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第 2 章 政治・外交・軍事

1. 経済概観

(1) 近年の経済動向

メキシコでは、事実上のドル固定相場制や経常収支の恒常的な赤字などを背景に、1994 年12月に通貨危機が発生し、外貨準備が枯渇し、通貨ペソが暴落した。翌1995年には深 刻な景気後退となりマイナス成長を記録したものの、その後、通貨安による輸出競争力の 回復や、米国の景気拡大、国際石油価格の高騰、新興諸国への資金流入の活発化に支えら れて、メキシコ経済は順調に回復軌道をたどってきた。

2000年代に入ってからもメキシコ経済は、米国向け工業製品の輸出拡大や、原油価格高 騰による原油輸出額の増加(輸出量は2004年以降減少)、インフレ収束と金利低下による 個人消費の活発化、金融、建設、電話サービスの拡大などにより順調に推移してきた。

もっとも、実質GDP成長率は、2006年の前年比5.0%をピークに、米国市場の低迷を受 けた自動車輸出の不振などにより、2007年には3.3%へ低下した。さらに、2008年10月 以降、米国の金融危機を契機とした世界経済停滞により、工業製品輸出が減少へ転じ、同 年の成長率は1.2%まで落ち込んだ。2009年は内外需とも不振が持続し、4~6月期の経済 成長率は前年同期比▲9.6%と、四半期統計が始まった1981年以降で最大の下落を記録し た。その結果、同年の成長率は▲4.7%まで落ち込んだ。

しかし、2009年秋口以降、自動車産業などの輸出製造業が回復に転じ、他産業の景気も 底を打った。2010年以降は、好調な外需を受けて、景気回復が進んでいる。失業率の高止 まりや、実質賃金の低迷などによる個人消費の伸び悩みで、内需の回復は遅れたものの、

輸出の回復により、2010年の成長率は5.1%と大きく回復した。2011年に入ってからも景 気は堅調に推移し、2010年1~3月期以降、8四半期連続でプラス成長を持続し、通年では 4.0%を記録した。

図表 3-1 メキシコの実質GDP成長率

(出所)INEGI(国立統計地理情報院)より作成

(2) 足元の経済動向4

2012年のメキシコ経済は、1~6月期は堅調な自動車部門や金融・保険部門などに牽引さ れて前年同期比4.6%の成長率であったが、世界経済の停滞や、特に経済関係が深い米国経 済の低迷などの影響を受け、年半ば以降減速した。7~12月期には同3.2%へと低下し、通 年では前年と同水準の4.0%となった。産業分野別にみると、製造業、商業、建設の減速が 顕著であった。

2013年に入ってからも、米国経済の回復の遅れを受けて、製造業、商業、建設などで景 気低迷が続いた。四半期ベースでの経済成長率は、1~3月期が前年同期比0.6%、4~6月

期が同1.6%、7~9月期が同1.4%、10~12月期が同0.7%と大幅に減速し、通年では世界

的な金融危機の影響による2009年の▲4.7%に次いで低い成長率となる1.1%へ減速した。

成長率が減速した背景には国外要因と国内要因がある。国外要因としては、世界経済が 減速したことや、米製造業が低迷したことなどが挙げられる。特に、経済関係が緊密な米 国経済の影響を大きく受けた。一方、国内要因としては、大手住宅建設業者の経営破綻に より民間住宅建設部門が低迷したことや、中西部で天然ガスの需給が逼迫したこと、同年9 月のハリケーン被害によって農業生産が低下したことなどが挙げられる。さらに、ペニャ・

ニエト新政権への政権移行に伴い公共事業などの予算執行が遅れたことも景気を減速させ た。産業分野別にみると、2012年に引き続き、製造業、商業、建設などが減速した。

2014年に入ってからも低成長が続き、2014年1月に施行された財政改革(増税)の影 1.1

-6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(%)

(年)

にとどまった。1~3月期の成長率を産業部門別にみると、回復基調の自動車産業を背景に 製造業が堅調に推移したものの、建設はマイナス成長が続いた。もっとも、年半ば以降は 米景気の回復が期待できることや、公共投資の実行などにより公共支出が行われることが 予測されることから、経済は回復へ向かい、経済成長率も緩やかに上昇すると見込まれる。

図表 3-2 メキシコの実質GDP成長率(四半期ベース、前年同期比)

