第五章 地域生活定着支援センターからの実態調査
第八節 社会復帰支援課題として【制度の不備】と【資源の不足】
前章で、罪を犯した人の社会復帰にとって出所後の住まいに問題があることが示され ていたことを裏付けるものである。また、出所直後に入る中間施設の必要性について は3センターの支援者が述べていた。具体的に2,3カ月の中間施設が必要であり、そ れは、ただの時間繋ぎではなく、日常生活訓練のような教育が行われるような質の高 さを求めるような意見であった。次の生活につながるものという意味であろう。
図表5-14 連携の課題と資源の課題
・措置福祉施設
→情報・枠がない
→対人関係がうまく取れない
・無料低額宿泊所
→職員数、ケアの不足
→生活指導がない
一時中間施設
・生活の立て直し訓練
・帰住地調整
・福祉制度利用手続
地域生活 刑務所
地域に出るしくみの必要性
生活破壊
→失踪
→再犯 ワンウエイ人生
一度の失敗が全ての失敗
生きなおし
⑤支援者:行先がないのが厳しい、、高齢者の場合、環境さえ整えばいいという わけではない、施設に入れようと思っても対人関係がダメだったり、
厳しいかな、と思う。中間施設に一回居てもらって、その間に調整す るというように、生活支援ハウスに2 カ月とか入れてもらって、その 後、(高齢者)施設に行ってもらってやっているけど、。矯正施設を出 たあと一回、どこかで訓練をしたあと、地域に出るしくみがあるとい いなと思う。刑務所と地域の中間のような、外国にはありますよね。
フランスなんかは住宅福祉がありますし、生活保護にだけ頼るのでは なく。
⑦支援員:(地域で生活する前に)一回、本当に施設が必要ですよね。それこそ、
養護老人ホームとかの社会資源を使って、それから地域にというよう な、そういう流れを作って欲しい、定着(地域生活定着支援センター) が発信していかなくては。とっても必要なことですよね。
⑥支援者:本当に高齢者なんか無低(無料低額宿泊所)しかないんですもの。しか たないから、生保を受けて、無低に入って、3カ月くらい無低に入って もらって、それからアパートに移ってですよね。でも、無低は施設の 職員が少ないので、どこでもいいっていうわけではないですからね。
せっかく定着につながっているのに、もったいないですよね。
⑨支援員:いきなり地域というのは難しい。高齢者施設とか救護施設(の情報)は、
私たちは、(公的社会資源を)知らないじゃないですか。福祉事務所の 窓口に行って、枠があれば、というところですよね。
⑨支援者:選択肢を増やしてあげることは大事。結局、皆(罪を犯した人)、ワン ウエイで生きている人だから、「ここで失敗すれば俺には道がないん だって、ガラガラってなるでしょ。(生活がなげやりになる)、でも、
選択肢を増やすことで、ここで失敗しても、こっちもあるんだ」って わかれば、生きなおしができるでしょ。選択肢があればね。
環境としての関係機関の連携の不整備やそれにともなう資源不足、であった。はじめに
①支援者自身の援助のあり方の生成を確認し、次に②連携不整備による支援の課題を確 認する。
1.支援者による罪を犯した高齢者支援スタンスの生成プロセス
援助者は、罪を犯した高齢者支援の過程を通じて、援助観を確立していくというプロ セスが見られた。支援センターの職員は基本的に、福祉的バックグランドを持ち、福祉 的手法によって罪を犯した高齢者の支援に関わる。「対象者理解」では、矯正施設での 面接で、一般社会での生活の違いに気づき、本人の意向やニーズを把握する段階から、
これまでの対象者とは違う、という認識を示していた。その語りでは、犯罪の背景を見 ないと支援が見誤ってしまう、というように、犯罪の背景にある生活歴を重視する必要 性が示されていた。出所後の支援では、「支援のスタンス」として、信頼関係をつくり あげること、を中心に支援を行っており、表面化している犯罪者からひとりの高齢者へ の支援というように支援の考え方を生成していく。その結果の「援助の目標」では、普 通の生活をおくること、と述べており、一般に考えられているような道徳的な生活を送 るということとは違っている。さらに、目標達成までのプロセスでは、高齢者個人の気 持ちの揺れを受け入れ、一回では立ち直れない、だんだん、地域にいる時間を長くすれ ばよい、というように柔軟な立ち直りを待つという対応の必要性を述べている。
だが、一方で、支援者の援助スタンスや目標に対して、受け入れる社会からは、散々 迷惑かけられた地元に戻ってきてもらっては困る、お金は出すから他の地域に行って欲 しい、というような排除の実態に直面し、支援者は、社会の中に認められるものでなくて はいけない、でも簡単にはいかない、と高齢者の福祉的生活の実現と社会からの要望との 間でジレンマを抱えているという状況が見えた。
