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誤差モデルによる測定誤差の原因検討

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 51-61)

第 2 章 既存の高精度歯車測定機の評価

2.4 問題点の解析

2.4.2 誤差モデルによる測定誤差の原因検討

Figure 2.16は,歯車測定機における座標系である.歯車測定機は,被測定歯

車の半径方向(ラジアル方向),歯すじ方向(アキシャル方向),歯形の作用線 方向(タンジェント方向),および歯車回転軸(主軸)からなる座標系で測定を 行う.歯形測定においては,上記の座標系のうち,タンジェント方向変位と主 軸回転角を用いて理論式(1.1)より誤差を算出する.測定値のほかに,理論式(1.1) では,基礎円直径がパラメータとして必要である.

ここでは,各軸方向および誤差算出のためのパラメータに対して,誤差が生 じた場合に測定値へどのような影響を与えるのかを検討する.

Axial(Z)

Tangent(Y) Radial(X) C

Figure 2.16 Coodinate system of GMM

1)タンジェント軸に関する誤差モデル

創成方式による歯形測定においてタンジェント軸方向は測定子の移動方向で ある.そのため,タンジェント軸に関する測定誤差はそのまま歯形誤差の測定 誤差となる.Figure 2.17の誤差モデルに示すように,直線を測定する場合の幾 何学的な誤差としてコサイン誤差がある.これは,変位方向と測定する方向と が完全に平行でない場合,実際の変位量に対して測定量が小さくなるという現 象である.試作機で考えた場合,レーザ測長機の測定方向とタンジェント方向 との角度によってコサイン誤差が発生する.

η y

y' Tangent(Y)

Radial(X)

Figure 2.17 Error model of tangent direction

そこで,実際の変位量をy,測定量をy',方向角誤差をηとすると式(2.11)の 関係となる.ただし,方向角誤差ηが十分小さければ測定量への影響は小さく,

ここで定義したコサイン誤差は無視できるといえる.

η

⋅cos

′= y

y (2.11)

2)アキシャル軸に関する誤差モデル

歯形測定においてアキシャル軸方向は測定平面に含まれない.よって,アキ シャル方向に誤差を持つ場合でも,測定中にアキシャル方向への変化がなけれ ば歯形誤差曲線には影響を与えない.したがって,歯形測定においてアキシャ ル方向の誤差は考えないこととする.取り外しまで含めて再現性を見る場合,

アキシャル方向の誤差が存在すると測定個所が変わる.また,歯すじ測定では アキシャル方向に測定子を移動させるので配慮が必要である.

3)ラジアル軸に関する誤差モデル

歯形測定の際は,測定子のラジアル方向の位置は基礎円上にある必要がある.

Figure 2.18は,ラジアル方向に位置決め誤差を持つ場合の誤差モデルである.

Figure 2.18におけるインボリュート曲線 S1は式(2.12)で表せる.

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

+

= −

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

θ θ θ

θ θ θ

sin cos

cos sin

rb

x

y (2.12)

半径方向の誤差をΔrとしたとき,インボリュート曲線S1をOまわりにα回 転させて測定子を点mで歯面に当てることを考える.このときのインボリュー ト曲線は S2 のようになる.基礎円を基準にして点 m を見ると,式(2.13)と式 (2.14)が成り立つ.

r r r

ye = Δ 2 +2 bΔ (2.13)

b b b

e

e r

r r r r

y Δ + Δ

=

= 2 2

θ (2.14)

すると,回転角αは式(2.15)で表せる.

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ Δ

− +

=

r r

r

b b e

cos 1

θ

α (2.15)

また,点 m から測定を開始する(θ=0)ことを考えると,インボリュート曲線 S2は式(2.16)で表せる.このときθm=θ+θeである.

( ) ( )

( ) ( )

⎢⎣

+ +

+

= −

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

m m m m

m m

m m m m

m m

rb

x y

θ θ θ α θ

θ θ α

θ θ θ α θ

θ θ α

α α

sin cos

cos cos

sin sin

sin cos

sin cos

sin

cos (2.16)

次に,半径(rb+Δr)上の点P(xp, yp)を点mからθ回転させることを考える.

まず,点Pの座標は式(2.17)で表せる.

( )

⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⋅⎛ Δ +

⎟=

⎜⎜

θ θ cos r sin x r

y

b p

p (2.17)

このとき,点 P からインボリュート曲線 S2 に伸ばした接線の長さが,イン ボリュート曲線S2をインボリュート曲線S3までθ回転させたときの測定値yΔr

となり,式(2.18)で表せる.ただし,ラジアル方向に誤差がない場合の測定値は θ

=rb

y である.

