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融液浸透法を利用して作製した液晶性 PTCBI 誘導体薄膜を含む微小共

第 5 章 液晶性有機半導体を含む微小共振器の透過分光 116

5.4 融液浸透法を利用して作製した液晶性 PTCBI 誘導体薄膜を含む微小共

5.4 融液浸透法を利用して作製した液晶性 PTCBI 誘導体薄

5.4 融液浸透法を利用して作製した液晶性 PTCBI 誘導体薄膜を含む微小共振器 129 形成した薄膜を含む微小共振器と比べて共振層を薄くできると考えられる.従って,この 薄い共振層に融液浸透法を用いて薄膜を形成することでモード体積が小さく抑えられ,真 空 Rabi 分裂が増大することが期待される.そこで 1DPC 微小共振器の共振層に融液浸 透法により液晶性 PTCBI 薄膜を形成し,その光学特性を調べた.まず,第 4.4.1 項と 同様の方法で 1DPC 微小共振器を作製した.ただし,1DPC 上に薄膜を形成せずに共振 層を空気とした.また,これまで使用していた TiO2 60.5 nm,SiO2 102.7 nm を 1 周 期として,交互に 5 周期 10 層積層させた  1DPC の上にさらに 1 周期を追加した 6 周期 12 層の 1DPC を用いた.これにより,1DPCの反射率が向上し,1DPC 微小共振 器における光の閉じ込めがより強くなり,実効的なモード体積が小さく抑えられること で真空 Rabi 分裂が増大することが期待される.作製した微小共振器の共振層に対して

第 5.4.1 項で説明した同様の手順により PTCBI 薄膜を形成した.

作製した微小共振器に対して Figure 5.6 で示した光学系を用いた透過強度スペクトル の透過光強度スペクトルの測定を行った.まず,入射位置を変化させることで共振ピーク

を液晶性 PTCBI 誘導体の吸収ピークエネルギーである 2.26 eV 近傍にチューニングし,

透過光強度スペクトルの偏光依存性を測定した.しかし,friction transfer 法を利用して 作製した試料とは異なり,透過光強度スペクトルに偏光依存性はほとんど認められなかっ た.これは液晶性 PTCBI 誘導体のドメインサイズが測定光のスポットサイズよりも小 さいために,それぞれのドメインにおける偏光依存性が平均化されて観測されているため だと考えられる.このため,Figure 5.6 における偏光板を取り外し,透過光強度スペクト ルの光入射位置依存性を測定した.結果を Figure 5.12に示す.液晶性 PTCBI誘導体の 吸収ピークエネルギーである 2.26 eV 近傍で共振ピークが 2 つに分裂した.2 つのピー クのエネルギーを入射位置に対してプロットしたグラフを Figure 5.13 に示す.さらに,

式(2.124)によるフィッティング曲線も同時に示す.実験結果は理論計算とよく一致し

ており,観測した共振モードの分裂は共振器ポラリトンの形成に由来すると考えられる.

フィッティング結果から求めた真空 Rabi 分裂エネルギーは 187 meV となり,第 5.3 節

で扱った friction transfer 法を用いて作製した微小共振器に比べ大きな値となった.これ

は製膜法の違いと 1DPC の反射率の違いにより,実効的なモード体積が減少したことで 真空 Rabi 分裂エネルギーが増大したためだと考えられる [2].

2.0 2.2 2.4 Photon energy (eV)

Transmission intensity (arb. units) Position

Figure 5.12 Incident position dependence of the transmission spectra of the 1DPC microcavity with cavity layer composed from LC PTCBI derivative formed by the cell method [2].

0.0 0.5 1.0

2.0 2.2 2.4

Incident position (mm)

Transmission peak energy (eV)

Figure 5.13 Incident position dependence of the energy of the transmission peak of the 1DPC microcavity with cavity layer composed from LC PTCBI derivative formed by the cell method [2]. The open circles are the dispersion curves and the solid lines are the fitting curves.