• 検索結果がありません。

測定機の温度補正

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 169-175)

第 4 章 新高精度歯車測定機の開発

4.4 測定機の校正および補正

4.4.2 測定機の温度補正

高精度な計測を行う測定機は,温度管理された恒温室に設置して使用するの が一般的であり,開発機も精度を維持するために恒温室での使用が前提である.

しかし,恒温室で維持・管理しても僅かな温度変化によって測定機にゆがみや 歪が生じる.そこで,測定機の各部に温度センサを取り付け,温度変化による 影響を明らかにして計測値を補正するシステムを開発する.

使用した温度センサはシート熱電対(K熱電対,クラス:0.4級)であり,そ

の形状をFigure 4.24に示す.K熱電対は熱起電力の直線性が良好で,広く工業

用途で使用されていることから選定した.そして,開発機において温度変化が 精度に影響することが想定される部位に配置した.配置場所は以下に示す通り,

主に熱源の影響や前後左右での差異を観察することとした.

① X軸R/Lガイド後端:モータの熱がベッドまで伝わり影響するかを観察

② X軸モータ可動子:最もベッドに近い熱源として影響を観察

③ Z軸Rガイド上下端:X軸モータ(熱源)の影響を観察

④ Y軸ガイド前進端および後退端:Z軸モータ(熱源)の影響を観察

⑤ 同期軸取り付け板下面:同期軸モータ(熱源)の影響を観察

⑥ C軸ハウジング奥:C軸モータ(熱源)の影響を観察

⑦ センター台下:C軸モータ(熱源)の影響を観察

Figure 4.24 Specification of temperature sensor (Type K thermocouple)

Figure 4.25は,測定機本体に温度センサを取り付けた様子である.図(写真)

中の青い線が温度センサであり,熱電対部をニトフロンテープで貼り付けた.

温度センサ①,⑦の配置場所は,ベッド上面の変化を把握するためにベッドの 支点付近とした.各温度センサからの温度情報はデータロガーで収集して測定 機の計測システムに記録し,計測システムはその情報に基づいて各部位の温度

Figure 4.25 Appearance attached with temperature sensors

温度変化が測定機に及ぼす影響を把握するために,開発機が設置されている 恒温室(測定センター)の空調機の設定温度を1時間毎に1[°C]変化させ,測定 機の精度として以下の2項目(A,B)を測定した.

A: センター台の一致度(上部センター側の円周8ヶ所の振れ測定)

B: テストバーの中心(アキシャル(Z)軸方向で上中下 3ヶ所を測定)

項目Aは,Figure 4.26のセンター台(Center column)をスライドする上部セン ター(Upper center)と回転軸上の下部センター(Lower center)の間にテストバー (L=400[mm])を設置し,回転軸上面から延長した測微器(マイクロケータ)で 円周方向の振れを測定する.項目Bは,Figure 4.27のように,テストバーの上 中下 3 ヶ所で±タンジェント(Y)方向から測定子をラジアル(X)方向に動かしつ つテストバーに接触させて測定し,最小二乗法によって中心を算出する.

Lower center Center column Upper center

Lead column

Granite bed Base

Figure 4.26 Front and side view of developed GMM

+Y -Y

X +X

+Y Upside -Y

Downside Middle

Figure 4.27 Schematic drawing of measuring the center of a test bar

空調機の設定温度を 20[°C]→25[°C]の範囲で変化させて実験した結果,各部 の温度変化は一様では無く,設定温度に伴って変化したが,本体精度は,セン ター台がラジアル(X)方向に大きく変化し,テストバー中心は,ラジアル(X)方 向とタンジェント(Y)方向へ共に変化が見られ,温度変化との相関も強かった.

ただし,テストバー中心がセンター台の変化以上に変化しており,お互いがお 辞儀する方向に傾いた.中心変化が温度変化と相関が強い点は理解できたが,

熱膨張で倒れが変化する点については線膨張係数が異なる材料の組合せが原因 と推測し,その原因と思われるベッド(花崗岩)と据付台(鋳鉄)の締結部を 解放して再度温度変化に伴う測定機の精度変化を測定した.これまでの実験か ら測定機本体温度は熱し易く冷め難いので,温度変化は実際の使用環境に合わ せた設定温度(20[°C]→18[°C]→22[°C]→20[°C])とした.

