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再審査請求の審理手続についても、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編「第3章 審 理手続」参照)。ただし、詳細については、次のように審査請求とは異なる部分もある。

1 再審査請求書の送付及び裁決書の送付

(1)再審査請求書の送付

審理員は、再審査庁から審理員として指名されたときは、直ちに、裁決庁等に再審査請求書を 送付しなければならない(法66条1項で準用する法29条1項)。この再審査請求書の送付は、再審 査請求の対象が原裁決である場合には裁決庁、対象が原処分である場合には処分庁に対して行う。

(2)裁決書の送付

再審査請求については、裁決庁等からの弁明書の提出及び再審査請求人からの反論書の提出の 手続は設けておらず、これに相当するものとして、原裁決に係る裁決書の提出の手続を設けてい る(法63条)。

このため、審理員(再審査庁が法66条1項で準用する法9条1項各号に掲げる機関である場合 は、当該再審査庁(以下「委員会等である再審査庁」という。))は、原裁決をした行政庁に対し て、原裁決に係る裁決書の送付を求める(法63条)。

また、裁決書の送付を求める時期については、法令上特に規定はないが、裁決庁等への再審査 請求書の送付と並行して行うことが適当であり、再審査請求の対象が原裁決である場合には、裁 決庁に再審査請求書を送付するのに併せて、原裁決に係る裁決書の送付を求めることが効率的で あると考えられる。

なお、裁決書の提出については、法律上、提出すべき相当の期間を定めることとはしていない が、これは弁明書のように新たに作成するものではなく、提出に一定の期間を要するものではな いためであり、提出を求められた裁決庁は、直ちに裁決書を送付する必要がある。

提出された裁決書については、法律上、審理関係人(再審査請求人、参加人及び裁決庁等)へ の送付の手続は設けられていないが、再審査請求人又は参加人が、審査請求において審査請求人 又は参加人のいずれでもなかった場合には、審査請求の裁決の際に裁決書の送付を受けていない ことから、審理員は、提出された裁決書の写しを送付する。

2 意見書

再審査請求においても、参加人は、再審査請求に係る事件に関する意見書を提出することができ、

審理員は、意見書を提出すべき相当の期間を定めることができる(法66条1項で準用する法30条2 項)。これは、審査請求には参加していなかった利害関係人が再審査請求に参加する場合を考慮し、

その書面による主張の手続を整備したものである。

審理員は、審理の遅滞を防ぐ観点から、提出期限を定めて意見書の提出を参加人に促すことが望 ましく(第2編第3章4(54ページ)参照)、具体的には、裁決書の送付を求めるのに並行して、参 加人に意見書を提出すべき相当の期間を通知することが効率的であると考えられる。

なお、当該期間内に意見書が提出されない場合であって、審理に当たって参加人の主張を把握す る必要があると認めるときは、更に期間を定めて、当該期間内に意見書が提出されない場合は審理

手続を終結することがある旨(法66条1項で準用する法41条2項)を記載した書面〔様式例29〕に より、意見書の提出を促すことが適当であると考えられる。

審理員は、意見書が提出されたときは再審査請求人及び裁決庁等に、それぞれ送付しなければな らない(法66条1項で準用する法30条3項)。送付は、提出後速やかに行う。

なお、意見書において、再審査請求の結論に影響を与え得る新たな主張や事実が提示された場合 は、審理関係人への質問(法66条1項で準用する法36条)等により、適宜他の審理関係人の反論の 機会を付与する必要がある。

3 争点の整理等

争点の整理等については、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章5(57ページ)

参照)。

4 口頭意見陳述

口頭意見陳述については、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章6(62ページ)

参照)が、再審査請求が原裁決を対象とする場合には、口頭意見陳述に出席し、また、申立人が質 問を発することができるのは、処分庁ではなく裁決庁となる。

5 証拠書類等の提出

証拠書類等の提出についても、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章7(71ペ ージ)参照)が、再審査請求においては、弁明書や反論書の提出手続がないが、審理の迅速性を確 保するため、裁決書の送付を求めるのに並行して、審理関係人に証拠書類等を提出すべき相当の期 間(提出期限)を定めて通知し、その提出を促すことが効率的であると考えられる(本章2(138 ページ)も参照)。再審査請求が原裁決を対象とする場合には、裁決庁に対しては、再審査請求書の 送付(本章1(1)(138ページ)参照)の際に通知することも可能である。

6 書類その他の物件の提出要求

物件の提出要求についても、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章8(75ペー ジ)参照)が、審査請求の審理段階で、事件記録(第2編第3章15(100ページ)参照)が審査庁に 提出されていることから、審理員は、審理の迅速性を確保するため、全ての物件について改めて所 持人に提出を求めるのではなく、事件記録に含まれている物件については、裁決庁に事件記録の必 要部分の写しの提出を求めることが効率的であると考えられる。

