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測定精度の評価

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 180-189)

第 4 章 新高精度歯車測定機の開発

4.6 測定精度の評価

重ねて表示している.左右歯面の測定結果には共に測定速度に依存した変化は 見られず,定性的に高い繰り返し性が確認できた.

次に,評価範囲(evaluation range)のデータから算出した標準偏差を用いて繰り 返し性を定量的に表した結果をTable 4.6に示す.3 種類の測定速度(1[mm/s], 5[mm/s],10[mm/s])に対する標準偏差をそれぞれσ1,σ5,σ10で表し,結果は全 て6σで表している.ここでは,3種類のねじれ角(0[°], 15[°]RH,15[°]LH)につ いて検証した結果を示している.逆姿勢の右ねじれ(15[°]RH)の 6σ が相対的に 大きくなっているが,最大は測定速度10[mm/s]で測定したときの0.12[μm]であ り,繰り返し性の目標値(0.3[μm]以内)に対して各標準偏差は十分小さく,定 量的にも高い繰り返し性が確認できた.

0 5 10 15 20 25 30 35

Roll length [mm]

Profile deviation [0.5μm/div]

evaluation range

1[mm/s]

5[mm/s]

10[mm/s]

(a) Left flank

0 5 10 15 20 25 30 35

Roll length [mm]

Profile deviation [0.5μm/div]

evaluation range 1[mm/s]

5[mm/s]

10[mm/s]

(b) Right flank

Table 4.6 Standard deviations of profile repeatability

Left flank

Right flank

Left flank

Right flank

Left flank

Right flank

0゜ 0.04 0.08 0.03 0.06 0.04 0.09

15゜RH 0.09 0.10 0.09 0.10 0.08 0.12

15゜LH 0.07 0.05 0.08 0.04 0.07 0.05

Helix angle

1 [μm] 6σ5 [μm] 6σ10 [μm]

2)歯すじ測定による繰り返し性の検証

Table 4.7に示す仕様の歯すじアーティファクトを使い,同一歯面の同一箇所

を10回連続測定して歯すじ測定の繰り返し性を検証した.その歯すじアーティ ファクトの外観と測定の様子をFigure 4.41に示す.歯形測定と同様に,測定効 率も検証するため,測定速度は 3 種類(1[mm/s],5[mm/s],10[mm/s])につい て測定を実施した.その他,サンプリング点数は1000[points],フィルタはカッ トオフ波長0.2[mm]の移動平均を用いてデータ処理した.

Table 4.7 Dimensions of a helix artifact (No.3)

Base diameter [mm] 100

Face width [mm] 75

Helix angle [°] 0,15(RH/LH),30(RH/LH)

Figure 4.41 Photograph of helix artifact and measurement appearance

全ての検証において「Left flank」は正規の姿勢,「Right flank」は上下を逆さ にした姿勢で取り付けて同一歯面を測定した結果である.通常,歯すじ測定は 下端面から上端面の方向で測定するが,ここでの逆姿勢の歯すじ測定時は,相 対的に同一方向への測定となるように上端面から下端面の方向で測定した.

まず,ねじれ角 0[°]の歯すじ形状の測定結果を Figure 4.42 に示す.Figure

4.42(a)は左歯面,(b)は右歯面の結果であり,それぞれ速度毎に 10 回分の測定

結果を重ねている.歯形同様,左右歯面の測定結果には共に測定速度に依存し た変化は見られず,定性的に高い繰り返し性が確認できた.

0 10 20 30 40 50 60 70

Length [mm]

Helix deviation [0.5μm/div]

evaluation range

1[mm/s]

5[mm/s]

10[mm/s]

(a) Left flank

0 10 20 30 40 50 60 70

Length [mm]

Helix deviation [0.5μm/div]

evaluation range 1[mm/s]

5[mm/s]

10[mm/s]

(b) Right flank

次に,評価範囲(evaluation range)のデータから算出した標準偏差を用いて繰り 返し性を定量的に表した結果をTable 4.8に示す.歯形の結果と同様に結果は6σ で表し,σ の添字は3種類の測定速度を示している.ここでは 5種類のねじれ 角(0[°],15[°]RH,30[°]RH,15[°]LH,30[°]LH)について検証した結果を示している.

