの魅力の一つといえる。