• 検索結果がありません。

第五章 地域生活定着支援センターからの実態調査

第一節 調査対象者の所属機関の概要

1.地域生活定着支援センター

調査対象者が所属している地域生活定着支援センターは、2009 年度より「地域生活 定着支援事業」として 厚生労働省と法務省がタイアップして開始した。高齢又は障害 を有する福祉的支援の必要な矯正施設退所者に、入所中から退所後まで一貫した相談支 援を実施することにより、その社会復帰を推進することを目的し開始された。 各都道 府県に1カ所ずつ設置されはじめ、2011年度末に全都道府県に設置が完了した。さら に、2012年度からは「地域生活定着促進事業」と名称を変え、事業が拡大されている。

2009年から開始されたセンター(「地域生活定着支援事業」)も、政府の「犯罪対策 閣僚会議」の総合対策を受けて、2012 年からは「地域生活定着促進事業」となり、そ の目的を「高齢又は障害により、福祉的な支援を必要とする矯正施設退所予定者及び退 所者等に対し、各都道府県の設置する『地域生活定着支援センター』が、矯正施設、保 護観察所等と連携•恊働しつつ、..その社会復帰及び地域生活への定着を支援し、再 犯防止対策に資すること」となった。それは、出所者の社会復帰を支援し、再犯を予防 することによって、社会の安定を目指そうという目的をものである。 支援センターは 各県にあり、受託法人も違うため支援のアプローチはそれぞれ違う。下記は「地域生活 定着促進事業」の概要をまとめたものである。

図表5-1地域生活定着促進事業概要

厚生労働省通知「刑事施設、少年院及び保護観察所と地方公共団体、公共の衛生福祉に関する機関等との連携の確保に ついて」200941日付法務省保観第206号•社援発第0401019号と「『地域生活定着支援センターの事業及び運営 に関する指針』 について」2009527日付社援総発第0527001号をもとに筆者作成

図表5-2 地域生活定着支援センターの業務関係図

事業名 セーフティネット支援対策等事業費補助金のメニュー事業 所 管 厚生労働省(社会•援護局)•法務省(矯正局•保護局)

実施主体 都道府県(社会福祉法人、NPO法人等に、事業の全部又は一部を委託可)

事業目的 高齢又は障害により、福祉的支援を必要とする矯正施設退所予定者及び退所者等の社会復帰と地域へ の定着をより促進する。矯正施設、保護観察所と連携し、矯正施設入所中から退所後まで一貫した相 談支援を実施する。

支援対象者 親族等から適切な援助が受けらない高齢者、又は障害等を有するために自立困難な受刑者、少年院在 院者、保護観察対象者又は更生緊急保護の対象となる者。

事業受託法人 社会福祉法人•NPO法人等

事業内容 a)コーディネート業務(入所中からの帰住調整 b)フォローアップ業務(出所後に入所した福祉 施設入所中の継続的支援) c)相談支援業務(地域に生活する矯正施設退所者への相談支援)

d) 地域のネットワークの構築と連携促進業務 関 係 機 関 と 連

保護観察所•刑事施設等(刑務所•少年院)•地方公共団体(都道府県、市町村、特別区)•公共の衛生 福祉に関する機関(福祉事務所•保健所•精神保健福祉センター等)•更生保護施設•更生保護団体等が 連携、恊働して事業を推進する。

事業費 各センター 1カ所年間 2,500万円(平成24年度より、支援の拡充•拡大のため増額) 10/10国庫 事業。平成28年より実績により傾斜配分。

職員配置 6名(社会福祉士•精神保健福祉士等)平成28年より予算により職員数の増減がある

広域調整業務 矯正施設所在地のセンターは支援対象者が帰る県の帰住予定地センターと連携し、帰住支援をする。

図表5-3 地域生活定着支援センターの事業の概要

出典:法務省•厚生労働省(200899日)「矯正施設退所者の地域生活定着支援事業」

2.事業内容 ⑴ 実績状況

支援対象者は「障害や高齢により社会復帰が困難な福祉的支援の必要な人」と限定さ れ、年間約1,000人を見込んでいる。事業実績は年々上がっており、高齢者犯罪者では、

他の年齢層に比べて2年以内の刑務所再入所者が大きく減少している。

下記は、地域生活定着支援センターの平成27年度中の支援実績である。

図表5-4【矯正施設を退所し受入れ先に帰住した者の福祉サービスの利用状況】

(単位:人、かっこ内は平成26年度の実績)