その結果,Figure 4.28のように温度変化はセンサ位置によって異なるが,必 要な部分では約1℃以上の変化が確認できた.そのときのセンター台一致度の

変化を Figure 4.29 に示す.温度変化に伴いラジアル(X)方向に変化し,タンジ

ェント(Y)方向への変化は小さい.これはセンター台がタンジェント(Y)方向に 対称形状であるためと考えられる.また,一致度と温度の相関をFigure 4.30に 示す.このグラフからも温度変化に伴いY方向への変化はほとんど無く,X方 向に変化して温度との相関が高いことが確認できる.変化量の 1[°C]当たり約 1.6[μm]は,上部センター中心からスライド面までの距離(140[mm])を考慮する と理論(100[mm]で1[°C]当たり1[μm])的に妥当であると考える.

19 19.5 20 20.5 21 21.5 22

8:00 9:12 10:24 11:36 12:48 14:00 15:12 16:24 17:36

Time

Temperature [°C]

X guide Right X guide Left Center column X scale Fr.

X scale Rr. Y scale Fr.

Y scale Rr. Z scale Up

C axis Under column

Figure 4.28 Temperature alteration of developed GMM

-20 -15 -10 -5 0 5

180

225

270

315

0 45

90 135

8:45 9:40 10:39 11:40 13:01 14:09 15:00 15:59 17:00 17:58 Y

X

Figure 4.29 Alignment transition of center column

y = -0.1411x + 2.8357 R2 = 0.601

y = -1.5865x + 32.49 R2 = 0.9244 -3

-2 -1 0 1 2 3

19 19.5 20 20.5 21 21.5 22

Temperature [°C]

Alignment [μm]

X Y

Figure 4.30 Correlation of alignment and temperature

次に,X軸とY軸のリニアエンコーダ(スケール)取り付け部品の温度とテ ストバー上中下の中心座標(X,Y)の変化をFigure 4.31に示す.ここでの中心座標

はFigure 4.29に示した上部センターの変化分を測定高さ換算して補正している.

その結果,上中下の中心座標はほぼ同じ値を示し,温度変化に対応して全て同 様に変化することが分かった.また,中心のX座標値はX軸リニアエンコーダ の温度,Y座標値はY軸リニアエンコーダの温度とそれぞれ同様の変化をして いることも確認できる.そこで中心のX座標値とY座標値を,それぞれ温度を 横軸に取ってグラフで表すとFigure 4.32のように強い相関が確認できた.この 相関を示す関係式を用いてX軸とY軸の位置決めを補正することで温度変化の

係数0±0.1[ppm/K]のZerodurガラスセラミックを使用しているので,スケール 取り付け部品の熱膨張が支配的となって測定子先端の座標を表すリニアエンコ ーダ値を変化させていると考えられる.

以上より,測定機の温度補正は,その座標系の原点について,回転軸中心を 基準に上部センターの一致度と測定子先端座標の X-Y 原点は共にほぼ単純な 熱膨張モデルで説明できることを確認した.ただし,上部センターの一致度の 変化については,その変化量が精度の許容値内であり,現時点では補正の必要 は無いと思われる.

15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

8:50 9:47 10:43 11:44 13:05 14:12 15:03 16:01 17:04 18:06 Time

Temperature []

-15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30

Coodinate value of center [μm]

X scale Y scale Y(Z=250) X(Z=250)

Y(Z=130) X(Z=130) Y(Z=10) X(Z=10)

Figure 4.31 Transition comparison of alignment and temperature

y = 3.6407x - 76.157 R2 = 0.989

-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3

19 20 21 22

Temperature of X scale [℃]

Coodinate value of center [μm]

X(Z=250) X(Z=130) X(Z=10) Average

y = 3.777x - 76.44 R2 = 0.8873 -5

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3

19 20 21 22

Temperature of Y scale [℃]

Coodinate value of center [μm]

Y(Z=250) Y(Z=130) Y(Z=10) Average

(a) Coodinate value X of center (b) Coodinate value Y of center Figure 4.32 Correlation of center coodinates and temperature

ドキュメント内 歯車測定機の精度向上に関する研究 (ページ 169-175)