第 4 章
4.2 回路設計側(S 社側)の事例
4.2.4 回路設計者 田中氏の事例
まず、田中氏と営業担当者の対話の様相を質問した。
筆者:社外から例えばエンジニアの人が打ち合わせに来ました、営業さんが打 ち合わせに来ました、っていう機会も最近でもおありになりますか。
田中氏:はい?
筆者:最近でもありますか?
田中氏:最近はないです。
筆者:あった時期っていうのはいつ頃でした?
田中氏:そうですね、3~4年・・・2~3年前ぐらいじゃないですかね。
筆者:2~3年前。その頃とかどのぐらい話をしてたんですか。
田中氏:そりゃもう飲み会、何ていうんでしょう、業務が終わったあとの宴会 とかで、もうもう仕事の話は一切してない気がしますね。
筆者:なるほど。飲み会は全然問題ないんですけど(笑)、ちょっと横に置い て、打ち合わせに来たってときの、ときはどういうふうな話をされてますか。
会社の会議室で打ち合わせしてますってときは。
田中氏:そのときは、もともと予定されてた話が終わって、始まる前もそうで すけど、お久しぶりから入って最近どうですか、みたいな話をざざざざっとや って、僕結構人のプライベート聞くの好きなんで(笑)、勝手に踏み入ってい く感じはあったりはしますかね。
筆者:比率でいうと、仕事とこのプライベートなお話、雑談聞きますけど、大 体何対何ぐらいになります?
田中氏:9:1ぐらいじゃないですか。
筆者:9:1でどちらでしょう。
田中氏:1が仕事で9がプライベートじゃないですかね。(笑)
筆者:ちなみにそのやり方ってしちゃいけないとも、してもいいとも多分何に も言われてないと思うんですけど、9:1 のこの比率、別に 9:1 でなくてもいい ですけども、何でプライベートの話を仕事の時間にされるんですか。
田中氏:そうですね、あの…
筆者:そうすると、うまくいくことがある?
田中氏:は、僕が勝手に思ってるかもしれないですけど、緊張がほぐれたりは しないかな。共通の話題みたいなやつを見つけて、ある程度そこらへんで共感 みたいなのができると敷居はだいぶ下がってきて、その辺でいいことがある、
自分自身がやりやすいっていうところが実質あると思うんですけど、堅苦しい 感じがあまり好きではないのでそういったところでちょっと打ち解けて、いざ 本題っていうときも、何でしょう、変に固くならずにむこうからも意見貰いな がら、みたいなことができるんじゃないかなということは思ってたりはします けど。
筆者:敷居が下がってよかったな、と思えたということ。飲み会の数が増えた とかじゃなく、お仕事面で敷居が下がってよかったなと思えたことって?
田中氏:そうですね、相談が簡単に、しきりに、何でしょう、気兼ねなくって いうのもあれですけど、そんなに、何でしょうね、連絡が取りやすいといいま すか。結構耳も傾けてもらえるというか、そういうところもあるかなっていう 気はしてます、はい。
筆者:相手はどう思ってるんでしょうね。
田中氏:そこがちょっとグレーなんですけど。(笑)相手がそれをよしと思っ てるかどうかっていうところがちょっと分からないので、独りよがりになって るんじゃないかなっていう気はちょっとしてます。
筆者:田中さんとお話してるときに、相手は楽しそうにしてらっしゃるんです か?
田中氏:僕から見たらそう見えるので、そうなんじゃないかなって思いたいと いうか。(笑)僕的には。はい。
田中氏は、営業担当者とほぼプライベートの話をしていると述べた。プライベート な話をする理由は、相談のしやすさ、連絡の取りやすさと相手の傾聴を促すためであ るとした。
そうなった相手のことを「敷居が下がった相手」と呼び、次のように話した。
筆者:敷居が下がった相手に対して、当然何か仕事をお願いするとかいう面で 変わってきたりするんですかね。
田中氏:やっぱり敷居の下がった人に対して偏っちゃうってことはありますか ね。
筆者:発注量って何か変わるんですか。
田中氏:僕に発注させたら変わるかもしれないですね。
筆者・田中氏:(笑)
田中氏:その人ばっかりになっちゃうかもしれませんね、そうなると。
筆者:なるほど。敷居が下がるですか。田中さんから営業さんとのお話があっ て、何となくそんなイメージは持てたのですけど、技術者に対してはどうです か?
