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第 3 章

3.4 回路設計と基板設計について

3.4.3 基板の各部位の名称

インフォーマントの発言をできるだけ忠実に記述することにしたためアートワーク 設計という言葉が残っている。アートワーク設計は基板設計と読み替えてほしい。

図 14:基板の展開図

表 7:基板の各部位の名称

名称 解説

パターン(配線) 電気信号を通すための銅箔で形成された電線。

パターンを引く

引く パターン設計をすること。

グラウンド層 電気回路の電源(バッテリー等)の負極側を 接続する層。

電源層

電気回路の電源(バッテリー等)の正極側を

接続する層。電圧が異なる場合、電源層を電圧ごとに 分割することもある。

銅箔面を示す言葉。

層構成 どの層に、電気信号、電源の負極、正極を通すかといった おおまかな層の役割の定義。

表層 表面に出ている銅箔面を示す言葉。

図では、部品面とはんだ面が該当する。

内層 表面に出ていない銅箔面を示す言葉。

図では、グラウンド層と電源層が該当する。

はんだ

電子部品を固定するための合金。

熱によって融解させ、電子部品とパターンを橋渡しする。

冷却後は部品を固定すると同時に電気的接続を実現する。

表面実装部品 基板に刺す足が無い電子部品。

ディップ部品

基板に刺す足がある電子部品。単にディップとも言う。

はんだ付けのための面積が大きい、スルーホールが 必要なため、内層のパターンが引きにくくなるという 欠点がある。

ビア 基板の厚さ方向の穴。厚さ方向の電気的接続も実現する。

スルーホール

ディップ部品をはんだ付けするための穴。

基板の厚さ方向に貫通した穴であり

電気的接続も実現する。構造としてはビアと同じ。

絶縁板 隣接する導体である銅箔を電気的に切り離すために挟む板。

エポキシ樹脂などで構成される。

部品面 基板の表(おもて)面を示す言葉

はんだ面 基板の裏(うら)面を示す言葉。ディップ部品を基板に刺した時に はんだ付けをおこなうことから、はんだ面と呼ばれる。

図 14は、銅箔の層数が 4層の基板の例であり、これを 4層基板という。層数が 1 の場合は片面基板、層数が2の場合は両面基板と呼ばれる。4層以上の6層、8層、

10層、それ以上といった多層基板の設計と製造も可能である。

多層基板は基板上の電子部品の数が増え、回路・パターンが複雑になるにもかかわ らず、小型化が要求される場合などに用いられる。

ここで、基板設計の自由度を説明するために、まず図 14では点Aと点Bは表面実 装部品を経由して接続がされていることを解説する。

電源層から始まる電気信号の開始点であるA点は、ビア1を経由して銅箔(部品面)

に持ち上げられる。そのビア1の断面図を図 15に示す。ビア1は電源層と部品面に 接続され、はんだ面とグラウンド層の銅箔とは接触していない。このため、貫通した 穴であるビア1は、電源層から始まるA点を部品面に接続することができる。

図 15:ビア1の断面図

その後、部品面のパターンとはんだを通じて表面実装部品を経由した電気信号は、

ビア2(図 16)によってはんだ面のパターンに接続される。はんだ面のパターンを

経由した電気信号はビア3(図 16)によってふたたび部品面に戻される。

図 16:ビア2、3の断面図

部品面まで出た電気信号はビア4(図 17)を経由してB点に接続される。

なお、ビア4はグラウンド層にも接続されている。これによって電源層のA点から、

表面実装部品を経由して、グラウンド層に接続することも実現している。

図 17:ビア4の断面図

ここで、基板設計の自由度を理解するために、ビア2、3の意味を考える。

素直にパターンを引くのであれば、ビア2、3を無くして、表面実装部品に接続さ れている部品面のパターンを直接ビア4に接続すればいいと思われたのではないだ ろうか。もちろん、そのように設計しても良い。しかしながら基板設計者がこの例示 のようなパターンを引いたとしても、部品の接続を表したネットリストデータとは一 致しているため、基板設計上の問題とはいえない。このように、パターンをどのよう な引き回しで引くかという点では、自由度が基板設計者にある。

もちろん、回路設計者が基板設計データを見て、無駄な引き回しがあることに気が 付き修正を指示されることもあるだろうが、複雑な回路で何千、何万といったパター ンがある場合には、すべてを確認することは現実的に不可能である。

他方で、このようなビアを用いた引き回しを意図的にする場合がある。それは部品 面で他のパターンを交差させたい時だ。この時の様子を図 18に示す。

図 18:ビアを活用して他のパターンを横切らせた例

交差する側、させる側のパターンのいずれか片方がはんだ面側に逃げていれば、パ ターンの交差が可能になる。このような交差の要否は、部品配置後やパターン設計を

する過程で明らかになる。このときに、どちらのパターンにビアを設け、他のパター ンと交差させるのかという判断は基板設計者に任されるところが大きい。

この理由は、基板設計を依頼した回路設計者が、基板設計時にどのネットが交差す るかをあらかじめ予測した指示を出すことが困難であるためだ。

3.4.1と3.4.2で例示した回路、基板の部品点数は4点、ネットがつながる場所(ピ

ン数)は6箇所ときわめて小規模のものであったが、実際にコンシューマ・エレクト ロニクス機器で使われる回路、基板では、部品点数が数100~数1,000個、ネットが つながる場所(ピン数)は数1,000箇所から10,000箇所にもなることがある。

すると、多数の部品やパターンを引き回すには、ビアによって引き回しを変えたり、

交差させたり、層を変えるといった場所が多数になる。

これら全てについて、回路設計者が回路設計をおこなうときに想定し、指示を出す ことが困難である。よって、基板設計者に任される状態が生まれる。

その原因は、回路設計者が扱う回路図は平面での電気的接続の表現であり、基板設 計者が扱う基板設計図は電気的接続を立体的に表現するものだからだ。