探索的因子分析で得られた尺度の妥当性のチェックを、確認的因子分析により行った(図
表5-10)。モデルの適合度は一般にCFIは0.9以上が望ましく、RMSEAは0.1未満が採択
の条件となるため111、CFI=0.93、RMSEA=0.06 は許容範囲とみなされる112。収束妥当性を 見るため、各構成概念とそれを構成する測定項目との相関係数が十分に大きいことを確認し た。また各々の標準化係数はすべて 1%水準で有意であり、尺度の収束妥当性が確認され
111 0.05以下で当てはまりが良く、0.1以上は棄却される(豊田1998)。
112 適合度指標GFI(goodness of fit index) 、調整済み適合度指標AGFI(adjusted goodness of fit index)、比較適合度指標CFI、情報量基準AIC(Akaike information criterion)、平均自乗誤差平 方根RMSEA(root mean square error of approximation)でモデルの適合性を算出したところ、そ れぞれGFI=0.86, AGFI=0.83, CFI=0.93, RMSEA=0.06となり、適合度は高くないものの、許容 範囲となった。
参加意図
誘われても断る逆転項目 0.868
誘われたら見に行きたい 0.807
今後もバレエを見ようとは思わない逆転項目 0.771
クロンバックのα 0.856
た。弁別妥当性について、各構成概念間の相関係数を確認したところ、どれも1もしくは-1と 有意(1%水準)に異なり、弁別妥当性が確認された113。
図表 5-10 確認的因子分析の結果
113 「個人的阻害要因」と「バレエ関与」の相関係数が-0.83と、独立変数どうし高い相関関係を持 つことになるため、多重共線性をVIFを算出して確認した。行動意図を従属変数とし算出した所、
行動意図への規定因と構造 5.5.
5.5.1. 仮説の提示
5.2.2項で述べたとおりCrawford et al. (1991)は、「阻害要因を感じていてもレジャーに参
加する人」が存在するとし、Jackson et al. (1993)は、「阻害要因」を知覚したのち、「すり合わ せ」(negotiation)をおこなうことで、参加となることを示した。また、すり合わせプロセスを左右 す る の が 阻 害 要 因 と 動 機 づ け ( 魅 力 ) の バ ラ ン ス で あ る と し た 。Hubbard and Mannell (2001)は、阻害要因とすり合わせの関係をモデル化し、その関連性を示した。
以上のことから、前項でバレエの非鑑賞者について得られた尺度により、アートの無関心と 拒否の構造を明らかにするため、各構成概念間の関係の概念図を図表 5-11 のとおりとした。
阻害要因はすり合わせ行動に対して正の効果を持つことをHubbard and Mannell (2001) は示しているが、バレエの非鑑賞層においては、因子分析で得られた阻害要因の種別によっ て異なってくる前提で、後の仮説を詳細に設定した。
仮説を立てるにあたって、パスを引く箇所の検討をするために、阻害要因について以下のよ うに整理した(図表5-12)。阻害要因は大きくカテゴリー分けをするとすれば、内的要因に起因 するものと、外的要因に起因するものに分けられる。前者に該当するものが「個人的阻害要 因」であり、後者に該当するものが、「対人的阻害要因」と「構造的阻害要因」である。内的要 因に起因するものは、今回の調査対象の非鑑賞者では、もとより「行きたい」という気持ちが希 薄なものと考え、すり合わせ努力を経ずに、ダイレクトに行動意図に影響する。ただし、今回の すり合わせ、逆すり合わせを引き起こすためのプライミングが、すでに「バレエ公演のチケットが 手元にある」という設定のため、参加の方向に有利に働くと考え、逆すり合わせへのパスのみ 設定した。
一方、外的要因に起因するものは、個人の意図とは関係なく影響をおよぼす状況要因であ るため、「本当は行きたい」という行動意図を持っている可能性がある。このため、「対人的阻害 要因」と「構造的阻害要因」はすり合わせ、逆すり合わせ両方にパスを設定し、行動意図への 直接のパスは設定しなかった。すなわち、必ず何らかの調整プロセスを経てから意思決定をす るという前提である。
図表 5-12 バレエ鑑賞行動とその規定因に関する仮説(詳細)
ただし、個人的阻害要因に属するカテゴリー「個人内阻害」「アクセス困難性」「低優先」のう ち、「アクセス困難性」については、項目が「身近に情報がない」「劇場がない」「チケットの入手 方法がわからない」などであるため、外的要因に類似する面もあることが考えられる。すなわち 本当は行きたい場合を含む。ただし、外的要因に見えて、「既に意思決定された内的要因」と 考えることもできる。つまり、本調査の対象である関与が極めて低い消費者の場合、外的要因 が擬似的な「言い訳」になっている場合が想定される。いずれにしろ、他の外的要因のケース に合わせれば、アクセス困難性からすり合わせ努力へのパスを設定する必要があるが、今回の プライミングの、「すでにバレエ公演のチケットが手元にある」という設定の下では成立しないパ スであると考 えた。さらに、関 与 から行 動 意 図 へは、先 行 研 究 で成 立 し なかったパスであり (Hubbard and Mannell 2001)、本研究でも予備的に設定して検討したが、モデルとして成 立しなかったため、仮説設定の段階で外すこととした。
以上の検討から、仮説を以下のように設定した。バレエ関与は、バレエに対する興味、関心 を表す指標のため、鑑賞行動への「すり合わせ努力」に対し、正の効果を持ち(H1a)、「逆す り合わせ」に対し、負の効果を持つ(H1b)。また、個人的阻害要因は、「行動意図」に対し、負 の効果を持つ(H2a)。個人的阻害要因が高い場合は、鑑賞行動への「逆すり合わせ」が起こ るため、正の効果を持つ(H2b)。一方、外的要因である対人的阻害要因は、鑑賞行動への
「すり合わせ努力」に対し、正の効果を持ち(H3a)、「逆すり合わせ」に対し、正の効果を持つ
(H3b)。さらに、構造的阻害要因は、一時的な調整や認知度力の投入では解決しない構造
H1a:バレエ関与は、鑑賞行動への「すり合わせ努力」に対し、正の効果を持つ。
H1b:バレエ関与は、鑑賞行動への「逆すり合わせ」に対し、負の効果を持つ。
H2a:個人的阻害要因は、「行動意図」に対し、負の効果を持つ。
H2b:個人的阻害要因は、鑑賞行動への「逆すり合わせ」に対し、正の効果を持つ。
H3a:対人的阻害要因は、鑑賞行動への「すり合わせ努力」に対し、正の効果を持つ。
H3b:対人的阻害要因は、鑑賞行動への「逆すり合わせ」に対し、正の効果を持つ。
H4a:構造的阻害要因は、鑑賞行動への「すり合わせ努力」に対し、負の効果を持つ。
H4b:構造的阻害要因は、鑑賞行動への「逆すり合わせ」に対し、正の効果を持つ。
H5 :逆すり合わせは、「行動意図」に対し、負の効果を持つ。
H6 :すり合わせは、「行動意図」に対し、正の効果を持つ。