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第 5 章

5.2 回路設計と基板設計の分業の営み

5.2.4 設計者の意志の反映

設計者の意志はどのように基板設計に盛り込まれるのだろうか?

まず、回路設計について考察する。

田中氏は回路図について「アートワーク的なところを配慮しての回路図を書いて る」回路図を「美しい」とした。このような回路図に込められた回路設計者の意志は、

基板設計者も感じ取っていると考えられる。

木村氏:アートワークをわかってるというよりも回路図から意志を感じるんで すよね。

部品配置は回路設計者から一部しか指示されないにもかかわらず、基板設計者が回 路図から意志を感じ取れることによって、回路図の意志は部品配置に反映されていた。

次に、基板設計について考察する。

基板設計者の木村氏は、基板設計者の意志を盛り込むことを望み、そのために、顧 客に求めることは自身の説明に対しての柔軟性だと述べた。

木村氏:柔軟なお客さんが助かりますね。

さらに木村氏は基板設計の間、顧客に図面を見せない期間を設け、その期間を利用 して自身の意志を基板設計に盛り込んでいた。

木村氏:部品配置から配線完了前って、図面を見せないことっていうのがよく あるんですよね、当然。その間の期間っていうのは、配線作業っていうのは自 分の好みを入れれるわけですよ。

そして、基板設計が完了した時に、顧客に自分の意志を示すことをおこなっていた。

他方で、その意志が常に受け入れられるとは限らないことも木村氏は承知していた。

それは、「どちらも正解です」ど、顧客の意志、自分の意志の相違を容認する発言と して次のように語られた。

木村氏:結局、機械じゃないので、正解っていうのは1つじゃないんですよね。

お客さんの数だけ答えはありますし、基板の数だけ答えありますし。

基板設計者の意志の反映は、顧客によって多分に左右されていることがわかる。

さらに、基板設計者の立場としては次のようにも述べた。

木村氏:結局、どこまで責任を取るかっていうところなんですけど、アートワ ーク屋って、ある意味クリーン(な立場)で、結局ショートしてなかったりと か、仕様をちゃんと守ってるってなると、言い方は悪いんですけど非はないん ですよ。

この意味は、回路図の意志を読み取ることなく、かつ基板設計者の意志を込めなく ても、ネットリストデータどおり、基板の外形・層構成などの仕様どおりに基板設計 をすれば、基板設計者に非はないことにできるという意味だ。

ネットリストデータには部品の接続情報のみであることは、すでに述べたとおりで ある。そこに意志は存在しない。

しかし、基板設計者の意志を感じられない設計は、回路設計者からは低い評価を受 けることは、次のような発言からわかった。

田中氏:ご本人の置かれてる状況とかもよるのかもしれませんけど、とりあえ ず仕上げよう、みたいなところがあるものとかは、多々あります。

これらから、基板設計者の意志の反映は、基板設計者によって意志が込められる場 合もあれば、無い場合もあるといえる。

まとめると、意志を感じられる回路図は、基板設計者の部品配置イメージの構成を 容易にし、部品配置図に反映される。

しかし、基板設計者によっては、意志を込める意欲、または置かれた状況によって、

実施される場合と、そうでない場合があると考察できる。このことは基板設計者単独 で増減するものではなく、回路設計者のコミュニケーション能力や、回路設計者の考 え方の柔軟性の影響を受ける。