このことから確認できた課題は、罪を犯した経験のある人を福祉で支える取組みが社 会的に認知されていないということである。これは、第四章の「課題検討」の中で示め されていた社会からの排除を裏付けるものである。
罪をおかした社会的バルネラブルな人びとの社会復帰支援が、社会から未承認という 課題解決のヒントとして、支援者の対象者理解のプロセスが参考になるのではないだろ うか。つまり、支援者自身が体験した罪を犯した高齢者との直接的な関わりの中で、生 活背景を理解し、同じ人間としての接点を見出し、ひとりの高齢者として見る、その上 で、社会復帰を待つ柔軟な関わりである。現在は、社会の人びとが矯正施設や罪を犯し た人の実態をあまりにも知らなすぎる。生活世界が別で接点がなさすぎる。社会的排除
の課題を解決するためには、事実や相手を知ることから始めることが必要ではないかと 考えられる。
では、次に、支援に関わる関係機関や人びとのお互いの理解、つまり、本章の調査か ら明らかになった二点目の課題である関係機関の連携について確認する。
2.支援の協働体制の未整備と関係づくりの動き
支援者が共通に課題として述べていたのは、社会復帰支援時の関係機関の連携の未整 備であった。それは、第四章の「支援の課題検討」の内容と概ね重なるものであった。
例えば、「行政の無理解」では、第四章の「軽微な犯罪を繰り返す高齢者」の経済的支 援の生活保護受給や住居確保支援の措置施設の利用困難性と重なるものであった。支援 者は、支援の困難は地方行政がうんといわないこと、更生保護に関わる根拠がない、等 と言われた経験を述べている。
支援者が述べている連携不足の深刻なものは、委託機関である保護観察所や受託機関 である支援センターの本部である福祉法人との協働体制が不確かなことである。支援者 は、最後の頼みの綱は更生保護施設なんですけど、施設長さんが近隣を気にしてうけい れてくれない、や、恥ずかしい話しなんですけど、うちの法人が理解がなくて、と困惑 した表情で語っていた。本来、保護観察所や支援センターの母体である社会福祉法人は、
脆弱な機関である支援センターのバックアップ機関であるはずである。
第4章の当為的観点からの支援課題では、「初犯で軽微な罪を行う高齢者」への受刑 回避の支援の中で見られた。支援過程で弁護士や検察庁、裁判所との協働が重要になる が、現在、個々には協働が進められているものの体系だっているものではない。
同様な課題として、第4章では「介護殺人等を犯した高齢者」のとして、出所後の自 宅復帰が示されていた。その支援には医療、心理、地域住民、行政等、公私の関わりが 必要であるが、現状は、包括的なケア体制が整っていないことが明らかになっていた。
上記のような関係する機関の協働体制の未整備は、相互に関連し、社会資源が利用し づらいという結果になっている。制度や施策があってもそれをつないで、高齢者の個別 ニーズにつなげるための共通認識である。支援者インタビューからは、罪を犯した高齢 地域の中でほとりぽっちなんです、相談できる人がいな
3.支援の課題と解決に向けての支援者活動
支援者は、支援の困難に対して次のようなソーシャルワークを行っている。だが、そ
の対応については、支援者が担当ケースによって個別に動いている傾向が現れている。
このことは、支援センター全体として、あるいは、委託機関や受託機関の協働体制や援 助システムがあるものではないと考えられる。その結果が、支援者が支援センターの事 業目的である「再犯防止」と罪を犯した高齢者の保護との間に立って、共通した対応を とれず、支援者のジレンマとして現れているのではないかと考えられる。
図表5-15 支援者が明らかにした課題と対応活動
⇒支援者のジレンマ
4.よりよい支援に向けての視点
最後に、今後のよりよい援助に向けて、どのような視点が重要であるかを整理する。
第4章からは、罪を犯した高齢者への社会復帰支援に対して、法とソーシャルワークの
地域の人に個別に理 解を求めていく 引き受けてくれた福祉 施設に訪問回数増やす
保 護 観 察 所に 入 所 施 設への同行依頼
地元の理解のある医療機 関へ協力のお願い
支援者からの課題
行 政 へ個 別事例の 協 働 支 援依頼や支援会議へ の参加要請
支援者の課題対応
福祉施設がうけいれてくれない
刑事司法と社会福祉の連携不足
地元行政の無理解
孤立する高齢者
医療・心理との連携不足
犯した人高齢者の保護と 社会の保護の両立 制度の不備