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マニピュレーションチェック

マニピュレーションチェックは、選定した写真刺激が、本調査においても、同様の効果を持っ

図表 6-16 腕時計 予備調査における各写真 典型性-具体性 プロット図の例

142 超高関与関連の質問項目は以下の通りである。「私にとって夢中になれる対象である」「私の人 生になくてはならない」「バレエになるべく長く触れていたい」「この分野で憧れ、 尊敬、また はお気に入りの対象がいる」(堀田 2011)。これに対して95名の有効回答を得た。5点尺度の 平均値で 4.0 以上を超高関与とすると、54%の人がこれに該当した。本項で述べたとおり、この 後さらに、前ページの(2)と(3)の2つの指標をアンド条件で組合せて「高関与」として セ グメントしているため、より多くの超高関与の人が含まれると考えられる。従って、この「高関 与」は「超高関与層」を中心とした消費者層であると考えられる。

143 腕時計では、191名の有効回答を得た。5点尺度の平均値で4.0以上を超高関与と考えると、50%

ているかについて行った。予備調査で最も具体性が高いとされた、バレエの「St」、腕時計の

「GSB」と「ASJ」を具体性のチェックに、最も典型性が高いとされたバレエの「Swan」、腕時計 の「GSS」と「ASC」について、これが本調査でもその意図どおり認識されているか、すなわち、

全データ平均以上に典型的、具体的と知覚されているかどうかをチェックした。

その結 果 、まずバレエでは、「St」の具 体 性 は写 真 全 体 の具 体 性 を上 回 り(t(945)=6.98, p<.01)、「Swan」の典型性は写真全体の典型性を上回った(t(1061)=32.3, p<.01)。同様に、

腕時計の男物では「GSB」の具体性(t(671)=5.39, p<.01)、「GSS」の典型性はそれぞれ写真 全体を上回った(t(809)=9.77, p<.01)、女物では「ASJ」の具体性は写真全体の具体性を上 回り(t(622)=3.26, p<.01)、「ASC」の典型性は写真全体を上回った(t(661)=10.77, p<.01)。

以上により、本調査における調査対象者に、選定した写真の典型性、具体性が意図に沿って 認識されていることが確かめられた。

本調査 6.7.

本調査では、予備調査によって典型性と具体性が評価された広告画像に対する、消費者 の評価を測定し、知覚典型性と知覚具体性の態度へ及ぼす影響を検討した。なお、分析手 続きについては、杉谷(2011)を参考とした。

調査期間は、2016年1月12日~24日の間、インターネット調査会社の一般モニターを対象 に写真を提示し、回答を求めた。6,603名からスクリーニングへの回答を得て144、バレエ1,331 名、腕時計1,550名に本調査を依頼した結果、バレエ746名、腕時計1,010名の有効回答を 得 た 。 回 答 者 の セ グ メン テー ショ ン を 行 うに あ た り 、6.6.1項 に 述 べ た と お り 、 両 価 的 態 度 (Kaplan 1972)を抽出する枠組みを援用し、以下の複数の測定項目を組み合わせた。すなわ ち、前述の自己申告による態度、Thompson et al. (1995)による両価的態度、正の典型性と 負の典型性による認知面での両価性の3つである。この3つの評価がすべて揃った消費者を 抽出することにより、その製品カテゴリーを大変好み、興味も知識も高い「高関与層」、認知資 源の投入水準や関心の低い「無関心層」、拒否的認知と態度を持つ「拒否層」に分けた145

144 映画/ミュージカル/クラシック/バレエ/フィギュアスケート/プロ野球/プロサッカー/ファッショ

ン(服)/腕時計の9項目について、それぞれ5点尺度で態度を聞き、バレエと腕時計について「5.

大変好き」「3.どちらでもない」「1.全く好きではない」と回答した人を 本調査対象者とし た。

145 分析対象者は「拒否層」(バレエで123名(対全体16.5%)、腕時計で134名(同13.3%))、

「無関心層」(バレエ 87 名(11.7%)、腕時計 140 名(13.9%))、「高関与層」(バレエ 113 名(15.1%)、腕時計228名(22.6%))となった。

図表6-17 予備調査によるバレエ各写真の位置づけ

図表6-18 予備調査による腕時計各写真の位置づけ

各写真の典型性、具体性が態度に与える影響を検討するために、態度を従属変数、知覚 典型性、知覚具体性を独立変数とする重回帰分析を行った(図表6-19, 20)。すべての写真 で知覚典型性、知覚具体性から態度に対する標準偏回帰係数が正の値でかつ、0.1%の水 準で有意となった。写真毎の重回帰式もすべて0.1%の水準で有意となった。知覚典型性、知 覚具体性は、態度へ直接的な影響を持つことが確認された。