■コーディネート業務(帰住地への受入れ調整)

コーディネート業務 1,396(1,385)

【内訳】 矯正施設を退所し受入れ先に帰住し た者

752(743)

帰住地への受入れ調整を継続中の者 522(529)

「福祉を受けたくない」といった理由 や疾病悪化等により支援を辞退した者

122(133)

■フォローアップ業務 (受入れ調整後に行う受入先施設等への支援)

矯正施設退所後にフォローアップを実施した者 1 ,862 (1,640)

【内訳】 支援が終了した者(地域に定着した者) 576 (484)

支援継続中の者 1 ,286 (1,156)

■相談支援業務

※相談支援業務の件数は、面接・訪問等の支援を実施した者に限定して計上(電話相談のみは除外)

厚生労働省資料「地域生活定着支援センターの支援状況(平成27年度中に支援した者)」

以下のグラフは、社会的バルネラブルな罪を犯した人へ支援センターが調整した帰住 先である。福祉施設への帰住者が少ないことが特徴である。最も多いのは、司法管轄で ある更生保護施設や自立準備ホームへの帰住である。 だが、これらの施設は有期限の 相談支援を実施した者 1,232(1,222)

(1,212)

【内訳】 支援が終了した者 622(604)

支援継続中の者 610(608)

図表5-5 矯正施設を退所し受入れ先に帰住した者の矯正施設退所時点の居住先内訳

(単位:人)

厚生労働省 地域生活定着支援センターの支援状況(平成27年度に支援した者)

⑵ 施策の課題

施策の課題としては、事業の不安定化がある。地域生活定着支援センター事業は2009 年厚生労働省の事業として始められ、その財政的根拠は「セイフティ-ネット支援対策 等事業費補助金」によって行われており、財政的な基盤や事業形態が安定しない。事業 費の国庫補助率や地方負担分、委託先の変更等が毎年あり、その都度、事業規模や形態 が変わる。例えば、2012年からは「地域生活定着促進事業」として、再犯防止を目的に

平成23年度(500人)

平成24年度(689人)

平成25年度(628人)

平成26年度(743人)

平成27年度(752人)

300

250

200

150

100

50

更自 簡無 生立 易料 保備 宿低 護ホ 泊額 施| 所宿 設ム

フォローアップ、相談支援事業を拡大して、予算が増額された。その3年後(2015年)

からは国庫補助金が削減され事業規模が縮小されている。その際、コーディネートは福 祉サービスや帰住地調整から必要だと考えられ、引き続き全額国庫補助とされているが、

フォローアップ業務及び相談支援業務についは地域の問題であるとして、地方自治体負 担を導入した。地方負担分は、各業務量を勘案し、全体として1/4となったが、都道府 県支出は任意であったため、各県によってバラツキが出てきた。

加えて、事業の不安定化の要素として、国は運営を自治体に委託し、さらに民間に委 託できるようにしたため、さまざまな法人が受託していることである。法人体制や実績、

方針等がそれぞれ違い、広域連携事業であるにもかかわらず、運営の仕方が違うという ことである。また、職員体制やそのスキルも異なり、業務の標準化が課題として指摘さ れている。このように、運用面での自治体間、支援センター間の格差が大きいことが課 題となっている。

また、受刑中の福祉的支援の必要な人は多く、その選定には優先順位をつけざるをえ

ない実状がある。法務省矯正局が実施した特別調査の結果によれば、平成25年におい て、600名程度の福祉的支援を要する人が特別調整の対象者に選定されず、また、刑事 施設が実施する福祉的支援の対象ともならずに適当な帰住先が確保されないまま釈放 されている。

⑶ 支援後の再犯

平成26年度「都道府県地域生活定着支援センターの支援に関わる矯正施設再入所追 跡調査」全国地域生活定着協議会が行った。これは、地域生活定着支援センターの支援 体制の充実と強化をめざして、現状を全国的データで確認し、支援上の改善点を明らか にするものであった。

「一般社団法人全国地域生活定着協議会」は地域生活定着支援事業の安定化や効果的

な支援をめざして,全国の地域生活定着支援センターを統括している。そこでは、司法

•福祉•医療等の関係機関の連携促進、社会への啓発事業、人材育成研修、政策課題検討、

再犯防止のための全国のセーフティネットの構築等が目的とされている。特に、研究や 調査は定期的に行われており、全国的な課題を総合的、包括的に把握し、各支援センタ