第五章 子どもが生まれた後の家庭役割分担とその変化
2.3 急病/急用の対応
J-D 妻:「取りやすい、取りにくいのは同じだと思います。でも旦那のほうは、融通 利かないでしょうね、奥さんのほうが休みやすいでしょうって、世間的に思っている ので、旦那さん自身もそう思っているかもしれないですね。それに私も自分の子ども だと思って、何かあるときは私が行くなぁって思って、余計にそう(自分ばかり休み を取る)なっていくよね」。
J-D 夫:「基本妻のほうが行ってくれます。基本的に妻が行きますね。どうしてもの 時は私が行くようにしています。単純に妻に甘えていると思いますね。子どものため に休みを取るのはぜんぜん、取れるか取れないかが問題じゃないので。でも子どもも きっとお母さんのほうが安心する部分もあると思うので」。
一方、家庭役割を夫妻分担の形で遂行しているカップルでは、保育施設からの連絡が夫妻 どちらを宛てであるかで対応者が変る。V カップルは主に夫が対応している。
C-V 夫:「幼児園はイベントだったらお母さんが参加することが多いけど、面倒を見 るなら私のほうが休むことが多いですね。どっちも休めないならお祖父ちゃんお祖母 ちゃんに頼むし。(私の)職場が幼児園に近いから、病院に連れていくのもほとんど私 ですね」。
C-V 妻:「お父さんが休みを取ることが多いですね。(夫が普段)わりと忙しいから、
有給がけっこう貯まっているからね」、「一応私のほうも昼の 11 時から午後 1 時半は 休憩だから、万が一病気とかで私もその間は戻ることができるし。それでも基本夫が 幼児園と連絡するから(妻と)相談しないまま夫が対応することが多いですね」。
B カップルからも似たような話があった。ただし B 夫の話からは、保育施設側が夫よりも妻 と連絡を取りたがる傾向も読み取れる。
J-B 妻:「時間が空いている人がやる感じね。まずは私に連絡が来るので、私が対応 しますね。でもいままで私が休めないときはないから。たぶん夫だけにしてもらった ことはないんじゃないですかね。私が電話に出られなくて夫が対応したことはあるか もしれないけど。それで(夫妻で)連絡しあって」。
J-B 夫:「どっちもしますね。保育園はお母さんのところに電話するけど、妻がよく 忙しくて出られなくて、(そうしたら)保育園の先生が申し訳なさそうに『お母さんに 何度も電話したんですけど、出られなくて』って僕のほうに電話したことがあるけ ど。(僕としては急用の対応は)別に何も(困ることではない)」。
以上の整理から、「急病/急用の対応」は多くの場合妻が担っており、その背後に夫と妻の 勤務状況、職場の理解の差が見られる。しかしそれよりも重要なことは、夫妻が同じぐらい の休みやすさであっても、「母は子どものことについて詳しい」、「病気で気が弱っている子ど もにはきっと母の方がいい」といった考えが存在することである。
この節では「夜間の対応」「送迎」「急病/急用の対応」という子どもが成長していくなかで 必ずと言っていいほど現れる育児役割を中心に、そうした役割を遂行・分担するために夫と 妻が職業人役割、親役割、パートナー役割の三つの身分・役割が重なるなかでどう行動して いるかを整理した。そこで確認されたのは、子どもが生まれた後の、家庭役割は、繰延可能で 裁量をもって遂行されるものではなくなり、育児をはじめすぐ対応しなければならないこと や、毎日決まって遂行されねばならないことが増えていく。子どもの誕生による家庭役割の 性格・特徴の変化が明らかにある。それでも夫と妻は新たな役割遂行スキルを学びつつ分担 していくカップルと、夫妻がだんだん異なる捉え方で事柄を解釈するようになっていくカッ プルが見られる。次節では本研究を通して見えてきた育児分担や夫妻の役割分担の調整に影 響する要因を説明していく。
3.育児分担の規定要因と夫妻間の調整