7 その他の審理手続

参考人の陳述及び鑑定の要求や、検証、質問、提出資料等の閲覧等、審理手続の併合又は分離に ついては、基本的に審査請求の場合と同様である(第2編第3章9~13(79~97ページ)参照)。

8 審理手続の終結

審理手続の終結についても、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章14(98ペー ジ)参照)が、弁明書及び反論書が提出されない場合の審理手続の終結(法41条2項1号イ・ロ)

は適用されないこと、また、行政不服審査会等への諮問に係る申出の手続がない点で、審査請求と

異なる。

9 審理員意見書

審理員意見書の提出についても、基本的には審査請求の場合と同様である(第2編第3章15(100 ページ)参照)。また、事件記録の具体的内容は次のとおりであり、審理手続の違い(本章1(2)

(138ページ)参照)から、審査請求において事件記録とされている弁明書(その添付書類を含む。) 及び反論書が含まれず、裁決庁から提出される原裁決に係る裁決書が含まれる点で、審査請求と異 なる。

表18 再審査請求手続における事件記録

事件記録 左の記録に係る審理手続等の根拠条文 法66条1項で準用する法41条3項に規定されているもの

・再審査請求書 法66条1項で準用する法19条

・原裁決に係る裁決書 法63条

事件記録として政令で定めるもの

○ 再審査請求録取書

(法66条1項で準用する法20条)

令19条で準用する令15条1項1号

○ 意見書(法66条1項で準用する法30条2項) 令19条で準用する令15条1項4号

○ 次の手続の記録 令19条で準用する令15条1項5号

・ 口頭意見陳述(法66条1項で準用する法31条)

・ 参考人の陳述又は鑑定

(法66条1項で準用する法34条)

・ 検証(法66条1項で準用する法35条)

・ 審理関係人への質問

(法66条1項で準用する法36条)

・ 審理手続の申立てに関する意見聴取 (法66条1項で準用する法37条)

○ 審理関係人から提出された証拠書類若しくは 証拠物又は書類その他の物件

(法66条1項で準用する法32条1・2項)

令19条で準用する令15条1項6号

○ 物件の提出要求(法66条1項で準用する法33 条)に応じて提出された書類その他の物件

令19条で準用する令15条1項7号

(注)令19条では、令15条1項2・3号の規定は準用されていない。

第5章 裁決

裁決の態様、手続等については、基本的に処分についての審査請求の裁決と同様である(第2編 第5章(110ページ)参照)。

ただし、具体的には、次のような点で、処分についての審査請求の裁決と違いがある。

(1)裁決の時期

再審査庁は、審理員意見書が提出されたとき(委員会等である再審査庁にあっては、審理手続 を終結したとき)は、遅滞なく、裁決をしなければならない(法66条1項で準用する法44条)。な お、再審査請求においては、審査請求の裁決までの段階で行政不服審査会等その他の第三者機関 の議を経ていることから、行政不服審査会等への諮問は義務付けられていない。

(2)裁決の態様等

再審査請求は、裁決庁等の上級行政庁や裁決庁等が再審査庁となることを想定した手続ではな いため、審査庁が処分庁等の上級行政庁又は処分庁等のいずれでもない場合の裁決と同様の手続 となっている。そのため、再審査請求を認容する場合は、原裁決等の全部又は一部を取り消す(事 実上の行為の場合は、当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃すべき旨を命ずる)にとどまり、

原裁決等の変更や、申請に対する一定の処分をすべき旨を命ずる措置は認められていない(法65 条)。

再審査請求が理由があるか否かは、再審査請求の対象となった原処分又は原裁決が違法又は不 当であるかに照らして判断される。ただし、審査請求を却下し、又は棄却した原裁決の取消しを 求める再審査請求において、原処分が違法又は不当のいずれでもない場合は、原裁決が手続上の 瑕疵等により違法又は不当であったとしても、これを取り消して再び審査請求をやり直す実益が ない(当該審査請求を棄却するという結論は変わらないため)ことから、当該再審査請求を棄却 する(法64条3項)。この場合には、裁決の理由として、原裁決が違法又は不当であるが、原処分 が違法又は不当のいずれでもない旨が記載される必要がある。

(3)裁決書

裁決書には、審理員の指名を要しない場合(再審査庁が委員会等である再審査庁である場合)

を除き、審理員意見書を添付する(法66条1項で準用する法50条2項)。

また、裁決書の送付は、再審査請求の対象が原処分と原裁決のいずれであるかにかかわらず、

処分庁及び裁決庁の両者に対して行う必要がある(法66条1項で準用する法51条4項)。 なお、更なる不服申立ての教示については、法に規定はないが、個別法により再審査請求の後

の更なる不服申立手続が設けられている場合には、法50条3項に準じて、不服申立先等の事項を 教示することが適当である。