右ねじれ(RH)30[°]の 6σ が相対的に大きくなっているが,最大は 0.28[μm]であ り,繰り返し性の目標値(0.3[μm]以内)を満足しており,定量的にも高い繰り 返し性が確認できた.

Table 4.8 Standard deviations of helix repeatability

Left flank

Right flank

Left flank

Right flank

Left flank

Right flank

0゜ 0.06 0.12 0.08 0.16 0.11 0.15

15゜RH 0.14 0.17 0.16 0.18 0.19 0.19

30゜RH 0.21 0.22 0.28 0.23 0.27 0.26

15゜LH 0.13 0.15 0.14 0.15 0.11 0.28

30゜LH 0.15 0.17 0.14 0.14 0.14 0.15

Helix angle

1 [μm] 6σ5 [μm] 6σ10 [μm]

4.6.2 再現性の評価

繰り返し性の検証と同じインボリュートアーティファクトおよび歯すじアー ティファクトを使い,同一歯面の同一箇所を約90[°]異なる4位相で測定して歯 形測定の再現性を検証した.測定速度については,繰り返し性の検証において 特に有意差が見られなかったので,測定効率を重視して 10[mm/s]で実施した.

その他の測定条件は繰り返し性の検証と同等である.

1)歯形測定による再現性の検証

ねじれ角0[°]の歯形形状の測定結果をFigure 4.43に示す.左歯面と右歯面は 共に4位相の測定結果を重ねている.それぞれ取り付け位相に依存した変化は 見られず,定性的に高い再現性が確認できた.

次に3種類のねじれ角について,評価範囲(evaluation range)のデータから算出 した標準偏差6σをTable 4.9に示す.全ての6σは0.1[μm]以下であり,目標値

(0.3[μm]以内)に対して十分小さく,定量的にも高い再現性が確認できた.

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

0 5 10 15 20 25 30 35

Roll length [mm]

Profile deviation [μm]

evaluation range

Left flank Right flank

Figure 4.43 Reproducibility of tooth profile measurement with helix angle 0°

Table 4.9 Standard deviation of profile reproducibility

Left flank Right flank

0゜ 0.09 0.07

15゜RH 0.08 0.06

15゜LH 0.09 0.07

10 [μm]

Helix angle

2)歯すじ測定による再現性の検証

ねじれ角0°の歯すじ形状の測定結果をFigure 4.44に示す.左歯面と右歯面は

共に4位相の測定結果を重ねている.歯形測定の結果と同様に取り付け位相に 依存した変化は見られず,定性的に高い再現性が確認できた.

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

0 10 20 30 40 50 60 70

Length [mm]

Helix deviation [μm]

evaluation range

Left flank Right flank

Figure 4.44 Reproducibility of helix measurement with helix angle 0°

次に,5種類のねじれ角について,評価範囲(evaluation range)のデータから算 出した標準偏差6σをTable 4.10に示す.全ての6σは目標値(0.3[μm]以内)を 満足しており,定量的にも高い再現性が確認できた.

Table 4.10 Standard deviation of helix reproducibility

Left flank Right flank

0゜ 0.09 0.10

15゜RH 0.13 0.13

30゜RH 0.20 0.22

15゜LH 0.15 0.16

30゜LH 0.16 0.13

10 [μm]

Helix angle

4.6.3 歯形測定精度の評価

繰り返し性と再現性の評価において高い測定精度が確認できたので,値付け されたインボリュートアーティファクトによる歯形測定精度の評価を実施した.

