第 9 章 主要投資インセンティブ
1. 金融機関の種類
メキシコの金融システムは、監督・規制当局と金融機関に大きく分類される。監督・規 制当局は財務省、中央銀行であるメキシコ銀行(Banco de México)等から構成され、金融 機関は信用機関(商業銀行、政府系開発銀行等)、証券機関(証券取引所、証券会社、投資 信託等)及びその他の金融機関(限定目的金融会社(SOFOLES)、多目的金融会社
(SOFOMES)等)から構成されている(図表 17-1参照)。以下、各分類のうち、主要な 機関について言及する。
図表 17-1 金融機関の分類40
分類 機関名
監督・規制当局 財務省(SHCP)、中央銀行(メキシコ銀行: Banco de México)、国家銀 行証券委員会(CNBV)、 国家保険保証委員会(CNSF)、国家金融サ ービス利用者保護委員会(CONDUSEF)、国家年金基金委員会
(CONSAR)
金融機関 信用機関 商業銀行(43)、政府系開発銀行(6)、開発基金(3)
証券機関 証券取引所(1)、証券会社(34)、投資信託(584)、年金基金(69)、金融 派生商品取引所(1)
その他 限定目的金融会社(17)(SOFOLES)、多目的金融会社(26)
(SOFOMES)、貯蓄貸付会社・大衆貯蓄信用金融会社(105)、保険会 社(99)、金融リース(2)、信用組合(105)など
(出所)メキシコ中央銀行「Annual Report 2012」より作成
(1) 中央銀行(メキシコ銀行: Banco de México)
中央銀行は、1925年に設立され、メキシコ憲法の下、その行動と管理において独立性を 保障されている。中央銀行の主な機能は、通貨の安定供給、金融システムの発展・促進、
決裁システムの助成・促進である。その他、連邦政府や内外金融機関からの預金受入、信 用供与、債券売買、外貨準備金の保管・管理、外国為替の管理を行う。また、国内におけ る金融機関の業務監査権を有しており、金融システム上、重要な役割を担う。
(2) 商業銀行
民間金融機関は、各金融機関が持株会社を組成して金融グループを形成し、各種業務を 行っている形態が多く、金融グループの中核は商業銀行である。
40 括弧内は数(2012年末時点)。
メキシコは1994年の通貨・金融危機以降、金融部門の外資規制を緩和しており、1999 年1月に公布された外国投資法改正によって商業銀行への外国企業の出資比率規制は撤廃 された。これにより外国金融機関によるメキシコ国内銀行の買収が相次ぎ41、2000年以降、
同国銀行部門の再編が進行している。
外国金融機関による同国銀行の買収が進んだ結果、同国銀行の総資産に占めるメキシコ 資本の銀行の割合は小さい。2014年3月時点の主要銀行の総資産では、全商業銀行合計の
70%以上を占める上位5行のうち、メキシコ資本の銀行はBanorte(バノルテ)1行のみで
ある(図表 17-2参照)。他の4行(BBVA Bancomer、Banamex、Santander、HSBC)
は外資系銀行であり、これら4行で同国商業銀行の総資産及び、貸付・預金総額の6割以 上を占めている。
図表 17-2 主要銀行グループの概況(2014年3月時点)
(単位: 百万ペソ、%)
銀行グループ名 総資産 貸付 預金
金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比
BBVA Bancomer 1,562,793 23.3 721,808 25.5 748,054 23.5
Banamex(Citi group) 1,237,404 18.5 472,732 16.7 579,869 18.2
Banorte 1,042,534 15.5 440,704 15.6 481,665 15.1
Santander(BSCH) 867,273 12.9 409,349 14.5 466,230 14.7
HSBC 534,013 8.0 206,151 7.3 295,758 9.3
Inbursa 357,354 5.3 191,654 6.8 159,532 5.0
ScotiaBank Inverlat 259,495 3.9 160,666 5.7 166,202 5.2
Interacciones 171,219 2.6 62,001 2.2 75,575 2.4
Afirme 117,012 1.7 17,326 0.6 26,515 0.8
Banregio 100,010 1.5 46,018 1.6 44,512 1.4
Invex 76,201 1.1 12,589 0.4 15,605 0.5
Multivalores 59,949 0.9 37,495 1.3 47,464 1.5
