第 5 章
5.3 対話の目的
5.3.2 回路設計者と基板設計者
た回路設計者の為人や、営業が受けた親しみ、安心感、将来の取引継続の可能性など が基板設計者に漏れ伝わることは容易に想像できる。
基板設計者が持つ知識や経験の活用度合は、営業からの情報によって影響を受ける 可能性があると考える。
田中氏:どちらかというと、そこまで裏付けがあるかと言われると、ちょっと ないとは思いますけど、ごく一般的に考えたときに、定性的にですか、定性的 にこうじゃないか、っていうようなことが多いですかね。
筆者:その定性的なお話は相手も理解できる定性的なお話なんでしょうか。
田中氏:多分半々ぐらいはあるかと思います。僕の専門分野の領域で定性的な ものを言ったとしても、きっとそれはそうですか、っていう感じで、まあ言わ れたからやるということに多分なると思うんですけど。はい。一般的なやつも、
向こうの方が理解できるものも半分、僕の中の、こう何でしょうね、相手のこ とを理解できるものも半分ぐらいな。
回路設計者と基板設計者の対話は、お互いの専門分野の違いから生まれる、半ばの 理解を進めていくことを主な目的としている。半ばの理解で情報が伝わることは、他 のメーカーの図面を見ることはできないにもかかわらず、他のメーカーのノウハウが 伝わってくるとした佐藤氏の発言からも伺える。
筆者:当然ながら、直接的に相手の図面とか見せないですよね?
佐藤氏:(笑)それはないけどね。でも話してると分かるよね。ほかのメーカ ーさん、こういうふうなやり方をしてるんだ、とか、そういう情報ってのはほ ら、引き出さなきゃいけないんだよ。彼(協力会社)は何にも言わないから。
言わないからこちらから引き出すんですよね。まあ、知ったかぶりやったり、
さっき言ったようにね。知ってたって知らないふりして言ったり、ってことを やらなきゃいけないからね。んで向こうのノウハウを引き出して自分のものに しなきゃいけないんで。
回路設計者の立場では、その対話の目的は、相手の力量の認識や、感性のすり合わ せであるといえる。
基板設計者の木村氏からは、対話の目的は回路図等の情報から伝わらない、回路設 計者の基板設計上の好みを読み取るということが目的になっていた。
筆者:木村さん、好みを読み取るということなんですが。まず渡される回路図
などのデータがあると思うんですけども、データから好みはわかるのですか?
木村氏:わかりません。それはわからないですし、何でしょう、段階を踏みま すね。
好みの読み取りは、段階を踏むとした。段階は、部品配置が完了したタイミングと、
アートワークができあがったタイミングであった。そして、対話は自身の基板設計に 含まれた、基板設計上の意志を回路設計者に伝えるためだともした。
木村氏:意見をしてそれでも戻してください、直してくださいって言われたら、
それはもう直しますけど。そこで自分の意志を伝えれるというか、何でしょう、
ただなんとなく引きました、じゃなくて、自分の意志を持ってこういう理論に 基づいてこうやりました、って言えるっていうところですかね。
他方で、木村氏は自身の意志が顧客には受け入れられないケースがあることを述べ た。
木村氏:私としてはですよ、例えば2割のほうが正解だと自分の中では答えが あっても、けどお客さんにしてはそれは正解ではないんですよね、8 割に NG をされる。っていうところがあります。
その上で、木村氏はこのことを顧客の好み表現し、それを対話から読み取るのも基 板設計者として重要な素養だと語った。
木村氏:重要なファクターとしては、お客さんの好み、が入りますね。その好 みを読み取るっていうのも、アートワーク者としての結構大きなファクターと いうか、にはなるのかなと。
木村氏の対話の目的は、顧客の好みの把握と、自分の意志のすり合わせであった。