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第 4 章 中国語の動詞 由 来複合 語 の語形 成 と意味機 能

4.1 はじ めに

第 3章で は日 本語 の動 詞由来 複合 語 に 関す る様 々な 問題 点の 分析を 通し 、 第 2章で提 示 した「 動詞 由来 複合 語の 語形成 は語 構 成要素 のみ なら ず語 構成 要素以 外( 複 合語の 外部 ) の名詞 の百 科事 典的 知識 によっ て動 機 づけら れて いる 」と いう 仮説を 検証 し た。本 章で は 形態的 に日 本語 の動 詞由 来複合 語に 似 た 中国 語の 動詞 由来 複合 語 を対 象に 、 その問 題点 を 分析し つつ 、さ らに 検証 してい く。

第 1章で述 べた よう に、 中国語 の先 行 研究に 「動 詞由 来複 合語 」とい う用 語 が用い ら れ た研究 は筆 者の 知る 限り 、 皆無 であ る 。日本 語の 動詞 由来 複合 語に相 当す る 中国語 の複 合 語は複 合動 詞扱 いさ れて いるが 、語 構 成 要素 と語 構成 要素 間の 文法関 係か ら 動詞由 来複 合 語と見 なす こと もで きる 。例え ば、 日 本語の 付加 詞複 合語 に相 当する 「偏 正 式複合 動詞 」 は以下 に示 され る よ うに 、日本 語の 付 加詞複 合語 と同 様に 「修 飾語+ 述語 」 からな って い る。

(1) 精製、特製 、盒 裝(箱 詰め )、袋 裝( 袋 詰め)、刀削(包 丁切 り)、紅燒(醤 油煮 込み)、

清 蒸 ( 酒 蒸 し )、 清 唱 ( 伴 奏 の な い ま ま 歌 う こ と )、 針 織 ( 棒 針 編 み )、 手 動 、 手 搖

( 手 回 し )、 手 扒 ( 手 裂 き )、 路 考 (( 運 転 免 許 の ) 路 上 試 験 )、 口 譯 ( 通 訳 )、 筆 譯

(翻訳 )、海釣( 海釣 り)、溪 釣(渓 流 釣り)、心算(暗 算)、珠算 、機 洗(洗 濯機洗 い )、 涼 拌 ( 冷 た い 食 材 を 和 え る こ と )、 乾 刮 ( か ら 剃 り )、 乾 洗 ( ド ラ イ ク リ ー ニ ング)、乾 吃((即 席め んなど ) お湯 に つけず に食 べる こと)、水洗 (水 洗い)、水 煮

(茹で る)、水 耕(水 耕栽培 )、土耕( 土耕栽 培)、盲 打(ブ ライン ドタ ッチ )、腹 語

( 腹 話 )、 街 拍 ( 街 撮 り )、 團 拍 ( 団 体 写 真 を 撮 る こ と )、 團 照 ( 団 体 写 真 を 撮 る こ と)、團 拜( 団体 で参 拝す るこ と)、團 購( 共同 購入)、零售( ばら 売り)、試 駕( 試 乗)、月租(月 極め )、月付(月 払い )、内閲(内 覧)、外帶( テイ クアウ ト)、外食、

旁聽(聴 講)、 家用(家 庭用 )、密 封、 活捉(生 け捕 り)、年 繳(年 払い )、夜 拍(夜 撮り)、夜騎(夜 乗り)、夜爬( 夜登 り)、夜 唱(歌 い明 かすこ と)、現切(そ の 場で

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肉など を 切 るこ と)、飛踢(飛 び蹴 り)、跳 踢( 飛び蹴 り)、側 踢( 横蹴 り)、側 睡( 横 向 け に な っ て 寝 る )、 側 躺 ( 横 に な る )、 側 背 ( 斜 め 掛 け )、 仰 睡 ( 仰 向 け に な っ て 寝る)、趴睡(う つ伏 せ にな って 寝る )、自 走(自走 )、瞎猜 ( 当て ずっ ぽう)、外 接

(外付 け)、機 打(パ ソコ ンで 入力 する こと)、雙載(二 人乗 り)、三 載(三 人乗 り)、

公憤、 公演 、冷 泡( 水出 し)、 10 袋 裝 (10 袋 入り)、縱 走、 快炒 (素 早く 炒 める)、

腳踏( 足こ ぎ)、 火葬 、土 葬、 空運 (空 輸)、 海運 、首映 (試 写) …

(1) の 複 合 語 は 先 述 し た よ う に 、 先 行 研 究 で は 複 合 動 詞 と い う 名 の 通 り 、 動 詞 扱 い さ れてい る 。形 態や意 味か らし ても 動詞 に似て いる 。例えば 、「 紅焼 」は「 どの ように 焼く か 」 を示す ので あり、「色 の一 種(赤 )」を 示すの では ない。「盲 打」は「 ど のよ う に 打つ か」を 示すの であ り、「目 が 不自 由な こと(盲 )」を 意味 する ので はない 。しかし 、「 偏正式 複合 動 詞」に 属す る複 合語 の文 におけ る 実 際 の用い られ 方を 吟味 する と、動 詞ら し い特徴 を欠 い ている 複合 語も 存在 して いるこ と が 判 明する 。 例 えば 、次 の(2)と (3) の ような 複合 語 である 。

