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1 処分時の教示

(1)趣旨

法では、不服申立制度が十分に活用され、国民の権利利益の救済が図られるよう、処分につい て不服申立てによる救済を受けることができる旨を教え示す教示の制度を設けている(法82条)。 この教示制度は、行政不服審査法に基づく審査請求又は再調査の請求をすることができる処分

に限らず、他の法令に基づく独自の不服申立て(例:鉱業法等に基づく公害等調整委員会に対す る裁定の申請)をすることができる処分についても、対象となる。

(2)処分の相手方への教示

ア 教示をしなければいけない場合

「審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分」

を書面で行う場合(オンラインで行う場合を含む。)には、処分をする行政庁は、処分の相手方 に対して、不服申立てについての教示をしなければならない(法82条1項)。

口頭で処分を行う場合(事実上の行為を行う場合を含む。)には、法律上教示は義務付けられ ていないが、不服申立ての便宜を考慮し、状況に応じて、口頭で教示するなど、適切な対応が とられることが望ましい。

なお、申請に対する処分について申請どおりの処分をする場合には、一般に、当該処分の相 手方には不服申立ての利益はないと考えられるから、当該処分は不服申立てをすることができ る処分には当たらず、教示を要しないと考えられる。

イ 教示する事項

教示しなければならない事項は、次のとおりである〔様式例80〕。 ① 当該処分につき不服申立てをすることができる旨

法律上は、不服申立ての種類についての明文の規定はないが、その後の手続を円滑に進め る観点から、不服申立ての種類(名称)を教示すべきである。

② 不服申立てをすべき行政庁

不服申立先となる行政庁の名称を具体的に示さなければならない。

③ 不服申立てをすることができる期間

不服申立てをすることができる期間を具体的に教示する。

なお、客観的審査請求期間(法18条2項)や「正当な理由」(同条1項ただし書、同条2項 ただし書)は、主観的審査請求期間(同条1項本文)が遵守されれば問題とならないが、こ れらも併せて教示することが望ましい。

ウ 教示の方式

教示は、処分をする際に、書面でしなければならない。一般には、処分の相手方に交付する 当該処分の決定書(通知書)に、教示が必要な事項(上記イ①~③)を付記することが考えら れるが、当該事項の記載を失念した場合は、処分庁は、速やかに当該事項を記載した書面を交

付してこれを追完する必要がある。

教示がされなかった場合には、不服申立人は、処分庁に不服申立書を提出することにより、

適法に不服申立てを提起することができる(法83条。第2編第1章2(11ページ)参照)。

(3)利害関係人への教示

ア 教示をしなければいけない場合

処分の相手方以外の利害関係人には、上記(1)の教示はなされないが、処分庁に対して教 示を求めることができる。「利害関係人」とは、当該処分の根拠となる法令に照らし当該処分に つき利害関係を有するものと認められる者をいう(法13条1項。第2編第3章2(2)(46ペー ジ)参照)。口頭による処分などで、処分の際に教示がなかった場合には、処分の相手方も含ま れる。

行政庁は、利害関係人から教示を求められた場合には、不服申立てについての教示をしなけ ればならない(法82条2項)。

イ 教示する事項

① 当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか

「当該処分」とは、あらゆる処分を対象とするものであり、不服申立てができる処分であ るか否かは問わず、処分が書面でされるか口頭でされるかも問わない。非継続的な事実上の 行為も含まれる。

② 不服申立てをすべき行政庁(当該処分が不服申立てをすることができるものである場合)

③ 不服申立てをすることができる期間(当該処分が不服申立てをすることができるものであ

る場合)

ウ 教示の方式

この場合には、教示を求められる処分やその状況は様々であることから、書面ですることは 義務付けられておらず、口頭ですることも可能である。ただし、教示を求めた者が書面による 教示を求めたときは、その教示は書面でしなければならない(法82条3項)。

なお、行政庁は、教示の求めを受けたときは、速やかに教示すべきである。

2 不服申立てをしようとする者等に対する情報提供

(1)趣旨

法では、不服申立てをしようとする者又は不服申立てをした者の便宜を図る観点から、不服申 立てに対して裁決その他の処分(以下「裁決等」という。)を行う権限を有する行政庁は、これら の者の求めに応じ、個々の不服申立てが円滑にされるために必要な情報の提供に努めなければな らないこととしている(法84条)。

(2)提供する情報

提供する情報については、不服申立てをしようとする者等の求めの内容等を踏まえ、各行政庁 において判断されることになるが、想定されるものとしては、以下の事項に係る情報が挙げられ る。

ア 不服申立てをしようとする者に対し提供することが想定される情報の例 ・不服申立書の記載の程度・目安

・当該不服申立てにおける標準審理期間

・当該不服申立てにおける審理手続の基本的な流れ

(反論書・証拠書類等の提出、口頭意見陳述・参考人の陳述・鑑定・検証・審理関係人への 質問・物件の閲覧等ができる旨、第三者機関への諮問、裁決)

・執行停止や口頭意見陳述の申立ての具体的手続・方式

イ 不服申立てをした者に対し提供することが想定される情報の例 ・反論書や証拠書類等の提出の具体的手続

・参考人の陳述、鑑定、検証等の申立ての具体的手続・方式 ・提出書類等の閲覧等の求めの具体的手続・方式

・不服申立ての取下げの具体的手続・方式

・審理手続終結時期の見通し、裁決の時期の見通し

(3)提供の方法

この情報の提供の求めは、審査請求をしようとする者が電話で手続等の概要について情報提供 を求める、行政庁の事務所に来所して受付担当職員に審査請求書の記載方法について助言を求め る、審理員に対して審理手続の申立ての方式について問い合わせるなど、様々な状況でなされる ことが想定されことから、個々の求めの状況等に応じ、適切に判断することとなる。

なお、提供に当たっては、単に求められた情報のみを提供するにとどまらず、関連するその他 の情報を併せて提供するなど、不服申立てをしようとする者等の便宜を考慮して、丁寧な対応を とることが望ましい。

3 不服申立ての処理状況の公表

(1)趣旨

法では、不服申立制度の運用状況について国民に対する説明責任を果たすとともに、不服申立 てをしようとする者の予見可能性を高める観点から、裁決等をする権限を有する行政庁は、裁決 等の内容その他当該行政庁における不服申立ての処理状況について公表するよう努めなければな らないこととしている(法85条)。

(2)公表する情報

裁決等は、不服申立てに対する行政庁の最終的な判断を示すものであり、国民に対する説明責 任を果たすとともに、国民の予見可能性を高める観点から、審理関係人等の個人情報の保護等に も留意しつつ、可能な限り、その内容を公表することが望ましい。

また、不服申立ての処理状況としては、不服申立ての処理状況についての透明性を確保する観 点から、単に当該行政庁における不服申立ての処理件数の合計数を示すのみでは十分でなく、処 分の類型(根拠法令)ごとの不服申立件数、処理件数、処理内容(認容、棄却等の別)、処理期間 などの情報を公表することが望ましい。

(3)公表の方法

これらの具体的な公表の方法については、各行政庁の判断に委ねられるが、例えば、裁決等の 内容や年度ごとの処理状況について、各機関のウェブサイト(ホームページ)にデータを掲載す るなどの方法が考えられる。

また、裁決の内容の公表については、総務省において構築・運用している「裁決・答申データ ベース」への入力・公表により行うことも可能である。