使用したインボリュートアーティファクト(Primary Master)の仕様をTable 4.11,

外観をFigure 4.45に示す.このインボリュートアーティファクトは,軸長の中

央に鏡面仕上げされた2つの歯面(左歯面と右歯面)を有し,両側に基礎円直 径と同じ直径の円板が取り付けられており,ドイツの校正機関であるPTBによ る校正結果(Calibration certificate of 2002-09-20)を持つ基準器である.

Figure 4.45 Photograph of a primary master

Table 4.11 Dimensions of a primary master

Base diameter [mm] 115.0011

Face width [mm] 5

Helix angle [°] 0

測定速度は10[mm/s]とし,同一歯面の同一箇所を約 90[°]異なる4位相で測定 して平均形状を求めた.開発機の結果はHPGMMで表す.その歯形形状をPTB による測定結果と対比してFigure 4.46に示す.この歯形形状の比較から左右歯 面は共にPTB校正機と同等形状の測定ができていることが判る.このときの開 発機の 4 位相による再現性の 6σは右歯面が 0.10[μm],左歯面が 0.12[μm]であ り,ここでも高い再現性が確認できた.また,評価範囲(evaluation range)を合わ せて算出した全歯形誤差Fα,歯形こう配誤差f及び歯形形状誤差fの値をPTB による校正値と合わせてTable 4.12に示す.その結果,校正値との差は最大で 0.2[μm]であり,従来の評価項目でも開発機の高い歯形測定精度が確認できた.

0 10 20 30 40 Roll length [mm]

PTB HPGMM

PTB HPGMM

Profile deviation [1μm/div] Profile deviation [1μm/div]

0 10 20 30 40 Roll length [mm]

root tip

evaluation range evaluation range

root tip

(a) Flank No.1 (Left flank) (b) Flank No.2 (Right flank) Figure 4.46 Comparison of tooth profile

Table 4.12 Comparison results of profile measurement Left

flank

Right flank

Left flank

Right flank

Left flank

Right flank

PTB 1.0 0.9 -0.8 -0.6 0.8 0.8

Fα [μm] fHα [μm] f [μm]

4.7 まとめ

第3章にて得られた直接駆動(DD)方式の測定機構の知見に加えて精度の安定 化や高精度化のための方策を適用して新たに高精度歯車測定機(開発機)を設 計・製作し,以下の結論を得た.

(1) 試作機の構成をベースに実験機で得られた DD 機構の知見に基づいて全 軸をDD機構とし,測定機の基準となる本体ベッドには花崗岩を採用し,

伝統のキサゲ技術を駆使して高い機械精度を実現した.そして,各軸の 応答性は試作機より大きく改善され,実験機と同等の性能が確認できた.

(2) 検出器の測定誤差を小さくするために,従来の差動変圧器に代えてリニ アエンコーダを組み込むと共に,レーザ測長機も導入した検出システム を開発した.その変位の直線性の検証において測定子のたわみをモデル 化できることを示し,補正して誤差を低減できることが分かった.

(3) 測定値の不確かさを小さくするために,空間誤差の校正としてステップ ゲージやテストバーを用いて検出器と測定機を校正する方法を開発した.

レーザ測長機との比較結果も一致しており,測定機の歯形・歯すじ測定 精度を向上できることを示した.また,回転軸には自己校正型ロータリ エンコーダを採用して組み立て時の偏心や目盛り誤差を低減できること を示した.

(4) 環境変化への対応として測定機の温度補正方法を開発した.センター台 の一致度とテストバーの中心の変化に着目し,温度変化との相関を明ら かにし,単純な熱膨張モデルで補正できることを示した.

(5) インボリュートアーティファクトおよび歯すじアーティファクトを用い た測定の繰り返し性と再現性の評価を実施し,目標の「測定速度10[mm/s]

で測定の再現性0.3[μm]以下」を達成した.また,校正されたインボリュ ートアーティファクトの歯形測定を実施して校正値と同等の結果が得ら れ,開発機の高い測定精度が確認できた.

以上より,開発機の測定能力は試作機に比べてかなり向上しており,歯車校 正システムに組み込める測定能力を持っている可能性があることがわかった.

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 180-189)