第3章 審理手続
12 審理手続の併合又は分離
【概要】
審理員は、必要に応じて、複数の審査請求に係る審理手続を併合・分離する。
ア 審理手続の併合
① 併合の判断
審理員は、自身が審理手続を行う複数の審査請求事件が、一の審理手続により 審理を行うことが適当と認められる場合には、審理関係人のプライバシーの保護 等を考慮しつつ、これらの審査請求に係る審理手続を併合する。
<法令>◆ 審理員は、必要があると認める場合には、数個の審査請求に係る審理手続 を併合することができる。
法39条
[解釈]□ 審理手続の併合は、審理の円滑かつ迅速な進行と手続経済の観点から、
個々の審査請求事件の関連性、審理手続の進行状況等を踏まえて行われる ものである。
(運用)○ 審理手続を併合することが適当である具体例としては、次のような場 合が考えられる。
・ 複数の審査請求に係る処分等が相互に関連しており証拠書類等が共
通する場合や、審理関係人が共通しており口頭意見陳述等の手続を一 括して行うことが効率的である場合など、手続を一括して行うことに より審理をより円滑かつ迅速に進めることができる場合
・ 争点を共通とする大量の審査請求(例えば、支給基準の変更や施設
の未整備を違法とするものが考えられる)など審理手続を個別に行う よりも当該争点についての審理を一括して行うことが効率的である 場合
○ 審理手続を併合する際には、プライバシー保護等の観点から、各審査 請求の審理関係人の意見を聴くことが望ましいと考えられる。ただし、
審査請求がいずれも同じ審査請求人により行われている場合など、意見 を聴取する意義が乏しい場合には、審理関係人の意見を聴く必要はない
図1〔3-12〕
と考えられる。
② 併合の効果等
[解釈]□ 審理手続を併合した場合には、以下のような効果が生ずると解される。
・ 併合前の各審査請求についての審査請求人・参加人は、併合審理され
る審査請求全体の審査請求人・参加人として取り扱われ、他の審査請求 事件に係る審理手続の申立てや物件の閲覧等の請求も可能となる。
・ 併合審理される数個の審査請求についての弁明書等の主張内容を記載
した書面は、これらの審査請求全体に共通のものとして提出され、共通 の審理資料として活用される。
・ 併合前に一の審査請求について提出された証拠書類等の物件は、併合
された審査請求全体に共通の審理資料として活用される。
□ 数個の審査請求を併合しても、それが共同審査請求となるものではな く、併合前の各審査請求人が共同審査請求人となるものでもない。
□ 併合は、審理手続の終結までの間、一の手続により審理を行うものであ るが、裁決は審査庁が行うものであることから、審理員の判断で数個の審 査請求に係る審理手続を併合した場合でも、当然に一の事件として裁決を することになるものではない。
③ 併合後の手続
審理手続を併合した場合には、その旨を審理関係人に通知する。また、必要に 応じて、審理関係人が所持していない弁明書等(当該審理関係人が参加していな かった併合前の審査請求に係る弁明書等)の写しを送付する。
様式例69
イ 審理手続の分離
① 分離の判断
併合した審理手続について、一の審理手続により審理を行うことが適当でない と認められるに至った場合には、審理手続を分離する。
<法令>◆ 審理員は、必要があると認める場合には、併合された数個の審査請求に係 る審理手続を分離することができる。
法39条
(運用)○ 審理手続を併合して行うことが適当でないと認められる場合は、具体 的には以下のものが想定されるが、個々の事案に応じて、審理員が適切 に判断する必要がある。
・ 一部の審査請求事件について、必要な審理を終えたと認められるに
至った場合
・ 審理手続の進行に伴って、各事件の争点等が区々となり、一の手続 により審理を進めるメリットが失われた場合
② 分離後の手続
審理手続を分離した場合には、その旨を審理関係人に通知する。
また、併合して審理を行っている過程で提出された証拠書類等については、各 審査請求事件において、それぞれ証拠書類等として取り扱うことが適当と認めら れる場合には、適宜写しを作成するなど、その後の審理に支障が生じないよう対 応する必要がある。なお、当該書類等の写しを作成した場合は、写しの作成日時 及び作成者の氏名並びに当該書類等の提出者及び提出日時を当該写しに記載す る。
様式例70