第3章 審理関係人等
6 審理手続の承継
【概要】
審査庁は、審査請求人の地位の承継があった場合は、書面でその旨届け出ることを求め、他の 審理関係人等に通知する。
ア 審査請求人の地位の承継の届出
○ 審査請求人の死亡又は合併若しくは分割により審査請求人の地位の承継があっ たときは、審査庁の担当職員は、承継人から、権利の承継等を証明する書面を添付 して、書面でその旨を届け出ることを求める。
法15条3項 様式例12
a)地位の承継
<法令>◆ 審査請求人が死亡したときは、相続等により審査請求の目的である処分に係 る権利を承継した者が、また、法人等である審査請求人について合併又は分割 があったときは、合併後存続し、若しくは合併により設立された法人等又は分 割により当該権利を承継した法人等が、審査請求人の地位を承継する。
法15条1・2項
[解釈]□ 審査請求人の地位の承継は、審査請求人の死亡(法15条1項)、合併又は 分割(同条2項)による審査請求の目的である処分に係る権利の承継によ り、当然に効力が生ずる。
□ 法15条1項の処分に係る権利を承継した者とは、一般には、相続人(当該 権利について相続人として特定された者があるときはその者)が該当する。
なお、「法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者」
とは、例えば、生活保護法第10条の規定により世帯員が承継するというよう に、法令により相続人以外の者が承継する場合を意味する。
b)地位の承継の届出
<法令>◆ 審査請求人の地位を承継した者は、権利の承継等を証明する書面を添付し て、書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。
法15条3項
(運用)○ 権利の承継等を証明する書面の具体例は、以下のとおり。
・ 審査請求人の死亡による地位の承継があった場合には、死亡による 権利の承継を証する書面(従前の審査請求人が死亡した事実及び当該 承継人が相続人である事実を証する戸籍記載事項証明書等)
・ 合併又は分割による地位の承継があった場合には、合併の事実又は 分割による権利の承継を証する書面(合併の事実を証する商業・法人 登記の登記事項証明書等)
c)地位の承継の届出がなされなかった場合の取扱い
<法令>◆ 審査請求人の地位の承継に係る届出がされる前に被承継者に宛ててされた 通知が承継者に到達したときには、当該通知が承継者に対してされたものとし て効力を有する。
法15条4項
◆ 承継人が2人以上ある場合には、そのうち1人に対する通知その他の行為 は、全員に対してされたものとみなされる。
法15条5項
(運用)○ 審査請求人の状況に変化があった場合の対応
審査庁の担当者又は審理員は、例えば、審査請求人と連絡が取れなく なる等の状況の変化があった場合には、必要に応じ、審査請求人の地位 の承継の有無についての確認を行い、承継があったことが判明した場合 は、承継人に対して、地位の承継の届出を行うよう求める等の対応をと ることが考えられる。
なお、このような場合において、審査請求人の地位を承継した者が、
審査請求を継続する意思を有しないときは、審査請求の取下げを行うよ う求める等の対応をとることが考えられる。
→30頁参照
○ 承継人がいない場合の対応
審査請求人の死亡等が判明したが、その地位を承継する者がおらず、
審査請求人が不存在であることが明らかである場合は、運用上、審査請 求の取下げがあった場合に準じた対応をとることが考えられる。この場 合、取下げの書面に代えて、審査請求人が不存在となった経緯について の記録を作成し、これを含む当該事案に係る関係書類を整理し、裁決に 係る事務を担当する部署に引き渡すとともに、審理関係人に対して、審 査請求人が存在しなくなったことにより審査請求手続を終了する旨の連 絡を行う。
審査請求の取 下げ→30頁参 照
イ 審査請求人の地位の承継の許可申請
○ 地位の承継の許可申請があったときは、審査請求の目的である処分に係る権利の 譲受について争いが生ずる可能性がないことを確認した上で、地位の承継の許可を 行う。
様式例13
<法令>◆ 審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を 得て、審査請求人の地位を承継することができる。
法15条6項
(運用)○ 審査請求の目的である処分に係る権利の譲受の事実を証明する書面(例 えば、処分に係る不動産の登記事項証明書等)を添付して、書面により 申請することを求めることが適当であると考えられる。
様式例14
ウ 審理関係人等への通知
○ 審査請求人の地位の承継があった場合には、審理関係人に通知する。 様式例15
(運用)○ 審理員による審理手続が開始されているときは、審査庁は、審査請求 人の地位の承継があった旨を審理員に通知し、審理員がその旨を他の審 理関係人に通知することも考えられる。
○ 審査庁又は審理員は、審査請求人の地位の承継があった場合は、必要 に応じ、口頭意見陳述等の期日を変更するなど、承継後の審査請求人が 審理に適切に対応できるよう配慮することが望ましい。