(

p

) (

2 p

)

2

r y y x x

yΔ = α − + α − (2.18)

以上の式を用いて,前提条件(基礎円半径49400[μm])で数値計算を行った.

すると,ラジアル方向に1000[μm]の位置決め誤差を持っても,誤差は10-12[μm]

のオーダであった.よって,ラジアル方向に位置決め誤差が存在しても,測定 値に与える影響は少ないと言える.

α

Δr rb θ

y P(yp,xp) y

y

O

S1 S3 S2

m

Radial(X)

Tangent(Y)

Δr e

e

θ θ

Figure 2.18 Error model of radial direction

4)主軸に関する誤差モデル

主軸に関する幾何学的な誤差として偏心と倒れがあげられる.ここで,偏心 とは被測定歯車の中心が回転軸の中心から平行移動した状態を指し,倒れとは 被測定歯車の軸心が下部センターとの接触点を支点として回転した状態を指す こととする.Figure 2.19は,(a)偏心がある場合の誤差モデルと(b)倒れがある場 合の誤差モデルである.ここで,ラジアル軸方向を基準として,偏心方向をα, 偏心量をε,主軸回転角を θ,基礎円半径を r,ラジアル(X)-タンジェント(Y) 平面における上下センター間の距離(上下センター中心のずれ)をΔc,上下セ ンターのアキシャル方向距離(被測定歯車の軸長)を L,回転軸中心を基準と して上下センター中心がずれた方向への倒れの角度をφとする.

まず,測定機の上下センターに誤差があった場合の偏心と倒れについて,ど の程度の割合で影響するかを検討する.測定誤差の指標として,回転軸中心を 基準とした基礎円半径の変化で評価する.

Radial(X) Tangent(Y)

ε α θ

(x,y)

φ

ε Δc

L r

(a) In case of eccentricity (b) In case of incline Figure 2.19 Error model with eccentricity and incline

倒れの方向を θ=0 の方向に定めると,計測される基礎円(楕円)は式(2.19) で表せる.また,中心から測定点(x, y)への直線は式(2.20)で表せる.そこで,偏

心量10[μm]の場合について2つの式を解き,測定点の座標を求めて理論値との

誤差を算出した例をFigure 2.20に示す.

( ) ( )

sin 1 cos

cos

2 2 2

2

− = +

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

r y r

x ε α

φ α

ε (2.19)

θ tan x

y= (2.20)

一般的にインボリュートアーティファクトの歯面は全長Lの中央付近にある.

よって,歯形測定位置での偏心量ε は上下センターのずれΔcの1/2程の大きさ となる.被測定歯車の高さが 280[mm]の場合に上下センターのずれ量を変えた ときの偏心による誤差と倒れによる誤差をTable 2.11に示す.この比較を見る と明らかなように,倒れによる誤差は偏心による誤差に比べて非常に小さい値 となる.よって,ここでは偏心のみを取り扱うこととする.

-6 -4 -2 0 2 4 6

0 90 180 270 360

Angle [°]

Deviation [μm]

0 0.00001 0.00002 0.00003 0.00004 0.00005 0.00006 0.00007

0 90 180 270 360

Angle [°]

Deviation [μm]

(a) In case of eccentricity (b) In case of incline Figure 2.20 Error simulation of base radius by gap 10[μm] of centers

Table 2.11 Errors by eccentricity and incline

Gap of centers [μm] 1 5 10 20 50

Error by eccentricity [μm] 0.5 2.5 5.0 10.0 25.0

Error by incline [μm] 6.3×10-7 1.6×10-5 6.3×10-5 2.5×10-4 1.6×10-3

主軸に関する偏心としては,大きく「回転軸中心とロータリエンコーダ中心 の偏心」と「回転軸中心とインボリュート曲線原点(被測定歯車の中心)の偏 心」の2つがあげられる.前者は回転角の測定における角度誤差となる.また,

後者は測定されるインボリュート曲線の位置が変わるため,偏心の成分を考慮 した理論式を使う必要がある.

P(x,y)

O O'

θ θ'

Δx

Radial(X) Tangent(Y)

r

Figure 2.21 Error model of center eccentricity between rotation and rotary encoder

Figure 2.21は,回転軸中心とロータリエンコーダ中心の偏心の誤差モデルで

ある.ここでは単純にラジアル方向にのみ偏心していると仮定し,回転軸中心 をO,ロータリエンコーダ中心を O',回転角をθ,ロータリエンコーダから読 み取る角度をθ',偏心量をΔx,ロータリエンコーダの目盛り板の半径をrとす ると,点Pの座標値(x, y)は式(2.21)および式(2.22)で表せる.そこで,r を消去 するようにxについて解き,式(2.23)でθ'を求めて回転角θとの差から角度誤差 を算出できる.