Intercam 57,041 0.9 2,329 0.1 3,186 0.1
Monex 44,444 0.7 4,767 0.2 13,973 0.4
J.P. Morgan 43,347 0.6 2,112 0.1 4,759 0.1
Actinver 38,328 0.6 5,297 0.2 6,695 0.2
Mifel 34,480 0.5 20,709 0.7 22,918 0.7
Barclays México 32,548 0.5 0 0.0 0 0.0
Credit Suisse 32,275 0.5 368 0.0 6,488 0.2
Ve por Más 32,023 0.5 14,604 0.5 15,150 0.5
Value 4,222 0.1 1,611 0.1 1,480 0.0
UBS 2,748 0.0 0 0.0 0 0.0
合計 6,706,713 100 2,830,290 100 3,181,630 100
(3) 政府系開発銀行
政府系開発銀行は、信用機関法及び各機関の規定に準拠し、国家銀行証券委員会(CNBV)
の監督下で、メキシコ政府が発表する国家発展計画に即した国内産業の発展・促進の役割 を担っている。政府系金融機関に属する金融機関別の主たる業務は以下のとおり(図表 17-3参照)。
図表 17-3 政府系開発銀行に属する金融機関別の業務
機関名 主たる業務
メキシコ産業金融公社(NAFIN) 産業・地域振興 国立公共事業銀行(BANOBRAS) 公共事業 国立貿易銀行(BANCOMEXT) 貿易金融 国立軍人銀行(BANEJÉRCITO) 軍人向け融資 貯蓄金融サービス銀行(BANSEFI) 貯蓄サービス
連邦住宅公社(SHF) 住宅金融
(4) その他
① 限定目的金融会社(SOFOLES)・多目的金融会社(SOFOMES)
限定目的金融会社(SOFOLES)とは、貸付を主業務とするノンバンク金融機関である。
預金を受け入れない点が銀行とは異なる。1998年からメキシコで認められており、特定部 門(不動産、自動車、農業、中小零細企業等)に対する貸付を専門としている。
2006年から認められている多目的金融会社(SOFOMES)はSOFOLESと同様、貸付専 門のノンバンク金融機関である。SOFOMESも一般から預金を受け入れることができない ため、市場での機関投資家向け債券発行や銀行からの借入によって資金を調達している。
SOFOLESとは異なり、特定の部門に限らず様々な部門に貸付を行い、金融リース業務や
金融ファクタリング(債権買取)等の複数業務を行う。
② 貯蓄貸付会社・大衆貯蓄信用金融会社
2001年、貯蓄信用金融法の制定により、貯蓄貸付会社及び大衆貯蓄信用金融会社が発足 した。両社とも会員向けの融資や中小零細企業向けの融資業務等を主とし、商業銀行や限 定目的金融会社・多目的金融会社等の業務を補っている。
ひとくちメモ(16): サービスレベルの低い地場の民間銀行
メキシコに進出している日系企業の多くは、従業員の給与支払いなどに地場の民間銀行を使用し ている。しかし、現地ヒアリング調査によれば、そのサービスレベルはとても低いようだ。
例えば、個人の預金口座を開設した場合、「自動引き落とし」の設定にすると、銀行側が違う口座と 間違って引き落としをしてしまうケースもあるようだ。また、ある企業では、勝手に口座を解約されたほ か、口座を開設したこともないのになぜかブラックリストに名前が載ってしまい、その取り下げに半年以 上かかったという。さらに、銀行窓口の従業員の多くは英語が話せず、日本の銀行とは違って従業員 の質や態度も良くないそうである。現地進出の際、地場の民間銀行との取引を行う際にはこの点を理 解しておく必要がある。
ひとくちメモ(17): メキシコの金融改革
2013年11月26日、金融に関する34の法律を修正・追加・廃止する改革法案である、いわゆる「金 融改革法案」が可決された。「金融改革法案」のポイントは以下のとおりである。
(1) 開発銀行の強化:インフラ等への融資拡大、技術革新を担う人材確保のための融資促進 (2) 信用情報機関の設立:民間企業への融資拡大、金融セクター内の競争の促進
(3) 破産手続きの簡易化:金融セクター内の健全性維持、司法への信頼改善 (4) 金融システム規制・監督機関の権限強化:金融セクターの透明性維持
ペニャ・ニエト大統領は本改革により、メキシコの銀行の融資額の拡大を狙っており、開発銀行や民 間金融機関による融資額が15%増加することを期待している。これにより、メキシコ国内のインフラ強 化や民間企業設備投資額の増加も期待されるため、メキシコ経済の活性化につながる改革といえる。