第二章 未就学の第 1 子を持つ共働き家庭の役割分担
2.1 調査協力者のプロフィールと特徴
2.調査結果
表 3-2 基本情報と家族構成(中国調査)
№ 年齢 学歴② 年収① 健康状態 住居 子ども 祖父母の居住地と協力の有無 Q 夫 30 代 大学院 40 良好
持ち家 長女 3 歳半 省外・協力あり Q 妻 30 代 大学 16 定期通院 市外・協力あり R 夫 30 代 大学 80 良好
持ち家 長男 4 歳 省外・協力あり R 妻 30 代 大専 50 良好 ×
S 夫 30 代 大専 30 良好
持ち家 長女 4 歳 省外・協力あり S 妻 30 代 大学 10 良好 省外・協力あり T 夫 30 代 大専 20 良好
持ち家 長男 5 歳 市外・協力なし T 妻 30 代 大学 6 良好 市外・協力あり U 夫 30 代 大学 14 良好
賃貸 長男 3 歳 市外・協力なし U 妻 30 代 中専 20 良好 市外・協力なし V 夫 30 代 大学 30 良好
持ち家 長男 5 歳 次男 1 歳
市内・協力あり V 妻 30 代 大学 13 定期服薬 市外・協力あり W 夫 30 代 大学 15 良好
賃貸 長女 5 歳 次女 1 歳
市外・協力あり W 妻 30 代 大専 10 良好 市外・協力あり X 夫 30 代 大学 20 良好
持ち家 長男 6 歳 市外・協力なし X 妻 30 代 大学 10 良好 市外・協力なし Y 夫 30 代 大学 20 良好
賃貸 長女 3 歳 省外・協力なし Y 妻 30 代 大学院 8 良好 市外・協力あり Z 夫 30 代 大学 9 良好
賃貸 長女 6 歳、
長男 3 歳
市外・協力あり Z 妻 30 代 高校 5 良好 市外・協力なし
②大専は技術専門大学、中専は技術専門高校を意味する。
表 4-1 勤務状況(日本調査)
№ 職種③ 勤務時間 通勤時間
休日 残業状況 産休(付添)+育休取得 当時の職場風土 A 夫 事(正) 8:30-17:30
車 15 分
土日祝 あり なし 取りにくい A 妻 事(正) 9:00-16:00
車 15 分
土日祝 なし (時短中)
規定産休+1 年/1 年 代替要員なし B 夫 専(正) 9:00-17:30
徒歩 10 分
土日祝 自己調整 なし
自己調整可能 B 妻 専(正) 9:00-15:00
徒歩 5 分
土日祝 自己調整 (時短中)
産休 8 週/16 週(育休なし) 自己調整可能
C 夫 事(正) 8:45-17:30 徒歩 25 分
土日 あり なし 取りにくい C 妻 事(正) 8:45-16:30
車 25 分
土日 あり (時短中)
規定産休+8/5/5 ヶ月 代替要員なし
D 夫 事 → 事 (正)
8:45-16:30 地下鉄 20 分
土日祝 あり 出産付添 1 日 自己調整可能 D 妻 事(正) 8:45-16:30
地下鉄 20 分
土日祝 なし 規定産休+9 ヶ月/1 年 代替要員なし
E 夫 専(正) 9:00-17:30 場所不定
日祝 なし 出産付添 1 週 取りにくい E 妻 パ → 専
(正)
9:00-17:30 場所不定
日祝 なし (時短中)
規定産休+1 年/1 年 自己調整可能 F 夫 専(正) 7:00-18:00
徒歩 1 分
季節休 週 1
あり 出産付添 1 週 取りにくい F 妻④ ア ⇒ 事
(正)
10:00-16:00 車 40 分
週 2+日祝 なし (妊娠後期)
なし・産後就職 制度整備最中 G 夫 サ(正) シフト制
車 20 分
不定休 週 1—2
なし なし 取りにくい G 妻 ア ⇒ サ
(パ)
9:00-16:00 地下鉄 40 分