女性著 名 ダン サー

図表 6-19 バレエ 各写真への態度を従属変数とする重回帰分析 知覚典型性 知覚具体性 R2 調 整 済

R2

モデルの 有意確率 標準化β 有意確率 標準化β 有意確率

Gis .320 p<.001 .572 p<.001 .640 .639 p<.001 St .273 p<.001 .634 p<.001 .618 .617 p<.001 Mono .374 p<.001 .492 p<.001 .606 .605 p<.001 Zak .282 p<.001 .623 p<.001 .622 .621 p<.001 Swan .341 p<.001 .570 p<.001 .569 .567 p<.001 Red .350 p<.001 .557 p<.001 .602 .601 p<.001 K .411 p<.001 .499 p<.001 .659 .658 p<.001 Park .346 p<.001 .532 p<.001 .590 .588 p<.001 Car .528 p<.001 .377 p<.001 .539 .537 p<.001 図表 6-20 腕時計 各写真への態度を従属変数とする重回帰分析

知覚典型性 知覚具体性 R2 調 整 済 R2

モデルの 有意確率 標準化β 有意確率 標準化β 有意確率

GSF .506 p<.001 .381 p<.001 .613 .611 p<.001 ASB .480 p<.001 .396 p<.001 .605 .603 p<.001 GSB .435 p<.001 .491 p<.001 .694 .692 p<.001 ASG .477 p<.001 .426 p<.001 .571 .569 p<.001 GSM .456 p<.001 .431 p<.001 .611 .609 p<.001 GSS .388 p<.001 .484 p<.001 .592 .591 p<.001 BGY .527 p<.001 .396 p<.001 .658 .657 p<.001 ASC .390 p<.001 .552 p<.001 .698 .697 p<.001 BGT .318 p<.001 .586 p<.001 .645 .644 p<.001 ASJ .457 p<.001 .494 p<.001 .666 .664 p<.001 BGG .471 p<.001 .424 p<.001 .633 .631 p<.001 BGM .366 p<.001 .494 p<.001 .602 .600 p<.001

研究-1: 典型性と具体性の態度への影響 6.8.

初めに、従来の定説の問題点を明確にするため、以下の仮説(H1)を検証する。予備調査 で得られた写真の位置づけ(図表6-17, 18)に従い、該当する写真データを典型性、具体性 の4象限に当てはめて、以下の検定を行った146

【仮説1】

H1a:典型性は態度に正の影響を及ぼす。

H1b:具体性は態度に正の影響を及ぼす。

H1c:典型性の態度に及ぼす影響は、セグメントにより異なる。

バ レ エ で 分 散 分 析 の 結 果 、 典 型 性 と 具 体 性 に 有 意 な 交 互 作 用 が 見 ら れ た

(F(1,4335)=144.94, p<.001)。このため、単純主効果の検定を行った。その結果、具体性が 低い群における典型性の単純主効果が有意であった(F(1,4335)=314.94, p<.001)のに対し、

具体性が高い場合は有意とはならなかった(F(1,4335)=0.51, n.s.)。また、典型性が低い群 における具体性の単純主効果が有意であった(F(1,4335)=264.18, p<.001)のに対し、典型 性 が高 い場 合 は有 意 とはならなかった(F(1,4335)=0.60, n.s.)。このことからバレエでは、

H1aは具体性が低い場合に支持される結果となり、H1bは典型性が低い場合に支持される結 果となった(図表6-21)。

次に、高関与層、無関心層、拒否層のセグメントと典型性について分散分析を行った。その 結果、典型性と消費者セグメントに有意な交互作用が見られた(F(2,1864)=36.18, p<.001)。

このため、単純主効果の検定を行った。その結果、高関与層における典型性の単純主効果が 有意であった(F(1,1864)=119.53, p<.001)のに対し、無関心層(F(1,1864)=2.05, n.s.)、

拒否層(F(1,1864)=0.10, n.s.)は有意とはならず、平均値の差も極めて小さく(無関心層で

0.114, 拒否層で0.021)、典型性による影響は見られなかった(図表6-22)。従ってH1cは、

支持された。

腕時計の分散分析の結果、典型性セグメントと具体性セグメントに有意な交互作用 が見ら れた(F(1,2444)=65.97, p<.001)。このため、単純主効果の検定を行った。その結果、具体 性が低い群における典型性の単純主効果が有意であった(F(1,2444)=193.37, p<.001)の に対し、具体性が高い場合は有意とはならなかった(F(1,2444)=1.54, n.s.)。また、典型性が 低い群における具体性の単純主効果が有意であった(F(1,2444)=125.04, p<.001)のに対し、

典型性が高い場合は有意とはならなかった(F(1,2444)=0.48, n.s.)。このことから仮説1は、

腕時計でもバレエと同様に、H1aは具体性が低い場合に支持、H1bは典型性が低い場合に 支持される結果となった(図表6-23)。

次に、消費者セグメントを高関与層、無関心層、拒否層に絞り分散分析を行った結果、典 型性セグメントに主効果(F(1,1244)=47.52, p<.001)と、消費者セグメントに主効果が見られ

図表 6-23 腕時計の例:典型性の影響 図表 6-24 腕時計の3セグメント比較

た(F(2,1244) =43.51, p<.001)。交互作用は見られなかった(F(2,1244)=1.34, n.s.)。すべ ての消費者セグメントにおいて典型性の正の効果が見られるとともにセグメント間で有意な差 が見られた。従って、H1cは支持された(図表6-24)。

