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研究4 妥当性の検討 -他尺度との関連の検討-

第5章 誘惑対処方略の抽出と尺度の作成

第3節 研究4 妥当性の検討 -他尺度との関連の検討-

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度(小浜, 2010)では,大学生が学業課題を先延ばししたときに,その前・中・後の3時点 で生じる意識の感じやすさを測定している。具体的には,“先延ばし前の意識”として“先 延ばし前の否定的感情”(例:課題に取り組む前に,逃げ出したいほど課題が辛くなること がある),“状況の楽観性”(例:後で課題をやればいいと楽観的に考えやすいほうだ),“計 画性”(例:課題に取り組む前に,課題をするときとしないときの時間配分を考えておく)

の3つの下位尺度,“先延ばし中の意識”として“先延ばし中の否定的感情”(例:課題を やっていないと後ろめたさを感じてしまう),“先延ばし中の肯定的感情”(例:試験期間中 でも,課題をやっていないときは気楽であると感じる)の2つの下位尺度,“先延ばし後の 意識”として“先延ばし後の否定的感情”(例:なぜ課題をこんなに先延ばしにしてしまっ たのかと思うことが多い),“気分の切り替え”(例:思いきり遊んだ後は,課題に向けてや る気が出る)という2つの下位尺度,計7つの下位尺度を有する。先延ばしはFishbach et al.

(2003)においても誘惑の1つとして用いられているため,本研究では“特定の誘惑を行 う前・中・後の意識や感情の感じやすさ”として扱った。特に本研究では,誘惑の対処に 関連すると考えられる“計画性”,“状況の楽観視”,“先延ばし中の否定的感情”が誘惑対 処方略尺度と関連がみられるかを検討する。まず,“計画性”では,“計画性”の意識が高 いほど対処を必要とする程度を高める可能性があるため,目標達成をすすめるうえで誘惑 対処方略尺度の全ての下位尺度と正の関連がみられると予測した。また,“状況の楽観視”

では,楽観視の意識が低いほど対処方略を使用する程度が高くなることが考えられる。し かしながら,誘惑対処方略尺度の“気分転換方略”は目標と誘惑の両立という内容を含む ため,“状況の楽観視”の意味合いとは概念が異なることが考えられる。そこで“状況の楽 観視”は,誘惑対処方略尺度の“目標意味確認方略”,“誘惑回避方略”,“目標実行方略”

間とは負の関連がみられるが,“気分転換方略”とは関連がみられないと予測した。次に,

“先延ばし中の否定的感情”が高いほど対処方略の使用が動機づけられる可能性が考えら れるため,“先延ばし中の否定的感情”と誘惑対処方略尺度の全ての下位尺度間には正の関 連がみられると考えた。

(2)方法 1)調査対象者

関東圏内の大学生386名(男性200名, 女性182名, 不明4名; 平均年齢19.47歳, SD=1.21)

を対象に調査を行った。

80 2)調査手続き

講義時間の一部を利用して,質問紙調査を実施した。

3)質問紙の構成

誘惑対処方略尺度は研究1と同様に7件法で評定してもらった。その他の尺度は全て5 件法によって評定してもらった。使用した尺度は以下のとおりである。

1. 誘惑対処方略尺度

研究1で作成された20項目(4因子)を用いた。内的整合性は,α =.82~.88と十分な値 であった。

2. 自己調整学習方略尺度

藤田(2010)の自己調整学習方略尺度全15項目(2因子)を用いた。本研究における内 的整合性は順にα =.68, .63とやや低かったが,許容範囲とみなしそのまま使用した。

3. 学業的満足遅延尺度

小川内ら(2010)の学業的満足遅延尺度全12項目(2因子)を用いた。本研究における 内的整合性は順にα =.84, .75と十分な値であった。

4. 先延ばし意識特性尺度

小浜(2010)の先延ばし意識特性尺度全42項目(7因子)を用いた。本研究における内 的整合性はα =.79~.90と十分な値であった。

(3) 結果 1)他尺度との関連

誘惑対処方略尺度の下位尺度と基準変数との間の相関係数を表6-4に示した。

まず,自己調整学習方略尺度との関連に関しては,全ての下位尺度において自己調整学 習方略(努力調整・モニタリング得点, プランニング得点)との間に予測通り有意な正の 相関がみられた。学業的満足遅延尺度との関連に関しても,“課題遂行”と誘惑対処方略尺 度間に有意な正の関連がみられた。”将来展望”と誘惑対処方略尺度間には,“目標意味確認 方略”と“目標実行方略”に有意な弱い正の相関がみられ,“気分転換方略”と“誘惑回避 方略”には有意傾向ではあるが弱い正の相関がみられており,予測は支持されていた。

先延ばし意識特性尺度との関連では,“先延ばし前の否定的感情”は誘惑対処方略尺度の どの下位尺度とも有意な相関はみられなかった。“状況の楽観視”に関しては,“誘惑回避

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努力調整・モニタリング .34 *** .35 *** .31 *** .42 ***