土日祝 なし なし・産後就職 配慮あり H 夫 販(正) 9:00-18:00
地下鉄 45 分
土日祝 あり 出産付添 2 週 取得者なし H 妻 事(正) 8:30-16:30
地下鉄 40 分
土日祝 なし (時短中)
規定産休+1 年 4 ヶ月 女性取得可能
I 夫 事(正) 8:45-17:30 地下鉄 30 分
土日祝 なし 育休 1 年半 自己調整可能
I 妻 事(正) 8:45-16:30 地下鉄 30 分
土日祝 なし (時短中)
規定産休+1 年 自己調整可能 J 夫 販 → 販
(正)
8:45-18:00 車 30 分
週 2 あり なし
制度有無不明 J 妻 専(正) 9:00-16:00
車 1 時間
日祝 なし (時短中)
規定産休+5 カ月/1 年 職場配慮あり
③厚生労働省職業分類表参照。専:専門的・技術的の職業、サ:サービスの職業、事:事務的 職業、販:販売の職業、管:管理職。ア:アルバイト、パ:パ-ト、フ:フリーランス、正:
正規。「→」は無職期間のない転職、「⇒」は無職期間がある転職。(表 4-2 も同様)
④F 妻は調査時点で妊娠後期であったため、勤務日数と勤務時間は通常の正社員より限られ ている。
⑤「規定産休」は産前産後 112 日間である。
表 4-2 勤務状況(中国調査)
№ 職種③ 勤務時間 通勤時間
休日④ 残業状況④ 産休(付添)取得 職場風土 Q 夫 事(正) 8:30-17:30
自転車 20 分
土日祝 あり 1 週間 休みやすい Q 妻 専(正) 8:30-17:30
自転車 30 分
土日祝 あり 5 ヶ月 休みやすい R 夫 専 ⇒ 起
業
9:00-17:30 車 10 分
土日祝 あり 1 週間
自己調整可能 R 妻 専 ⇒ 起
業
在宅勤務 — — 4 ヶ月
自己調整可能 S 夫 専・管
(正)
9:00-17:00 車 20 分
土日祝 あり 1 週間
自己調整可能 S 妻 事(正) 8:00-17:00
車 20 分
土日祝 なし 3 ヶ月
自己調整可能 T 夫 専・管
(正)
9:00-17:30 自転車 20 分
土日祝 なし 1 日
休みやすい T 妻 事 ⇒ 事
(正)
9:00-17:00 車 10 分
土日祝 なし 出産時離職 休みやすい U 夫 専(正) 8:00-17:00
地下鉄 30 分
土日祝 あり 2 週間 休みやすい U 妻 事 ⇒ 自
営
8:30-20:20 住職一体
無休 あり 妊娠に備えて退職 自己調整可能 V 夫 専(正) 8:00-17:00
自転車 15 分
土日祝 なし 2 日/2 日 休みやすい V 妻 専 → 専
(正)
8:00-17:00 自転車 15 分
土日祝 なし 7 ヶ月/5 ヶ月+二子とも 時短 1 年間
休みやすい W 夫 専(正) 8:30-17:00
車 15 分
土日祝 あり 1 ヶ月/1 ヶ月 休みやすい W 妻 専・管
(正)
8:30-17:00 車 10 分
土日祝 なし 6 ヶ月/2 ヶ月 休みやすい X 夫 専→管
(正)
8:30-17:30 車 20 分
土日祝 なし 1 週間 休みやすい X 妻 事⇒専・
管(正)
冬 8:30-17:00 夏 8:00-17:00 車 10 分
土日祝 なし 3 ヶ月
自己調整可能
Y 夫 専・管 (正)
9:00-18:00 車 10 分
土日祝 あり 2 週間
自己調整可能 Y 妻 事(正) 8:00-17:00
徒歩 10 分
土日祝 なし 当時無職 休みやすい Z 夫 フ → 専
(正)
8:30-17:30 自転車 30 分
不定休 あり 長女出産時非正規 長男出産時 1 ヶ月 Z 妻 専 ⇒ 専
(正)
8:00-17:30 自 転車 15 分