以上のことから、典型性が高まっても態度が強くならない場合があることがわかった。次に、

セグメント別の典型性と具体性の効果を見るために、以下の仮説検定を行った。

【仮説2~4】

H2:カテゴリー高関与層では、

H2a:典型性が低い条件では、具体性は態度に正の影響を及ぼす。

H2b:典型性は具体性にかかわらず態度に正の影響を及ぼす。

H3:カテゴリー無関心層では、

H3a:典型性が低い条件では、具体性は態度に正の影響を及ぼす。

H3b:具体性が高い場合、典型性は態度に影響を及ぼさない。

H3c:具体性が低い場合、典型性は態度に正の影響を及ぼす。

H4:カテゴリー拒否層では、

H4a:典型性が低い条件では、具体性は態度に正の影響を及ぼす。

H4b:具体性が高い場合、典型性は態度に負の影響を及ぼす。

H4c:具体性が低い場合、典型性は態度に正の影響を及ぼす。

バレエについて、典型性と具体性による2要因の分散分析を消費者セグメント別に行った。

この結果、高関与層では、典型性と具体性に有意な交互作用が見られた(F(1,652)=10.61, p<.01)。このため、単純主効果の検定を行った。その結果、典型性が低い群における具体性

無関心層では、典型性と具体性に有意な交互作用が見られた(F(1,498)=21.15, p<.001)。

単 純 主 効 果 検 定 の 結 果 、 典 型 性 が 低 い 群 に お け る 具 体 性 の 単 純 主 効 果 が 有 意

(F(1,498)=30.73, p<.001) 、 具 体 性 が 低 い 群 に お け る 典 型 性 の 単 純 主 効 果 が 有 意

(F(1,498)=26.59, p<.001)であったのに対し、具体性が高い場合は有意とならなかった。典 型 性が上がっても態 度に変 化がないのは具 体 性が高い時のみとなることから、H3a, H3b, H3cは共に支持される結果となった(図表6-26)。

拒 否 層 に お い て 、 分 散 分 析 の 結 果 、 典 型 性 と 具 体 性 に 有 意 な 交 互 作 用 が 見 ら れ た

(F(1,708)=33.88, p<.001)。単純主効果検定の結果、典型性が低い群における具体性の単 純主効果が有意(F(1,708)=66.85, p<.001)、具体性が低い群における典型性の単純主効 果が有意(F(1,708)=26.60, p<.001)、具体性が高い場合も有意となった(F(1,708)=9.45, p<.01)。認知要素の具体性が高い条件下であるが、典型性と認知要素への態度に負の関係 が拒否層においてはっきりとみられた。具体性が低い場合は逆に典型性と正の関係となった

図表6-25 H2:バレエ(高関与層)

(図表6-27)。このことから、H4a, H4b, H4cは共に支持された。なお、交互作用の解釈につい ては、この項で後述する。

腕時計の高関与層では、分散分析の結果、典型性と具体性に有意な交互作用が見られた

(F(1,545)=9.97, p<.01)。このため、単純主効果の検定を行った。その結果、典型性が低い 群における具体性の単純主効果が有意(F(1,545)=23.17, p<.001)、具体性が低い群にお ける典型性の単純主効果が有意(F(1,545)=46.46, p<.001)、具体性が高い場合も有意の 傾向となった(F(1,545)=2.89, p<0.1)。このことからH2a, H2bは支持される結果となった(図 表6-28)。

無関心層では、分散分析の結果、典型性セグメントと具体性セグメントに有意な交互作用 が見られた(F(1,346)=25.30, p<.001)。このため、単純主効果の検定を行った。その結果、

典型性が低い群における具体性の単純主効果が有意(F(1,346)=47.47, p<.001)、具体性 が低い群における典型性の単純主効果が有意(F(1,346)=49.03, p<.001)であったのに対し、

具体性が高い場合は有意とならなかった(F(1,346)=0.47, n.s.)。典型性が上がっても態度に 変化がないのは具体性が高い時のみとなることからH3は、具体性が高い時のみ支持され、

H3a, H3b, H3cは共に支持される結果となった(図表6-29)。

腕時計拒否層では、分散分析の結果、典型性セグメントと具体性セグメントに有意な交互 作用が見られた(F(1,347)=29.08, p<.001)。このため、単純主効果の検定を行った。その結 果、典型性が低い群における具体性の単純主効果が有意(F(1,347)=29.98, p<.001)、具体 性が低い群における典型性の単純主効果が有意(F(1,347)=35.63, p<.001)、具体性が高 い場合も有意となった(F(1,347)=4.65, p<.05)。認知要素の具体性が高い条件下であるが、

典型性と認知要素への態度に負の関係が拒否層においてはっきりとみられた。具体性が低い 場合は逆に典型性と正の関係となった(図表6-30)。このことからバレエと同様、H4は、具体性 が高い時に支持される結果となり、H4a, H4b, H4cは共に支持された。