第 3 章 日本語の動詞 由 来複合 語 の語形 成 と意味機 能
3.3.3 デフ ォー ルト 値が前 項に 入っ てい る複合 語
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われる ため 、「炊 飯器 炊き」や「洗 濯 機 洗い」も ここ まで の説 明に 反し てい る ように 思わ れ る。
まず 、「 機械 練り 」に つい て、筆者 が「機 械練り 」という 表現 を使 用し てい る 石け んを 製 造して いる 会社 のホ ーム ページ を調 べ たとこ ろ、 次に 示さ れる 「機械 練り 」 に関す る説 明 が掲載 され てい た 。
(67) 機械練 りは 、機 械力 によ って練 り混 ぜ 、成型 して 得ら れる 固形 石鹸で あり 、 わく 練りは 、枠 に流 し込 んで 冷却固 化さ せ 、成型 して 得ら れる 固形 石鹸で す。 現 在流 通して いる 汎用 化粧 石鹸 のほと んど は 機械練 りで 製造 され てお り、当 社で も 機械 練りで 石鹸 を製 造し てい ます。 機械 練 りで作 った 石鹸 は、 水に よく溶 け泡 立 ちが 良い石 鹸に なり ます が、 やや溶 けく ず れしや すい 性質 があ りま す。一 方、 わ く練 りで作 った 石鹸 は、 機械 練り石 鹸と 比 べて水 に溶 けに くく 、泡 立ちが やや 劣 りま すが、 溶け くず れし にく い性質 を持 っ ていま す。 透明 石鹸 は、 わく練 りで 製 造さ れてい ます 。
(http://www.cow-soap.co.jp/web/site-info/question/sekken/q10130.php)
上記 の説 明に よれ ば、 石けん の製 法 には「 機械 練り 」の ほか に「わ く練 り 」とい う作 り 方もあ る。 そし て、 製法 の違い によ っ て出来 上が りも 異な って くる。 つま り 、本来 デフ ォ ールト 値で ある 「機 械練 り」と いう 表 現を可 能に した のは 、 製 品の違 いを 区 別する 需要 が 生じた こと に起 因し てい る と考 えら れ る。
次に 、「 炊飯器 炊き 」 で ある が、 これ も一見 した とこ ろ、「 機械 練り 」よ りさ らに不 自然 なのか もし れな い 。なぜ なら、「 炊飯 器 」は そも そも「ご 飯を 炊く ための 道具 」であり 、「 ご 飯を炊 く」にも 一般 的に「炊 飯器 を使 用する 」か らで ある 。し かし、「 炊飯器 炊き 」の実 際 の用い られ 方を 見る と、 次の例 文の よ うな場 面に おけ る「 炊飯 器炊き 」と い う表現 は む し ろ自然 だと 思わ れる 。
(68) 白ごは ん.com のご はん のレシ ピで は、「鍋炊 き」と「炊 飯器 炊き」の 2種類 を紹介 してい ます 。は じめ に簡 単に炊 き方 を まとめ ると …。
(http://www.sirogohan.com/kurigohan.html)
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上の 例を 見れ ばわ かる 通り、「炊 飯器 炊き 」は「機 械練り 」と同様 に 、対比 という 文脈 で 使用さ れて いる 。
次に 「洗 濯機 洗い 」を 見る。「炊 飯器 」 が「 ご飯 を炊 くた めの 道具」 であ る ように 、「 洗 濯機」 も一 般的 に 「 洗濯 物を洗 うた め の道具 」 だ と思 われ る。 また、「洗 濯物 を洗う こと 」 につい ても 通常 は「洗 濯機 を使 用す る 」ため、「 洗濯 機洗 い」を 明示 する 必要 がない よう に 思われ る 。し かし、「洗 濯機 洗い 可 」と いう表 現が 数多 くあ るよ うに、「洗 濯機 洗い 」は 様々 な洗濯 物の 中で も、セー ター のよ うな 本来「洗 濯機で 洗っ ては なら ない」、「 手洗い すべ き」
ものを 対象 とし てい ると いうこ とが わ かる 。つ まり、「 機械 練り」、「 炊飯 器炊 き」と同 様に、
「洗濯 機洗 い」 も本 来洗 濯機で 洗っ て はなら ない もの と対 比す る場合 に使 用 される 表現 で ある。
さら に、「機械 むき 」も 次の 写真 に見 る通り 、「 白えび のお 刺身 には 手む きと 機械む きの 二種類 があ りま す」 とい う 対比 の文 脈 で用い られ てい る。
写真 3-1. 「手 むき」 と「 機械 むき 」の 対比( 富山 白 えび 亭にて H26.3.27撮影)
以上 で、前節の 説明 の反 例の よう な複 合語を 検討 し て きた ので あるが 、注 目し たいの は、
本来、 背景 知識 にお いて デフォ ール ト 値だと 思わ れる 知識 でも 、他の 何か と 対比す る場 合 には明 示さ れ、 複合 語と して表 現さ れ る場合 があ る と いう こと である 。で は 、なぜ 対比 と いう場 合に はデ フォ ール ト 値を 複合 語 に取り 込む こと がで きる のであ ろう か。ここで は「 ご 飯」を 例に 考え てみ たい 。
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先述 した よう に、「ご飯 」の前に 何も つ いて いな い場 合、通常「炊 飯器 で炊 い てい る」と 理解さ れて いる ため、「#炊飯 器炊 きご 飯」と 明 示す る必要 がな い 。しか し 、実際の 発話 状 況や文 脈に より、「ご 飯」だ けで は「鍋 炊きご 飯」を 含め た上 位カ テゴ リー を 示す場 合も あ る。言 い換 えれ ば、 デフ ォール ト 値 は 優先的 に理 解さ れる こと ではあ るが 、 他の解 釈を 完 全に排 除す るわ けで はな い。一 方、「ご 飯」の 前に 「鍋 炊き 」を つけ 、「鍋 炊き ご飯」 とい う表現 にす れば、「炊 飯器 で 炊い た」と いう可 能性 は完 全に 排除 される 。こ の ように 、片方 がデフ ォー ルト 値を 含め 、様々 な解 釈 を含意 する のに 対し 、他 方が一 つの 解 釈しか 許さ な いのは (69)の よう な対比 する 場合 に 支障を もた らす 。
(69) ?これ はご 飯で すが、 それ は 鍋 炊 き ご 飯 で す 。(cf.こ れ は 炊 飯 器 炊 き ご 飯 で す が 、 それは 鍋炊 きご 飯で す。)
従って 、対 比の 場合 に限 っ て 、 デ フ ォ ー ル ト 値 を 複 合 語 に 盛 り 込 む こ と が 可 能 で あ り 、 必要に なる わけ であ る。