土日祝 なし (時短中)
長女 3 カ月/長男離職 職場配慮あり
③「起業」という言葉は自ら会社を立ち上げ、従業員を雇用する形で運営する意味で用いる。
「自営」とは自ら店を開き、他人を雇用しないで自分や自分の家族が従業員になって運営す ることである。(他は表 4-1 と同様)
④「-」は非該当。
第 1 節で述べた、調査協力者を募集する際の 3 点の工夫によって、一定の特徴を持つ共働 きカップルが調査対象となった。ここでは先述のプロフィールに基づき、これから分析・検 討の対象となるカップルの特徴(裏返せばバイアスでもあるが)を改めて確認し、その位置づ けを明らかにしておく。
本研究の分析対象となるカップルは、中日両国の都市部で暮らし、相対的に教育レベルが 高く、未就学の第 1 子を育てる、共働きの夫妻である。こうした対象設定はいくつかの特徴 がある。第 1、保育施設経由で協力者を募集したことで、第 1 子が生れた直後という段階で はなく、子育て生活を 3 年から 5 年間ぐらい送ってきたというライフ・ステージにいるカッ プルが最も多い。このライフ・ステージでは、第 1 子の誕生や第 1 子を保育施設に預けるな ど、夫妻が役割分担を調整する契機となりうるいくつかのライフ・イベントを経験してきて いる。
第 2 に、共働きのカップルは、片方だけが働くカップルと比べて夫妻間の収入や時間とい った資源格差が縮小している。これは家族単位で考えると経済的資源がより豊かになり、時 短家電の購入や外部サービスの利用など、家庭役割を遂行する際により多様な選択肢を持つ 可能性とつながる。家庭内の個々人に着目すると、本調査では、妻の収入が夫を上回るカッ プルが限られ、全体的に夫が妻より多く稼ぐ同時に長く拘束されていることが分かる。夫と 妻の職歴で見ると、初職継続者が半分以上である一方、転職・離職を経験する方もいる。そ のうち夫たちが基本無職期間のない転職で妻たちが妊娠出産前後にしばらく離職しているこ とがある。夫は妻よりキャリアを中断することなく積み重ねていき、また収入も妻より高い という傾向は、先行研究と一致している。
第 3 に、中国と日本の両国で調査を実施したが、結果的に見れば調査対象は同じく、都市 中間層という階層に当てはまる。落合他(2007)によると都市中間層とは、1980 年代以降の経 済発展により台頭し、アジアにおける本格的な近代市民社会の成立を告げる階層である。具 体的には、「都市に居住し、中等教育以上の教育レベルがあり、典型的には経営・管理職、
専門・技術職、事務職や一部のサービス業などの職業に従事し、近代的な生活様式や政治意
識を持つ階層」(落合他 2007:1)のことである。本調査に応じたカップルは、こうした教育 レベルや手に入れられる経済的・社会地位的の資源、ならびに保育施設といった公的資源と つながる。経済的の事情などで制限の多い生活を送る人々と比べて、自分のライフ・スタイ ルを選ぶ余地も広げられている。にもかかわらず完全に経済的に自由になったわけではな く、そのため夫も妻も稼得役割と家庭役割に挟まれつつ、そのバランスを夫妻で保とうとし ない限り家庭生活を維持できない状態にある。本研究の分析は、制限の多い生活を送る人々 や少数の富裕層ではなく、こうした現代社会の発展と共に拡大していく都市中間層カップル を対象に、夫妻の役割分担・調整を検討していく。
最後に、夫妻が共に調査に応じてくれる点で夫妻 2 人の関係の良さが推察される。調査に おいても役割分担だけではなく、パートナーとの愛情関係が分かるようなエピソードやパー トナーについての自慢も効かれた。また、パートナーに対して理解のある姿勢も、インタビ ュー調査から伝わってくる。