第 9 章 主要投資インセンティブ
1. IMMEX
(1) 概要
IMMEXは、輸出向けの製造・マキラドーラ・サービス産業振興プログラムのことで、一
時輸入が認められる制度である。主要根拠法はIMMEX政令である。旧来のマキラドーラ
制度とPITEX(輸出品製造のための一時輸入プログラム)を統合し、手続きの簡素化と、
輸出義務に関する条件の緩和がなされたものとなっている。
(2) 優遇内容
IMMEXの適用の利点としては、一時輸入を行うことができること、輸出を条件に輸入に
係る租税が免除・繰り延べされること22、事務手続きが簡素化されることなどが挙げられる。
対象となる品目、一時輸入状態で国内滞留が認められる期間、及び輸入に係る租税免除 の可否について図表 9-1に示した。なお、一部の品目については特別要件の履行が必要と なり、認可される国内滞留の期間も短い為、注意が必要である。
図表 9-1 IMMEXの対象となる品目と国内滞留期間
政令 品目名 国内滞留期間 租税免除の可否
政令4条 のⅠ
燃料、潤滑油等生産工程で消費される 財、輸出商品を構成する原材料・部品、
容器・梱包財、ラベル・パンフレット等
18カ月 ・輸入付加価値税(輸
入IVA)、相殺関税の
一律免除
・輸入関税: 原産地・仕 向地、輸入者の活動に より免除の可否が決ま る
政令4条 のⅡ
コンテナ、トレーラーケース 2年間 ・輸入IVA、相殺関 税、輸入関税いずれも
21 詳細は第6章を参照のこと。
22 但し、品目による。
免除 政令4条
のⅢ
生産工程で使用する機械設備、機器、工 具、計器類、型、交換部品、汚染防止、調 査・職業訓練、安全、演算・通信、試験、
測定・測量、製品検査・品質管理、輸出製 品に直接係る資材の取扱用設備・機器、
管理用機器等
プログラムの有効 期間中
・輸入IVA: 免除
・相殺関税、輸入関税:
免除されない
政令の添 付によっ て特別要 件履行が 求められ る品目23
一部の糖類 6カ月 ・いずれも免除されな
関税分類(HSコード24)72類の鋼材 9カ月 い 一部の食用の家禽の肉及びくず肉、一部
の粉状ミルク、カフェインを除いていない コーヒー、中古の空気タイヤ類
12カ月
HSコード50類から63類に分類される 繊維製品
12カ月
(出所)メキシコ経済省、JETRO「メキシコの経済基礎知識第2版」、JETROウェブサイト国・地域別情 報より作成
またIMMEX制度下では、従来のマキラドーラ制度及びPITEXよりもIVAの還付申請
手続きが迅速化されている。通常はメキシコ国内で購入した財に賦課されるIVAの還付は 申請受理より45営業日以内でなされるが、IMMEX企業の場合は申請受理より20営業日 以内に、「認定企業」(本章5. 認定企業登録制度を参照)の登録を併せ持つIMMEX企業の 場合には申請受理より5営業日以内に還付される。
(3) IMMEX制度の登録・維持のための要件
IMMEX登録及び維持にあたっては、図表 9-2に示す八つの要件を満たす必要がある。
なお、自社では生産設備を保有せず生産行為を委託先に委ねる企業であっても、IMMEX 登録を行った上で予め委託先をメキシコ経済省に登録した場合は、一時輸入などの恩恵を 受けることができる。
図表 9-2 登録及び維持の要件
要件 ① 所得税法に則り、所得税を納税するメキシコ居住の法人であること
② 年間50万ドル相当以上、若しくは年間総売り上げの10%以上を輸出すること
③ メキシコ国税庁(SAT: Servicio de Administración Tributaria)の高度電子
署名(FIEL)証明書を有すること
④ 現行の連邦納税者登録(RFC)を有すること
⑤ 税務上の住所、並びにIMMEX操業を行う他の住所がRFCに登録してあり、
且つ同登録が現行のものであること
⑥ 貿易オペレーションに関する年次報告を提出すること
⑦ 国立統計地理情報院(INEGI:Instituto Nacional de Estadística y Geografía)に対し月次報告を行うこと
⑧ IMMEX政令添付Ⅳに基づく輸入品の在庫管理を行うこと
(出所)メキシコ経済省、JETRO「メキシコの経済基礎知識第2版」、JETROウェブサイト国・地域別情 報より作成
(4) 留意事項
IMMEXは、申請企業が実行しようとしている輸出プログラムに対して認可がなされる仕
組みで、1企業に対しては1プログラムまで認可される。プログラムは、統括企業IMMEX、
工業IMMEX、サービスIMMEX、シェルターIMMEX、アウトソーシングIMMEXの5
つに分類されている。
また、2013年10月に国会を通過した税制・社会保障制度改革の結果、IMMEXなどの 一時輸入において輸入IVAが課税されることとなった。2014年中に制度の詳細が公布され、
2015年より発効するとされている。ただし、一定以上の要件を満たす企業については、IVA の保税の継続が認められるという救済措置が採られた。要件については操業経験、企業規 模、サプライヤーの租税義務履行証明の有無等によってA~AAAの3つのレベルに分けら れており、認定のレベルによって企業に対して与えられる恩典が異なる。
ひとくちメモ(9): 日系企業の多くは「A」を取得
先に示したように、2014年の税制改正において2015年からは一時輸入の際にも輸入IVAを支払 わなければならないという制度に変更されたが、一定以上の要件を満たす企業については、IVAの保 税の継続が認められるという救済措置が採られている。
現地ヒアリング調査によれば、日系企業各社はIVAの保税を継続するため、認定制度への申請を 行っているそうだ。認定要件及びそのレベルは先に示したとおりである。「A」の取得は従前と同程度の 労力で取得が可能であるが、「AA」もしくは「AAA」の取得には取引先の情報が大量に必要になり、そ の労力は大きい。そのため、「AA」もしくは「AAA」を目指す日系企業はそれほど多くないそうである。
「AA」以上の取得にどこまでメリットがあるかも不明な状況の中、とりあえず「A」を取っておく日系企業 が多いというのが実態である。