EUの自動車の排ガスに対する規制には、EU指令による法的規制を導入した「排ガス規
制(emission regulations)」と自動車業界の自主規制に委ねている二酸化炭素(CO2)の 排出量に関する協定がある。・ 排ガス規制――乗用車と小型商用車を対象に、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、
窒素酸化物(NOX)、粒子状物質(PM)の排出規制を定めたもの。1992年に導入され た「ユーロ
1(Euro 1)」に始まり、順次規制を強化して乗用車は 2005
年1
月から、小型商用車は
2006
年1
月から「ユーロ4」に移行した。次の段階である「ユーロ 5」
の導入は
2008
年半ば以降の予定で、2005
年12
月に欧州委員会が指令案を提示してい る。・ 二酸化炭素排出量の自主規制――1998年に欧州委員会と欧州自動車工業会(ACEA)
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"Commission Staff Working Document, Annex to the Report from the Commission Progress towards Achieving the Community's Kyoto Target (required under Article 3(1) of Decision
280/2004/EC of the European Parliament and of the Council concerning a mechanism for monitoring
Community greenhouse gas emissions and for implementing the Kyoto Protocol) {COM(2005) 655
final}", Commission of the European Communities, Brussels, 15.12.2005, SEC(2005) 1642
の協議により協定が結ばれ、段階的にCO2を削減していく目標を設定した。自動車業 界には自主規制とすることで、法制化で厳しい罰則を科せられることを回避する狙い があった。
(ⅰ)「ユーロ
5」の概要
a)これまでの流れ1992
年の「ユーロ1」に続き 1996
年1
月から「ユーロ2」が導入され、この段階から
ディーゼル車とガソリン車で各物質の排出上限が分けられた。ディーゼル車は窒素酸化物 と粒子状物質でガソリン車に劣っているものの、一酸化炭素の排出で優れている点を考慮 したものである。小型商用車(重量3,500kg
以下)は、車体の参考重量(RW)によって「クラス
1(RW
が1,305kg
以下)」、「クラス2(RW
が1,305kg
超1,760kg
以下)」、「クラス
3(RW
が1,760kg
超3,500kg
以下)」の3
つに排出上限が区分され、乗用車に比べると排出規制が緩い。なお規制では、乗用車は「カテゴリーM」、小型商用車は「カテゴリ ーN1」と表示されている。
「ユーロ
3」は 2000
年1
月に導入され、2005年1
月からは「ユーロ4」に移行した。
「ユーロ
4」では、乗用車のガソリン車で一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物をほぼ半減
し、乗用車のディーゼル車で窒素酸化物と粒子状物質を半分に減らすという厳しいものだ った。小型商用車でもガソリン車、ディーゼル車とも各物質をほぼ半減することを定めて いた。ただし「ユーロ
4」では、小型商用車の「クラス 2」と「クラス 3」については規制
の導入時期を1
年先送りにして2006
年1
月となった。b)ユーロ 5 の指令案
欧州委員会は
2008
年半ばの導入を目指す「ユーロ5」の草案を 2005
年7
月に公表し、自動車業界はじめ関係者との諮問を重ねた後、
2005
年12
月21
日に指令最終案44を発表し た。最終案に示された「ユーロ5」の排出規制案を表 14
に示した。乗用車は「ユーロ3」
「ユーロ
4」と比較し、小型商用車は「ユーロ 4」と比較している。「ユーロ 3」から「ユ
ーロ
4」への移行時に比べると削減幅は全般的に抑えられ、一部では据え置きもあるが、
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"Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on type approval of
motor vehicles with respect to emissions and on access to vehicle repair information, amending
Directive 72/306/EEC and Directive ../../EC (presented by the Commission) {SEC(2005) 1745},
COM(2005) 683 final/2005/0282 (COD)", Commission of the European Communities (Brussels,
21.12.2005)
粒子状物質(PM)については大幅な削減を求めている。「ユーロ
