第 3 章 微小共振器 52
3.2 Fabry-Pérot 共振器
3.2.1 Fabry-Pérot 共振器の透過スペクトル
光共振器の性質を表すパラメーターについて議論するために,最も簡単な光共振器であ る Fabry-Pérot 共振器を考える [1].Figure 3.1に示すような光学素子を考える.この光 学素子は反射率がそれぞれ R1,R2 の平面鏡2枚を距離Lだけ離して向かい合わせに配 置し,その間を屈折率nの媒質で満たした構造となっている.このような構造において,
共振器内部の光は鏡面反射により鏡と鏡の間を何度も往復することになる.この時,右向 きに進む光と左向きに進む光が干渉することで離散的なスペクトルを持った定在波が形成 される.このような媒質中の電磁波の波長が λ/n(ただし λ は真空中における電磁波の 波長)となることを考慮すると,定在波が形成される条件は,
nL=Lcav =mλ
2 (3.1)
となる [1].ここで m は任意の自然数であり,Lcav は共振器長と呼ばれる量である.定 在波の形成はこのような構造の内部で光の共振が起こることを示している.従って,この 定在波による振動は共振モード,共振器モード,光子モードなどと呼ばれる.共振モード において,光は共振器中を 1 往復する間に光の波長の整数倍の光学距離を伝搬すること になる.吸収や散乱が無視できる場合,光が自らの波長と同じ距離を伝搬するときの位相
3.2 Fabry-Pérot 共振器 53
M
1M
2R
1R
2n
L
Figure 3.1 Fabry-Pérot microcavity embedded the medium with refractive index n.
変化は 2π となる.従って,共振モードにおいて共振器内部を 1往復した光の位相変化は 2mπ となる [1].
横軸に角周波数ω,縦軸に透過率T をとった透過スペクトルを考える.微小共振器の 透過スペクトルにおける周波数と透過率の関係は,
T = 1
1 + 4F2
π2 sin2 ωLcav
c
(3.2)
と書ける[1].ここで,F はフィネスと呼ばれる量であり,以下の式により定義される[1]. F ≡ π(R1R2)14
1−√ R1R2
(3.3)
式(3.2)により求めた微小共振器における透過スペクトルの理論計算を Figure 3.2 に示
す.この図から等周波数間隔に共振モードが形成されることがわかる.透過ピークが形成 される角周波数は式 (3.1) より求めることができ,m番目のモードの角周波数ωmは,
ωm=m πc
Lcav (3.4)
となる [1].これを用いてFree Spectral Range (FSR: 共振モード間の周波数の大きさ)
∆FSRを以下の式により定義することができる [1].
∆FSR =ωm+1−ωm= πc
Lcav (3.5)
0.0 0.5 1.0
Angular frequency
Transmittance
Figure 3.2 Theoritical calcuration of the transmission spectrum of the Fabry-Pérot microcavity.
透過ピークの線幅∆ωcは以下の式で与えられる [1].
∆ωc = ∆FSR
F (3.6)
この式から微小共振器においてフィネスが大きいほど鋭い共振モードが実現されること がわかる.この共振モードの線幅を用いて Q値 (quaity factor) を定義することができ る [1].
Q≡ ωc
∆ωc
(3.7) ここで ωc は共振モードの周波数である.Q値は共振器の質を表す量としてFabry-Pérot 共振器以外の場合でも広く用いることができる [1].
3.2.2 Fabry-Pérot 共振器中における光子の寿命
微小共振器中における光子の寿命について考える [1].微小共振器は高反射率のミラー により構成されており R1 = R2 ≡ R ≈ 1として扱えるとする.このとき光源が微小共 振器における共振層の中央に存在し,時間 t = 0 においてN0 個の光子を含むパルスを 共振モードへと放出すると仮定する.時間t = Lcav/cにおいてパルスは片方のミラーに より反射され共振器の中央付近に戻ってくる.このとき光子の数は RN0 個になってい る.時間 t = 2Lcav/cにはパルスはもう一方のミラーに反射され再び共振器の中央付近 へと戻ってくる.光子の数はR2N0 個となっている.この様子を Figure 3.3に示す.こ
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Figure 3.3 The illustration of the decay of the resonance mode by the reflection in a Fabry-Pérot microcavity [1].
の過程は全ての光子が共振器から失われるまで続く.平均的には,時間 Lcav/cごとに
∆N = (1−R)N0 個の光子が共振器中から失われると考えることができる.このこと から,
dN
dt =−c(1−R) Lcav
N0 (3.8)
という方程式を立てることができる.この方程式はN =N0exp (−t/τcav)と解くことが できる.但し,
τcav= Lcav
c(1−R) (3.9)
である.このτcav が微小共振器中における光子の寿命である [1].寿命と減衰速度は逆数 の関係であることから,光子の減衰速度κは,
κ=τcav−1 = c(1−R)
Lcav (3.10)
と求めることできる.これと式(3.3)及び式(3.6)をR≈1として比較することにより,
∆ωc =τcav−1 ≡κ (3.11)
となり,共振モードの線幅を光子の減衰速度と定義することができる [1].このことから 式 (3.7)は,
κ = ωc
Q (3.12)
と変形できる.従って光子の緩和速度が小さく寿命が長い微小共振器は大きなQ値を持 つ [1].
光共振器の性質を表す主要な因子として共振モード周波数とQ値を挙げることができ る[1].第 3.2.1 項の議論から,共振モード周波数は式(3.4)より,共振器長Lcavを操作
することで制御できる.具体的には,共振器内における光路長や共振媒質の屈折率を調整 することになる.Q値はその導出過程から明らかなように,フィネスF により制御する ことができる.これは式(3.3)よりミラーの反射率Rを変化させることによりQ値を変 化させることができることを示している.Q値が高くなるほど共振モードの線幅は鋭く なる.