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第6章 誘惑対処方略の使用・有効性 に関する検討

生理的欲求 68 32 娯楽と生理的欲求

(複数回答) 2 1 その他 5 2 合計 215 100

ありますか?”という教示を行った。6件法(1: 全く行わない – 6: 毎回行う)で回答を 求めた。

(3)結果

本研究の“誘惑の種類”の項目において,“特に誘惑はない”と回答した者はいなかった ため,回答者全員が学業目標と誘惑の葛藤経験があると見なし,引き続き分析を行った。

1)誘惑の種類

誘惑の種類について割合を算出したところ,誘惑として感じている対象の分類は以下の とおりになった(表7-1)。誘惑の対象が“娯楽”であった人が半分以上(61%)いること がわかった。また,次に多く回答されていたのは“生理的欲求(32%)”,続いて“他の目 標や活動(4%)”であった。“その他(2%)”についての自由記述には,“惰性”や“怠け る気持ち”,“感情”があげられていた。

2)モデルの検証

仮説に基づきパス図で表現したところ,図7-1のようになった。そこで,観測変数を用 いて図7-1にそって共分散構造分析を行った。最尤推定法により母数を推定したところ,

適合度指標の値は,χ2=17.63(p=.13),GFI=.98,AGFI=.95,RMSEA=.047であり,モデルと

表7-1 誘惑の種類の割合

注) a群:使用高群, b群:誘惑回避高傾向, c群:目標意味確認高 傾向, d群:目標実行低傾向, e群:使用低群

89 データのあてはまりが良かった。

まず,目標と誘惑の葛藤状況として,“目標強度”と“誘惑強度”間の関連は有意ではな かった(r = -.07, n.s.)。よって仮説1は支持された。次に,“目標強度”から“自己制御”

間への影響に関しては,パスは有意であり正の影響がみられていた(β =.41, p<.01)。さら に,“自己制御”から“目標関連行動”への影響に関してもパスが有意であり,正の影響が みられていた(β =.44, p<.01)。“目標強度”,“自己制御”,“目標関連行動”までのパスにつ いては,仮説2,仮説3がともに支持された。一方で,“目標強度”から“目標関連行動”

の直接効果は有意ではなく,仮説4が支持された(β = -.04, n.s.)。つまり,“目標強度”か ら“目標関連行動”までの直接効果よりも,自己制御として“誘惑対処方略”を媒介した ときに,“目標関連行動”に対して正の影響がみられていた。また,“誘惑強度”から“目 標関連行動”への影響は有意傾向ではあるが,負の影響がみられていた(β =.10, p<.10)。 なお,“誘惑強度”から“自己制御”のパスを加えたモデルの検討も行ったが,適合度が低 かったため,図7-1のモデルには組み込まれなかった。その際,“誘惑強度”から“自己制 御”のパスは有意ではなかった(β = -.07, n.s.)。

目標強度

誘惑強度

意味確認方略 気分転換方略 誘惑回避方略 目標実行方略

目標関連行動 .41** 自己制御

.58** .49** .64**

.77**

.44**

-.04

-.11 -.07

図7-1 自己制御プロセスに関する因果モデルと分析結果

注) a群:使用高群, b群:誘惑回避高傾向, c群:目標意味確認高 傾向, d群:目標実行低傾向, e群:使用低群

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(4)考察

本研究では,自己制御プロセスを想定したモデルを構成し,誘惑対処方略の有効性の検 討を行うことを目的とした。仮説に基づき,自己制御方略として誘惑対処方略を組み込ん だモデルを検証したところ,以下のことが示された。a) 誘惑強度と目標強度間の関連は見 られなかった。b) 目標に対する強度が高いほど,全般的に誘惑対処方略の使用は高まるこ とが示された。c) 全般的に誘惑対処方略の使用が高いほど,目標関連行動の頻度も高まっ ていた。d) 目標から目標関連行動までの直接効果は有意ではなかった。a) については,

目標と誘惑がそれぞれ独立であることを意味しており,仮説1を支持する結果であった。

次に,b) ,c) ,そしてd) については,目標に対する強度が高いことは,誘惑対処方略の 実行を高めるが,直接的には目標関連行動の頻度に間接効果で影響を及ぼすことが示され た。つまり,追求している目標に対して重要度やコミットメントが高いことは,自己統制 葛藤状況に直面したときに誘惑対処方略の使用を高めることを通して,目標関連行動の頻 度を高めるということが考えられる。しかしながら,誘惑対処方略の使用は,目標関連行 動の頻度を高めるため,誘惑対処方略の使用を媒介することで目標関連行動の頻度が高め られるといえるだろう。よって,仮説2,仮説3,仮説4は支持された。これらの結果は,

誘惑対処方略の全般的な有効性を支持している。ただし,本研究の結果は,全般的な誘惑 対処方略の有効性であり,4つの下位方略がどのように目標関連行動に影響するのかにつ いては,検討が必要であろう。特に,下位方略は,状況によって有効性が変化する可能性 が考えられる。例えば,ある状況においては,目標意味確認方略が有効に働くが,気分転 換方略は有効に働かないといったことが生じるかもしれない。状況による誘惑対処方略の 有効性の変化については第7章で検討を行う。

最後に,本研究で検討した自己制御プロセスモデルは,類似したプロセスモデルで検討 を行っているHofmann et al.(2012)や尾崎・小林(2013)と同様の結果であった。上記の 先行研究では,“目標関連行動”ではなく,“誘惑(または欲求)に従う頻度”を尋ねてい るが,“目標の強度”から“自己制御”までのパスは正の影響であり,“自己制御”から“誘 惑に従う頻度”までのパスは負の影響であり,本研究の結果と支持するものであった。ま た,“誘惑強度”から“自己制御”のパスは有意ではなかった点に関しても,同様の結果で あったため,本研究で行った自己制御プロセスモデルの検討は,先行研究と一致するもの であり,誘惑対処方略の有効性を検討するモデルとしては妥当であったといえるだろう。

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