4」のPM上限値では、
当初はPM除去装置がなければ規制はクリアできないとされていたが、ディーゼルエンジ ンの技術開発で導入時までには除去装置の必要性がなくなっていた。しかし「ユーロ
5」
では、現在の技術状況からみて除去装置がなければ達成は不可能とされている。なお規制 の導入時期は、「早ければ
2008
年半ば」となっている。また今回、小型商用車の規制導入 時期はすべてのクラスで乗用車と統一されている。表 14: 乗用車と小型商用車の排ガス規制(ユーロ
4
とユーロ5
最終案)(単位:mg/km)
ユーロレベル(規制年) CO HC HC+
NOx NOx PM
●乗用車
ユーロ3(2000年1月) 2,300 200 - 150 - ユーロ4(2005年1月) 1,000 100 - 80 - ガソリン車
ユーロ5(2008年半ば) 1,000 75 - 60 (5) ユーロ3(2000年1月) 640 - 560 500 50 ユーロ4(2005年1月) 500 - 300 250 25 ディーゼル車
ユーロ5(2008年半ば) 500 - 250 200 5
●小型商用車(ガソリン車)
RWが1,305kg以下 ユーロ4(2005年1月) 1,000 100 - 80 - RWが1,305kg超1,760 kg以下 ユーロ4(2006年1月) 1,810 130 - 100 - RWが1,760kg超3,500 kg以下 ユーロ4(2006年1月) 2,270 160 - 110 - RWが1,305kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 1,000 75 - 60 (5) RWが1,305kg超1,760 kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 1,810 100 - 75 (5) RWが1,760kg超3,500 kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 2,270 120 - 82 (5)
●小型商用車(ディーゼル車)
RWが1,305kg以下 ユーロ4(2005年1月) 500 - 300 250 25 RWが1,305kg超1,760 kg以下 ユーロ4(2006年1月) 630 - 390 330 40 RWが1,760kg超3,500 kg以下 ユーロ4(2006年1月) 740 - 460 390 60 RWが1,305kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 500 - 250 200 5 RWが1,305kg超1,760 kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 630 - 320 260 5 RWが1,760kg超3,500 kg以下 ユーロ5(2008年半ば) 740 - 380 310 5 注:「ユーロ5」のガソリン車のPM規制は、リーンバーン(希薄燃焼)直噴エンジンにのみ適用。
出所: 欧州委員会、ACEA
「ユーロ
5」の最終案の特徴をまとめると以下のようになる。
•
乗用車のディーゼル車では、PM排出量の上限を80%削減し、窒素酸化物(NO
X)の 排出量の上限を20%削減。
•
乗用車のガソリン車では、NOx
と炭化水素(HC)の排出量の上限をそれぞれ25%削
減。•
リーンバーン直噴エンジンを使ったガソリン車では、乗用車、小型商用車ともPM
の 規制値を導入。•
小型商用車のディーゼル車では、PM排出量の上限を約80〜90%削減。
•
小型商用車ではガソリン車、ディーゼル車ともNOx
排出量を約20%削減。
•
これまで小型商用車の排出規制が適用されていたSUV
など重量が2,500kg
を超える 大型乗用車に対しても、通常の乗用車の排出上限を適用し規制を強化。•
排出規制の発効から実施まで移行期間を設け、新たに型式承認を取得する乗用車では18
ヵ月、それ以外の新車では36
ヵ月の猶予が与えられる。(
ⅱ)
二酸化炭素排出量の自主規制欧州委員会とACEAの協定による自主目標は、走行
1km当たりのCO
2の平均排出量を段 階的に削減していくことになっている。平均排出量とは新車乗用車の全車種の販売台数か ら計算するもので、燃費効率が良い高性能のディーゼル車や小型車などCO2の排出量が少 ない自動車の販売台数が多ければ、各メーカーの平均排出量は引き下げられることになる。1995
年ではこれが185g程度の水準にあったが、今後の自主規制では以下のような目標を
設定している。• 2008
年から販売する新車乗用車では走行距離1km
当たり140g以下。
• 2012
年までに平均排出量を走行距離1km
当たり120g以下とすることを検討する。
CO
2排出量は2002
年に160gの水準まで下がったが、ディーゼルエンジンの技術開発
の停滞や燃費効率の悪いSUVなど大型乗用車の販売増大により排出量の減少幅が鈍って きている。このため
2008
年の目標達成は困難との見方が自動車業界から出てきている。2005
年6
月に欧州委員会が公表したCO2に関する報告書45では、自動車業界が自主規制を 守れないことが明らかになった場合、法規制を導入する可能性も示している。③ 統合製品政策(