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第3章 審理手続

1 総則的な留意点

【概要】

審理手続の実施に当たっての留意点は、以下のとおり。

・ 審理関係人のそれぞれの主張を公平に聴取するなど、公正・中立に審理を進めること ・ 審理手続の実施に当たっては、不当であるか否かについても審理を行うこと

・ 簡易迅速な手続の進行に努めること

(1)審理手続の進行

審理員は、審理手続の実施に際し、簡易迅速かつ公正な審理を実現するため、審理関係人と相 互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない(法28条)。

具体的には、以下の事項に留意する必要がある。

ア 公正・中立な審理の進行

○ 処分庁等の主張に偏ることなく、審理関係人のそれぞれの主張を公平に聴取する など、公正・中立に審理を進めること。

(具体例)

・ 審理関係人が了知しない事実等に基づいて審査庁がすべき裁決の内容について判 断することは避ける。

・ 審理員が職権で実施する場合など、審査請求人等の立会いなく行われた参考人の 陳述、鑑定、検証、質問等の審理手続等の結果、裁決の内容についての判断に影響 を及ぼす事実で、他の審理関係人が了知しないものが判明した場合に、審理手続の 結果を当該審理関係人に通知すること等により必要な範囲で当該事実を示し、その 反論の機会を与える。

・ 審理関係人が、審理手続以外の場において非公式に事件に関する主張等を行う意 向を示した場合であっても、公式の手続によって当該主張等を行わせ、他の審理関 係人に適切に反論の機会を与える。

イ 処分等の不当性についての審理の実施

○ 審理手続の実施に当たっては、処分等が違法であるか否かにとどまらず、不当で あるか否かについても必要な審理を行うこと。

(具体例)

・ 処分等の前提となった事実認定や法律解釈等が合理的かつ適正になされているか について、処分庁等の通達などの内部基準の合理性を含めて、適切に調査・確認を 行う。

・ 審理関係人の主張している事実については、それを証明する根拠の有無について も調査を行う。

・ 審理の範囲については、審査請求人が主張する審査請求の理由に限られず、当該 処分の当否を判断するために必要な範囲全般に及ぶものであり、審査請求人が主張 していない点についても、必要に応じ、職権により調査を行う。

ウ 簡易迅速な手続進行

○ 簡易迅速な手続の進行に努めること。

(具体例)

・ 口頭意見陳述の申立てなど、審理手続に係る申立てに対して、速やかに対応する。

・ 審理関係人に対し、迅速かつ公正な手続のためには反論書等や証拠書類等の早期 提出等の協力が欠かせない旨、機会を捉えて通知する。

・ 審理関係人が提出期限までに反論書等や証拠書類等を提出しないなど、審理手続 の進行への協力が得られない場合には、更なる期限を設定して提出を求め、状況に 応じ、提出がない場合には、審理手続を終結する(法41条2項)など、審理の著し い遅滞を招くことがないよう対応する。

・ 争点の整理等により計画的に審理手続を行うよう努めるとともに、審理関係人に 対しても、審理手続の予定時期等を遅滞なく連絡するなどして、審理手続の計画的 な進行について協力を求める。

・ 審理関係人に対する通知や連絡を確実に行い、情報伝達の不徹底による審理手続 の遅延を生じさせないよう細心の注意を払う。

(2)審理員を複数指名した場合の審理手続

審理員が複数指名された場合には、審理手続を効率的に進めるため、必要に応じ、口頭意見陳 述や参考人陳述等の個々の審理手続を特定の審理員が行うなど、審理員間で審理手続を分担して 実施することも可能である。この場合、審理手続を担当した審理員が他の審理員に当該審理手続 の結果を報告するなどにより、審理員間で情報の共有を図る必要がある。なお、審理員意見書等 については、審理員の合議により審査請求に対する判断を決定するなど、全ての審理員が関与し て作成することが必要である(第2編第3章13、15(97、100ページ)参照)。

(3)審理手続の進行中に審査請求が不適法となった場合の対応

審査庁が、審査請求を適法なものであると判断したものの、以下のような事情の変化により、

審理手続が開始された後に、当該審査請求が不適法となる場合も想定される。

① 処分庁が審査請求に係る処分を取り消した場合

② 不作為庁が当該不作為に係る申請に対する処分を行った場合

このような場合には、当該審査請求が不適法であることが明らかとなることにより、必要な審 理を終えたといえるから、審理員は、審理手続を終結させ、審理関係人に審理手続を終結した旨 等必要な通知を行う(法41条)(本章14(98ページ)参照)とともに、審査請求を却下すべき旨の 審理員意見書を作成し、審査庁に提出する。

(4)審査庁との関係

法は、審理手続に関する権限を審理員に帰属させており、審理員は、個々の事件に関する個別 具体的な審理手続については、審査庁から指揮を受けることなく、自らの名において、審理を行 うこととなる。したがって、審査庁が個々の事件に関する審理手続について個別具体的な指示等 を行うことは、こうした審理員制度の趣旨に照らし適当でない。

なお、審査庁が、審査請求の審理に関して審理員が遵守すべき一般的な事項(例えば、「不服 申立人適格の判断に当たっては行政事件訴訟法9条2項の考慮事項を考慮すること」、「審理関係 人に対する通知は書面で行うこと」、「審理関係人に対して、適宜、審理手続の実施時期や終結時 期の見通しを示すこと」、「審理手続の遅延を防止するため迅速な審理を行うよう努めること」等)

を示すことは、もとより可能であるが、こうした事項については、審理の公正性について疑念を 招くことのないよう、可能な限り、あらかじめ明確にしておく必要がある。