田中氏:技術者に対しても基本的には同じスタンスなんですけど、ただ技術者 の人たちはやっぱりそこらへんは、何でしょう、ちゃんとしなきゃっていうの はあるので、なかなかその牙城は崩せないんですけど。
田中氏は、発注量の差が起きる可能性について言及した。しかし技術者(この場合 基板設計者)に対しては様子が異なり、敷居が下がりにくいことを感じていた。
更に社内の同僚のことについて尋ねてみたところ、田中氏はこのように話した。
筆者:どうでしょうね、田中さんご自身の会社の技術者さんていうのは、崩れ てる方が多いですか。
田中氏:崩れてない人が多いですね。堅物が多いですね。
田中氏:なんで、僕社内の人間のほうがあまり得意じゃないです。
筆者・田中氏:(笑)
田中氏:いや、これはあの…
筆者:録音止めたほうがいいですか。
田中氏:大丈夫です、全然支障ないんで。(笑)
筆者:社内のほうが苦手、それは面白いですね。
田中氏:多分社内は本音を言うんだ、お客さんではないので、何でしょう、そ んなに気遣いはしないというところがあると思うんですけど、ちょっと僕の中 では横柄な感じが見受けられるんで、グループ内での仕事とグループ外での仕 事って、どっちが居心地というか好ましいかというと、社外の仕事のほうが緊 張はしますけど好ましいのは好ましいですね。それは多分相手が、何ていうん でしょう、丁寧にっていうか、ちゃんと聞く耳を持ってというか、感情的な感 じでお仕事するわけでは当然ないので、そういったところでなんかこう…
筆者:ちょっと田中さんの固いっていうそのイメージがつきにくくなってしま ったんで、申し訳ないのですけども。何でしょうね?固いっていうのはある意 味礼儀正しくてきちんとしてるってことでは?
田中氏:という僕の中ではイメージです。固い、何ていうんでしょう。
(固いという言葉の意味を考えている)
筆者:今もちょっと社内で仕事するのと社外で仕事するのと、っていうところ の話なんですけど、社内のほうが固くて居心地が悪いって…
田中氏:(考えながらの独り言)居心地が悪いですね、融通が利かない。
筆者:社外のほうは礼儀正しい、今おっしゃってましたでしょ。ちゃんと聞い てくれる。僕のイメージでは、社外の方が固いんじゃないですか?っていうふ うに思ったんですよ。僕のイメージとしてね。
田中氏:多分僕が今、そうですね、固い固くないのところのところでいうと、
社内と社外で何が違うかというと、コミュニケーション取るときに、とげとげ しいか、とげとげしくないかっていうところがあって。
筆者:とげとげしい。
田中氏:好戦的っていうんですかね。議論をする上で好戦的になっちゃいけな いっていうのはないですけど、社内で、何でしょうね、議論するときっていう のは、我関せずなときもあったり、変に高圧的にきたり、好戦的にきたりって いうことが多々あって、でもいざ外(社外)ってなるとそういう…
筆者:そういうのないでしょうね。
田中氏:はい。まず絶対ありえないので。
田中氏は社内の回路設計者の同僚には「とげとげしい」社外の基板設計者には「と げとげしくない」とし、異なる印象を持っていることが語られた。そのことは業務に おいてどのような影響があるのだろうか。田中氏の考えを掘り下げていく。
筆者:分かりました、そういう意味での固い固くないっていうことですね。な んで社内だと好戦的になったり無視したりってなっちゃうんでしょう。
田中氏:そうですね、何でなんでしょうね。その・・。
筆者:個人的な推測で全然構わないです。
田中氏:そうですね、何でなんでしょうね。何でなんだろう。
筆者:田中さんにもよく分からない内容、状況ってことですかね。
田中氏:何で。そうですね。ちょっと考えたことはなかったですけど、何でで すかね。
筆者:社内のほうが、田中さんのいう敷居が下がる環境って、なりやすいんじ ゃないですか、って素朴に思ったわけですよ。
田中氏:逆ですよね、そうですよね。
筆者:なぜなら社内にいらっしゃる方でしたら一年中顔を突き合わせているわ けですよね、そうするとコミュニケーションする機会も多くなって、多分打ち 解けられる敷居が下がって、社内だったらまさにこの人のためにっていう状況 も、当然ながら生まれやすくなってきてと。何でなんだろう、っていう素朴な 疑問なんですね。
田中氏:僕は社内ほど気遣いがない気がします。自分を優先してる感があって、
相手のことを考えてとか、相手が望んでることに対して応えるっていうことを、
内部ほどしない気がしますね。自分が、っていうほうのが強いかもと思います。
筆者:何で自分が、ってなっちゃうんでしょう。
田中氏:何で自分が、ですか。
筆者:何で自分が、自分が、っていう人が増えてくんでしょうね。田中さんは、
今お話聞いてて自分が、自分が、っていうタイプじゃなさそうだってのは何と なく分かったんですけども、何で増えてったんでしょう。
田中氏:何で。そうですね、何で。(暫し沈黙して考えていた)
筆者:(沈黙を破るための質問として)逆に、社内のそういう人たちって、自 分が、自分が、っていう方たちって田中さんのように社外の方とはお話されて ないんですかね。
田中氏:してないですね、確かに。でもそういう自分が、自分が、って言う人 でも外とやってる人も実際はいるんですけど、いるとは思うんですけど、どう でしょうね。その人たちは、社外とやり取りをしている人が、僕が思ってるよ うな社外の人たちとの接し方をしてるかっていうところが気になりますね。ち ょっと高圧的になってたりしないかな、っていう。社内でこうなのに、社外の お客さんとやるときにも、そのときだけ体裁を整えてやるみたいなことができ