( )

x r

x= cosθ′ +Δ (2.21)

( )

θ tan

( )

θ

sin x

r

y= ′ = (2.22)

( )

x x x x

x y

Δ

= − Δ

= −

θ

θ tan 1 tan 1 tan (2.23)

そ の 角 度 誤 差 の 一 例 と し て , ロ ー タ リ エ ン コ ー ダ の 目 盛 り 板 の 直 径 が 110.7[mm],偏心量が0.5[μm]の場合の計算結果をFigure 2.22に示す.この結果 から分かるように,偏心が存在する場合は1回転を1次とする正弦波として角 度誤差が現れることが確認できる.

-3 -2 -1 0 1 2 3

0 45 90 135 180 225 270 315 360

Angle [°]

Angle error ["]

Figure 2.22 Error simulation of center eccentricity

次に,Figure 2.23 は,回転軸中心とインボリュート曲線原点の偏心の誤差モ

デルである.ここで,インボリュート曲線原点をO,回転軸中心をO',回転軸 中心とインボリュート曲線原点のラジアル方向ずれ量をRe,回転軸中心とイン ボリュート曲線原点のタンジェント方向ずれ量をTe,基礎円半径をrbとする.

O'

O Re

Te

rb

Tangent(Y)

Radial(X)

Figure 2.23 Error model of center eccentricity between rotation and involute origin

インボリュート曲線は,基礎円中心座標を(0,0),ラジアル方向座標を x,タ ンジェント方向座標をyとすると式(2.24)で表せる.

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

+

= −

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

θ θ θ

θ θ θ

sin cos

cos sin

rb

x

y (2.24)

ここで回転軸中心座標をO' (Te,Re),O'回りの回転角をαとすると,O'回りの 回転変換は式(2.25)で表せる.そして,式(2.25)を展開して式(2.26)と式(2.27)が 得られる.

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎝ +⎛

⎟⎟⎠

⎜⎜⎝

⎛ ⎥

⎢ ⎤

−⎡

⎥⎦

⎢ ⎤

⎟⎟ ⎡

⎜⎜ ⎞

⎛ −

⎟⎟=

⎜⎜ ⎞

e e e

e e

e

R T R

T x y x

y

α α

α α

cos sin

sin

cos (2.25)

( )

b

( )

e e e

b

e r r T R R

x = cosθ−α + θsinθ −α − sinα− cosα+ (2.26)

( )

b

( )

e e e

b

e r r T R T

y = sinθ −α − θcosθ−α − cosα + sinα+ (2.27)

-3 -2 -1 0 1 2 3

0 5 10 15 20 25 30 35 40

Roll angle [°]

Deviation [μm]

(3,3) (3,-3)

Figure 2.24 Error simulation of involute profile measurement with eccentricity ラジアル方向の測定位置はrbなのでラジアル方向の式をθについて解き,そ のθをタンジェント方向の式に代入したものが測定値となる.そこで,式(2.26) と式(2.27)を用いて数値的に解いた結果を Figure 2.24 に示す.図の上の曲線は 回転軸中心(3,-3)[μm],下の曲線は回転軸中心(3,3)[μm]の結果であり,いずれも

偏心量は4.2[μm]である.この結果より,Figure 2.6に示したインボリュートア

ーティファクト測定時の回転角37[°]において,約2[μm]の誤差を生じることに

件で試算すると,測定角度 37[°]における誤差は,回転軸中心が(0.1,0.1)[μm]の ときに 0.08[μm],(0.5,0.5)[μm]のときに0.4[μm]となり,偏心量と同程度の大き さで測定誤差となりうる.このため,高精度に歯形測定を行う際には偏心測定 を行い,偏心を考慮した補正式を用いる必要があるといえる.

5)基礎円直径に関する誤差モデル

Figure 2.25は,基礎円直径の誤差のモデルである.基礎円直径dbに対して設

定値がΔdの誤差を持っている場合の歯形誤差の計算結果y'は式(2.28)で表せる.

θ Δ ⋅

= +

′ 2

d

y db (2.28)

基礎円直径の設定値に関する誤差は,理論式(1,1)との差から式(2.29)で表せる 傾きの誤差となるため,歯形こう配誤差に大きく影響する.

θ Δ ⋅

=

′−

=

Δ 2

y d y

y T (2.29)

例えば,基礎円直径dbが98.80[mm],歯先円直径dkが117.61[mm]のインボリ ュート歯形において,設定した基礎円直径に 1[μm]の誤差があると,測定結果 の歯型こう配誤差に0.32[μm]の誤差が生じることになる.

O db/2

Tangent(Y)

Radial(X)

Axial(Z)

−Δd/2

Figure 2.25 Error model of base diameter

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 51-61)