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行為 を示 すの に用い られ る複 合語

第 3 章 日本語の動詞 由 来複合 語 の語形 成 と意味機 能

3.3.2 行為 を示 すの に用い られ る複 合語

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(61) まんじ ゅう を売 る こ とに 関する 知識 目的: 金を 稼ぐ

方法: 複数 個の 箱入 り 場所: 土産 店な ど

まん じゅ うを 商品 とし て扱う 場合 、 上記の 知識 が一 般的 であ るが、 ここ で 注目し たい の は売り 方( 方法 )で ある 。 上に 示し た 「 複数 個」 とい う デ フォ ールト 値に 反 する「1個」

からの 販売 の出 現に より 、本来 の売 り 方と区 別す る必 要が 生じ る。 そ のた め 、「1個売 り 」 という 複合 語の 語形 成が 動機づ けら れ 、 本来 百科 事典 的知 識 の 中にあ る「 ど のよう な形 式 で販売 する か 」と いう ことが 明示 され る 。それ とは 対照 的に 、本来「バ ラで 買う/売る 」も の、例 えば、みか んや 飲料 水も「 箱ご と」で 販売 され ると、「箱買 い」、「箱 売 り」と 表現 さ れる。

次の 「両 面焼 き」 であ るが、 本研 究 が観察 した の は 餃子 を対 象とし た用 法 である ため 、 ここで は「 餃子 」の 百科 事典的 知識 を 例示す る 。

(62) 餃子に 関す る知 識

構成的 役割 :小 麦粉 、肉 、野菜 目的的 役割 :食 べる

産出的 役割:小 麦粉 の生 地で 野菜 や肉 で 作っ た餡 を包 み、(焼い て/茹で て/蒸 して)

作 る

餃子 を生 の状 態か ら火 が通っ た状 態 に 作り 上げ る時 に考 えら れる調 理法 は 上に示 した よ うに、「 焼く 」の他 に「 茹でる 」、「 蒸す 」など があ る。従 って、ここ では「 餃 子」だ けで は なく、「餃 子を焼 く」 こと を考 える べき であろ う。

(63) 餃子を 焼く こと に関 する 知識

目的: 生の 状態 から 火が 通った 状態 に する 方法: 片面 焼い てか ら蓋 をし蒸 し焼 き にする

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餃子 を焼 く場 合、 片面 だけ焼 くの が 一般的 であ る。 すな わち 、 片面 のみ 焼 くとい うの が デフォ ール ト 値 であ るた め、餃 子を 注 文する 場合 は 特 別に 指定 する必 要が な い 。一 方、 両 面を焼 くと いう 焼き 方は 一般的 では な いため 、特別に 指定 する 必要 があ る。「 両面焼 き 」と いう複 合語 の形 成は その ような 知識 に よって 動機 づけ られ てい ると考 えら れ る 。

次の「片 手割 り」で ある が、こ れは 先述し た通 り「 瓦」で はな く、「 たま ご 」を対 象と し ている ため 、 こ こで は「 たまご 」に 関 する知 識を 例示 する 。

(64) たまご に関 する 知識 目的的 役割 :食 べる

産出的 役割 :飼 育し た家 禽 から とる

上 で検 討した 例と 同様 に、「た まご 」に関す る知 識 だ けで は「 片手 割り 」に導 かれな い。

従って 、「 片手 割り 」の 形成 を動機 づけ る知識 は「 たま ご」では なく 、「 たま ご を割る こと 」 につい ての 知識 だと 考え るほう が妥 当 であろ う。

(65) たまご を割 る こ とに 関す る知識 目的: 調理 など の 下 準備

方法: ボウ ルの 縁な どに 当て、 両手 で ボウル など に割 り入 れる

通常 、た まご の殻 がた まごの 中身 と 一緒に ボウ ルに 落ち ない よう、 両手 で たまご を割 る のが一 般的 だと 思わ れる21。そ れに対 し、片手で 割る のは 通常 とは 異なる ため 、「 片手割 り 」 と表示 され る。

以上 の考 察か らわ かる ように 、 行 為 を示す のに 用い られ る複 合語 も デフ ォ ールト でな い 場合に 語形 成が 動機 づけ られる が、 そ れ を動 機づ けて いる 知識 は属性 を示 す のに用 いら れ る複合 語と 異な り、 モノ に関す る知 識 ではな く、 その モノ をど うする か と い うコト につ い ての知 識だ と考 える ほう が妥当 であ ろ う。

21 より 正確 に言う と、 片手 で割 り、 片手 で殻を 持つ 。

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