(2) 白斑狗魚 則 肉質 緊 湊, 需 紅 燒。( CCL)

ノーザ ンパ イク と 言え ば 肉 質 引 き締ま り 必要 醤 油煮 込み

(ノー ザン パイ クは 身 が 引き締 まっ て おり、 醤油 煮込 みに すべ きであ る 。)

→?我 紅燒 了 白 斑狗 魚。

私 醤 油煮込 み 完了 相 ノー ザン パイク (私 はノ ーザ ンパ イク を醤油 煮込 み した。)

→?我 在 紅 燒 白 斑狗 魚。

私 進 行相 醤油 煮込 み ノー ザン パイク

(私は ノー ザン パイ クを 醤油煮 込み し ている 。)

→?我 紅燒 著 白 斑狗 魚。

私 醤 油煮込 み 進行 相 ノー ザン パイク

(私は ノー ザン パイ クを 醤油煮 込み し ている 。)

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(3)這次 交易 拍賣 會 上 一些 學 過 電 腦 的 人 上機 試用, 今回 競 売会 で 若干 習う 経験相 パ ソコ ン の 人 試 用

一般 只 需 半個 小時 就 能 盲 打。(CCL)

一般に た だ 必要 半 時間 条件 マーカー で きる ブラ イン ドタ ッチ

(今回 の競 売会 でパ ソコ ンを習 った こ とのあ る人 が数 名 試 して みた。 通常 は 30 分ぐら いで 慣ら せば ブラ インド タッ チ ができ るよ うに なる。)

→?我 盲打 了 鍵盤。 私 ブ ライ ンド タッ チ 完 了相 キーボ ード

(私 はキ ーボ ード をブ ライン ドタ ッ チした/見 ずに 打っ た。)

→?我 在 盲打 鍵盤。 私 進 行相 ブ ライ ンドタ ッチ キーボ ード

(私は キー ボー ドを ブラ インド タッ チ してい る/見ず に打 って いる。)

→?我 盲打 着 鍵盤。 私 ブ ライ ンド タッ チ 進 行相 キーボ ード

(私は キー ボー ドを ブラ インド タッ チ してい る/見ず に打 って いる。)

( 2)の「紅燒」(醤油 煮込 み )を 例 に取っ てみ ると、「白斑 狗魚 則肉 質緊湊 ,需 紅燒」と

い う 文 に お い て は 動 詞 の よ う で あ る が 、 中 国 語 の 基 本 語 順 で あ る SVO 構 文 「? 我 紅 燒 了白斑 狗魚」に用 いる と不 自然 な表 現 になり 、動詞 らし く な くな る。「 偏正式 複合動 詞」に

分類さ れて いる 複合 語に は「紅燒」 の ような 動詞 の特 徴を 欠い ている 複合 語 がある が、 繰 り返し 述べ たよ うに 、 先 行研究 にお い てほと んど 注目 され ず、 用法を 含む 包 括的な 議論 も 全くな され てい ない 。

本章 では まず 4.2、4.3 で 中国語 の動 詞由来 複合 語に 関連 する 先行研 究を 概 観し、品 詞分 類の基 準を 提示 する。品詞 を判 断する 主な基 準は、SVO構 文に おけ る 出 現位 置であ る。SVO 構 文は 中 国 語 にお い て 最 も 典型 的 な 語 順 であ る か ら であ る 。4.4 で は その 基 準 に基 づ いた テスト を行 い、「偏 正式 複合動 詞 」に 分 類され る付 加詞 複合 語 を 考察し 、先行 研究 の 問題 点 を指摘 する 。4.5、4.6 で は第 2 章で 提 示した 仮説 及び 複合 語の 選択制 限を 手 掛かり に分 析 を試み る 。補足 的に 4.7 では 本研究 の 主張の 反例 のよ うな 例文 を検討 する 。4.8 で 一旦 まと めをし た上 、4.9 では「 述補 式複 合動 詞」に 分類 され る 内 項複 合語を 考察 す る。4.10 では もう一 度本 研究 の仮 説を 検証し 、最 後 に 4.11 では 結論 を述 べる 。

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