(出所)INEGIより作成

(3) 開発計画

メキシコでは、憲法によって、大統領は、就任後半年以内に任期中の開発計画を策定し、

国民に発表することが規定されている。2006年12月に就任したカルデロン前大統領は、

2007年5月に長期開発計画「2030年ビジョン(Vision 2030)」を発表し、この中で、1人

当たりGDPを2030年までに29,000ドルまで引き上げることを謳った。また、同年6月

には、2030年ビジョンの第1期五カ年計画とも言える「2007~2012年国家開発計画」を 発表した。同計画の柱として、①法治国家と公共の安全、②競争力ある経済と雇用の創出、

③機会の平等、④環境の持続性、⑤効果ある民主主義と責任ある外交、が盛り込まれた5。 2012年12月に就任したペニャ・ニエト大統領は、2013年5月に「2013~2018年国家 開発計画(PND2013)」を発表し、政策の5本の柱として、①治安回復、②貧困撲滅・格 差是正、③教育拡充、④経済的繁栄、⑤国際社会への貢献、を掲げた。2014年4月には、

②「貧困撲滅・格差是正」と④「経済的繁栄」に関連して、6つの戦略部門におけるインフ ラ整備を中心とした、総投資額7兆7,505億ペソ(743プロジェクト)の「2014~2018年 国家インフラ計画(PNI2014)」を発表した(詳細は第20章を参照)6

5 JCIF「基礎レポート第2章 国民経済」参照。

6 JCIF「基礎レポート第2章 国民経済」参照。

1.8

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

'12/1-3 4-6 7-9 10-12 '13/1-3 4-6 7-9 10-12 '14/1-3

(%)

(年/月)

一方、ペニャ・ニエト政権は、主要3政党(制度的革命党(PRI)、国民行動党(PAN)、 民主革命党(PRD))間で、様々な改革推進のための与野党合意「メキシコのための協約

(Pacto por Mexico)」に署名し、労働改革、教育改革、通信改革、エネルギー改革、財政 改革、政治・選挙制度改革に取り組んでいる。特に注目されているのは、エネルギー改革

(炭化水素資源の探査・生産への民間の参入)と財政改革(高所得層の所得税率引き上げ、

最低年金制度と失業保険制度の導入、財政責任法の改正、等)である。前者は、2013年8 月に憲法修正を含むエネルギー改革案が発表され、2014年8月に関連法が公布された。後 者は、2013年9月に財政改革案が発表され、同10月に連邦議会で可決された7

(4) 主要経済指標

図表 3-3 メキシコの主要経済指標

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013

GDP

名目GDP(億ドル) 10,427 11,007 8,945 10,508 11,692 11,835 12,585 実質GDP成長率(%) 3.3 1.2 ▲4.7 5.1 4.0 4.0 1.1 1人当たりGDP(ドル) 9,565 9,935 7,943 9,194 10,107 10,111 10,630

国際収支 指標

経常収支(億ドル) ▲147 ▲202 ▲81 ▲36 ▲123 ▲148 ▲223 経常収支対GDP比(%) ▲1.4 ▲1.8 ▲0.9 ▲0.3 ▲1.1 ▲1.2 ▲1.8 貿易収支(億ドル) ▲103 ▲176 ▲49 ▲29 ▲13 2 ▲7 輸出 2,723 2,919 2,300 2,989 3,499 3,714 3,809 輸入 2,826 3,095 2,349 3,018 3,512 3,712 3,816 外貨準備高(億ドル、年末) 871 951 996 1,203 1,440 1,604 1,754 対外債務残高(億ドル、年末) 1,281 1,294 1,660 1,981 2,109 2,273 2,586 景気指標 失業率(%/年末月) 3.7 4.0 5.5 5.4 5.2 5.0 4.9 消費者物価上昇率 (%) 4.0 5.1 5.3 4.2 3.4 4.1 3.8 財政・金融

指標 国債3カ月物金利(%、年末) 7.60 8.07 4.86 4.71 4.55 4.49 3.54 為替・株 為替レート(対ドル、平均値) 10.9 11.1 13.5 12.6 12.4 13.2 12.8 株価指数(IPC、年末) 29,537 22,380 32,120 38,551 37,078 43,706 42,727

(出所)IMF「World Economic Outlook(20144月版)IMF「International Financial Statistics (2014 年版)、メキシコ中央銀行、INEGIより作成