第五章 子どもが生まれた後の家庭役割分担とその変化
1.2 第 2 子の誕生
J-D 妻:「第 2 子のときは、私が休み取ってよかったね。そういうのを取っていなか ったらできないよねって。もう必死すぎてなにもはっきり覚えていないですよ。とり あえず第 1 子を保育園に預けながら必死に二人の子どもの面倒を見ていた」。
そうした中で夫の分担が間接的に促されることもある。A カップルは結婚時点で妻が夫と の交渉に失敗し、断念していたが、第 2 が生まれたことで夫の分担は少しだが自ずと進んで きた。
J-A 妻:「二人目ができた時も、まだ忙しくて。その状態が続いてきたので、さすが に私のキャパを超えていて。さすがに大変だったけど、パパも私のそういう様子を見 て、さすが二人目ができて、保育園に通わせてもさすがに(私一人では)大変だろうと 自覚を持ってくれたので。私から特に『これをやって』って言わなくても、向こうか ら(分担を調整する)話をしてくれたよね」。
J-A 夫:「(二人目が生まれると)できないよね、物理的にできないよね。だからこっ ちも参加していく感じで」、「話しあったことがないですね。妻に、『何をやるのが大 変なんだ』って聞いていましたね。『風呂洗いが苦痛だ』とか、『じゃあれぐらいは、
やる』って」、「私はできることをやるようにしてきた。できることは限られています から、(だから)やったという事実で自分の中で満足すればいいから」。
A 夫の分担が進んだのは、第 2 子の誕生で妻が一人で家事育児をすべてこなせなくなった からである。内田(1994:64)が指摘した通り、夫が家事や育児を行うか行わないかは、夫自身 に判断する余地があり、もともと行わなければならないことをしているという意識は夫たち にない。このような状況はパターンⅢのカップルの夫たちによくみられる。
注目すべきことは、役割の量だけではなく、第 2 子の妊娠と誕生は第 1 子と全く異なる側 面がある。第 1 子が生まれるまでは、家庭には自立する成人同士である夫妻しかいなかった のに対して、第 2 子が生まれる前は、第 1 子の世話をしなければならない状況にある。また、
第 1 子の時体調不良を経験していなくても、第 2 子がそうであるとも限らない。カップル B は妻が第 1 子の出産の直前までずっと働いていたのに対し、第 2 子の時は、子どもの発達状 況により出産前から入院していた。その間、第 1 子の世話をすべて夫に任せ、その流れで第 2 子が生まれる、夫が第 1 子担当で妻が第 2 子担当の形になった。
J-B 妻:「この間、入院していて、3 歳の娘のことが、全部夫がやっていて。遊びやら ご飯やら全部夫がやっていて、ああじゃ全部できるんだって思ったよ」、「今に関して 言うと、上の子は夫が詳しくて、下の子は私で、そこは二人で分担しているね。夫は 下の子を風呂に入れるのは一度もないです。首がぐらぐらするのが怖いので、まだま だ怖いって(夫が)言い続けて。上の子はその時(風呂に)入れてくれていたけど、今は 下の子は私が(担当する)」。
こうした夫妻それぞれで第 1 子と第 2 子に担当が分かれると、互いのことが分からなくな
り、経験の共有が難しくなることも夫が語っている。
J-B 夫:「上の子は僕ですね。(保育園の)ノートとかも(僕が書く) 。下の子は哺乳と かうんことかの表をつけないといけないので、それは(下の子を担当する)母親じゃな いと分からないので」。
調査時点で妊娠していた F 妻も、第 1 子の世話を夫に任せるようも調整をしている。
J-F 妻:「私はいま妊娠期なので、子どももいまいやいや期で、なにやっても嫌っ て。だから全部夫に任せた方が私も楽だし、お父さん怒らないし。(夫が)そんなにい らいらしないタイプなので、子どものことをやらせたほうが(いい)。子どもと二人で 風呂に入ると、私も、お腹が蹴られたら危ないなぁって思って、全部そっちはお父さ んにお任せしている」。
J 妻の場合は夫側祖母からの協力を得ていた。
J-J 妻:「つわりは、一人目のときはそんなになかった。二人目はありましたね、子 どもが生まれる前が、家で安静にしなきゃいけないときが 1 か月間くらいあって。そ のときは旦那のお母さんが近くにいて、手伝いに来てくれて、ご飯を作ってくれたり とか。これは二番目の時だよね。一番目のときはわたししかいないので、そんなに困 らないですよね。二番目のときは上の子の面倒もあるよね」。
E カップルは第 1 子の時に夫側祖母から協力を得ていたが、互いに相性が合わないことを 知り、第 2 子の時は短時間で家事代行業者を利用していた。
J-E 妻:「上の子が生まれたとき、夫側のお母さんが来られたけど、あまり、助けに ならないということは分かったので、下の子の時はお呼びしません」、「娘がちょうど 三歳で、いろんなことをするのも嫌がる時期なので、それを相手にして夫が家事も全 部やるのは無理だろうなって思って。私の体調がよければできるけど、それも(出産 したあと実際どうなるかが)分からないので。(家事代行は)週 1 回くらいは、楽にで きれば、すこしいいじゃない。2 回も 3 回もならやっぱりお金もかかるので、じゃ 1 回だけをお願いしてみようとお願いしたんだよね」。
以上の整理から、子どもが生れて家事育児の性格・特徴が変り、全体的に量が増えていく なかで、子どもを中心に家庭生活が営まれていくことが分かった。さらに第 2 子が生まれる 時点ではケアが必要の第 1 子も抱えているため、夫妻間のさらなる協力や外部からのサポー トが重要である。こうしたなかで一つ一つの育児役割の項目に関して、夫妻はどのように分 担・調整しているか、これについて次節で議論を深めていきたい。
2.役割項目から見る夫妻の育児分担
本調査のなかで協力者たちは、子どもが生まれてから「自然に」妻がかかわることの始ま りを、妻の出産休業(以下「産休」)の取得と関連して説明している。しかしそこに一つの矛盾 が見られる。それは出産した妻が自らの体調回復のために利用した産休であるにもかかわら ず、休んで家にいる妻が夫と比べて長く家にいる分、子どものニーズに直面して子どもの世 話をしなければならない、という矛盾した構造である。
これに関して D 夫の語りは典型的である。
J-D 夫:「(妻の)体もね、産前産後けっこう大変だし、肉体的にもつらいし、体力的 にも落ちるから、女性が当然休むのが必要だし。(でも)合わせて男性も(休暇)取るか というのがね、女性が休むのはそうだねって思うから、男性もやすむというと、実際 は(出産付添休暇)取りにくいと思うね」、「(だから出産付添休暇も育休も)妻に任せ て、そっちが取ってくれたので、私が取らずに済むので、妻に甘えて」。
子どもが生れて、夫妻ともに休めたら当然いいことだが、子どもの誕生で家庭の出費が増 える点で稼得役割も誰かが担わないといけない状況も見逃せない。夫妻の稼得役割の遂行に ついて次章で検討するが、この節ではまず、子どもが生れ、成長していくなかで現れる育児 役割を、具体的な項目を例示して夫妻の分担・調整を検討する。
ここでは、子どもが生まれることで新たに増える育児役割の事例として、「夜間の対応」、
「送迎」、「急病/急用の対応」という三つの項目を取り上げて検討を進める。三つの項目はい ずれも子どもが成長していく異なる段階に現れてくる役割の項目であり、その繰延不能と不 可避的な性格により、場合によって夫や妻の稼得役割にまで影響を及ぼす育児役割でもある。