プランニング .31 *** .21 *** .27 *** .28 ***

課題遂行 .36 *** .25 *** .47 *** .47 ***

将来展望 .11 * .10 .10 .12 *

先延ばし前の否定的感情 .01 .05 .00 -.04 状況の楽観視 -.08 .02 -.19 *** -.22 ***

計画性 .34 *** .23 *** .33 *** .29 ***

先延ばし中の否定的感情 .19 *** .14 ** .19 *** .14 **

先延ばし中の肯定的感情 -.02 .03 -.12 * -.09 先延ばし後の否定的感情 .15 ** .16 ** .09 .07 気分の切り替え .16 ** .25 *** .03 .17 **

基準変数 目標意味確認 気分転換  自己調整学習方略

 学業的満足遅延

 先延ばし意識特性

誘惑回避 目標実行 方略”,“目標実行方略”との間に有意な負の相関がみられ予測は支持されていたが,“目標 意味確認方略”との間には有意な相関がみられなかった。“計画性”に関してはどの下位尺 度においても予測通り有意な正の相関がみられた。“先延ばし中の否定的感情”に関しては,

どの下位尺度とも弱い正の相関がみられていた。“先延ばし中の肯定的感情”については“誘 惑回避方略”と“目標実行方略(ただし有意傾向)”に弱い負の相関がみられた。“先延ばし 後の否定的感情”は,“目標意味確認方略”,“気分転換方略”,“誘惑回避方略”と弱い正の 相関を示した(ただし, “誘惑回避方略”との相関は有意傾向)。最後に,“気分の切り替え”

は“誘惑回避方略”以外の方略において有意な正の相関がみられた。“計画性”を除けば,

全般的に先延ばし意識特性と誘惑対処方略尺度との相関は低い値にとどまった。

注1) *p<.05, **p<.01, ***p<.001

注2) 予測と一致する有意な相関を太字で示した。

注) a群:使用高群, b群:誘惑回避高傾向, c群:目標意味確認高傾向, d群:目標実行 低傾向, e群:使用低群

表6-4 誘惑対処方略尺度と基準変数との相関

注) a群:使用高群, b群:誘惑回避高傾向, c群:目標意味確認高 傾向, d群:目標実行低傾向, e群:使用低群

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(4) 考察

本研究の目的は,誘惑対処方略尺度の妥当性を検討するため,誘惑対処方略尺度と自己 調整学習方略尺度(藤田, 2010),学業的満足遅延尺度(小川内・龍・光富・大塚, 2010), 先延ばし意識特性尺度(小浜, 2010)との関連を検討することであった。

まず自己調整学習方略尺度との関連に関しては,誘惑対処方略尺度の全ての下位尺度と 関連がみられ,誘惑対処方略尺度が学業領域において能動的に自己の学習過程を進める際 に使用される学習方略と関連することが示された。

次に学業的満足遅延尺度では,誘惑対処方略尺度の全ての下位尺度と“課題遂行”に関 連がみられた。ただし,誘惑対処方略尺度の下位尺度において,気分転換方略と“課題遂 行”の相関がやや弱かったことに関しては,気分転換方略は目標と誘惑を両立する意味合 いを含むのに対して,“課題遂行”は誘惑よりも目標を優先させる意味合いが強かったこと が考えられる。さらに誘惑対処方略尺度と“将来展望”間は予測通りの結果ではあったが,

相関は妥当な値とはいえなかった。以上のことから,誘惑対処方略尺度と自己調整学習方 略,学業的満足遅延の“課題遂行”間の相関においては,誘惑対処方略尺度の妥当性を支 持する結果が得られた。

先延ばし意識特性尺度との関連では,“先延ばし前の否定的感情”は誘惑対処方略尺度の どの下位尺度とも有意な相関はみられなかった。“先延ばし前の否定的感情”は目標達成に 対する動機づけの低下を意味するものであるが,誘惑対処方略尺度の方略を使う際には目 標に対する動機づけがはじめから高い可能性がある。そのため,自己統制葛藤状況におけ る否定的感情は対処方略の使用に関連をもたなかったことが考えられる。“状況の楽観視”

に関しては,“誘惑回避方略”,“目標実行方略”との間に有意な負の相関がみられ予測は支 持されていたが,“目標意味確認方略”との間には有意な相関がみられなかった。“状況の 楽観視”が将来の楽観的な予測を示すのに対して,“目標意味確認方略”は目標追求の動機 づけを高めるものと考えられ,そのために有意な相関がみられなかったと解釈できるかも しれない。

“先延ばし中の否定的感情”に関しては,どの下位尺度とも弱い正の相関がみられるに とどまった。“先延ばし中の否定的感情”は直接的に誘惑対処と関連しているのではなく,

他の変数(例えば,目標達成に対する意欲)を媒介して間接的に関連している可能性が考 えられ,今後検討していく必要があろう。

“先延ばし中の肯定的感情”と状況的に類似していると考えられる“気分転換方略”と