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      第三章研究仮説

第一節 聴覚障害の因子の学習環境と学習動機への影響

その潜在的な目標構造を学習者が認知し個人内で評価する。次に動機づけ段階では、そ の知覚された目標構造を基に学習者自身の目標を形成する。そして、行動段階ではその 目標の選択がやがて学習パターン(学習へ従事するか、離反するか)を決定するという ものである(Roesear,Marachi&Gehlbach,2002)104。

客観的環境 0bjective

Env l ronment

学習活動と文脈

(目標構造の実 →   態)

主観的環境 Subjective

Env i ronment

知覚された目標         →   構造

動機づけ

0t i Vat i On

個人の目標

 行動 Behavior

   学習パターン

→  (学習への従事     と離反)

ngure1目標理論の立場から見た学習場面における学習者の動機づけへのプロセス(訳 語は三木・山内(2003)105を引用)

 この図から、学習環境と学習動機の関係を考えることができるだろう。学習環境にい る学習者は、学習環境の刺激を受け、知覚された刺激反応を基に、学習動機を個人内に 発現する。そしてその学習動機を基に学習行動が決まるのである。単純に考えれば、学 習環境という変数を考えると、その学習環境の変数が変化したとき、その都度学習動機 は変数として、変化に応じてその内容を変えるという単方向的な関係を考えることがで きる。それでは、聴覚障害という因子をこの図に当てはめたとき、どのような関係図に なるのだろうか。すでに、第二章「学習環境」の章で、学習環境における聴覚障害の因 子の役割について述べたので、ここに改めて表としてまとめると次のTab1e7のようにな

る。

104 qoeser,R.W,Marachi,R.,Gehlbach,H.(2002).ノgooJ肋eoψρerΨec伽e o〃eoo加rポ

〃ψ∫sわm am伽e∫0 伽。ome舳ψ吻。 ng.ln C,Midgley(Eds),Goals,goa1structures,

and pattems ofadaptive learning.Lawrence Erlbaum Associates,New jersey,205−241・

lo5O木かおり・山内弘継(2003)学習環境と児童・生徒の動機づけ.心理学評論,46(1),

58−75.

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第一節 聴覚障害の因子の学習環境と学習動機への影響

Tab1e7学習環境における聴覚障害因子の役割 因子名       影響先

属性としての聴覚障害

価値付けられた聴覚障害

学習者

学習環境

機能

学習環境にいる学習者が学習活動を行うにあ たり、活動に変化・制約を加える

社会的価値観を学習環境に付与する

 この二つの聴覚障害因子を、学習環境と学習動機の関係図に当てはめると、次の行gure 2のようになる。「属性としての聴覚障害」因子は、主観的環境に対応する。主観的環境 は、客観的環境の刺激に対する学習者の知覚した刺激反応であるので、よって聴覚障害 の因子が学習者の聴覚の知覚に制約を加えることを考えることができる。聴覚低下とい う個人内事象は、全員に均一的な客観的環境からの刺激に対しその刺激入力が限定され る。例えば、教師の音声による説明のとき、入力の制約が加われば、説明を充分に知覚 することができず、結果として主観的環境段階で情報漏れや目標構造の欠陥が起こりう るだろう。またこれは、聴覚障害や視覚障害など感覚・知覚の障害に共通する影響内容 と考えてよい。

 次に、「価値付けられた聴覚障害」因子は、客観的環境に対応する。客観的環境は、そ の学習環境にいる学習者全員に」様に働きかける客観的な刺激であるので、聴覚障害の 因子は、障害観として「社会の持っ障害に対する価値観」を学習環境に付与する。上農

(2004)l06は、フーコーの科学認識論を用いて、価値付与するときにおけるその主体者 は、関係性や条件や構造や歴史というものが介在していることに触れ、「教育的文脈」と

「医療的文脈」が聴覚障害の持っ身体状況を「障害」として価値付与するとした。特に、

医療的文脈は「リスクコミュニケーション」というリスク(損失)とベネフィット(便 益)が厳しく検証され、より客観的・科学的な手続きを踏むことを必要とする。そのた め、「聞こえないこと」を「劣等で、異常な、問題のある身体」と認識し、その上で医療 的対応を踏まえることにより成果を得る医療的文脈による価値付与の影響は大きい、と

している。例えば、聴覚障害児の多くが装用している補聴器の存在は、「耳が聞こえない」

ということに問題意識を持つため、聴力補償することにより聴力を回復する、というこ とを暗に意味している。よって、「補聴器をつけなさい」という何気ない両親や教師の言

106 續̲正剛(2004)障害認識に対する二つの誤解について、九州保健福祉大学研究紀要,

5,215_224.

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第一節 聴覚障害の因子の学習環境と学習動機への影響

葉も、聴力障害を障害とすることを背景に、一定の価値観を含蓄する言葉として映るだ ろう。このように、教育的文脈や医療的文脈といった背景を基に、価値付けられた聴覚 障害観を学習環境に付与することも、一つの聴覚障害因子の機能として考えることがで きる。この「価値付けられた聴覚障害」という因子は、複雑な社会からの価値付けが行 われ、国家レベルでの障害に対する態度から、学校全体レベル、学級集団レベルまで幅 広い社会集団から聴覚障害に対する障害観を決定づけることになるだろう。

客観的環境

01〕ject i ve Env i ronment

学習活動と文脈

(目標構造の実   態)

主観的環境 Subjective Envi ronment

知覚された目標         →   構造

動機づけ 0tiVatiOn

個人の目標

 行動

Behav i or

   学習パターン

→  (学習への従事     と離反)

   f      ↑

価値付けられた    屈性としての  聴覚障害観      聴覚障害

       igure2聴覚障害を持つ学習者の動機づけへのプロセス

 このように、二つの「属性としての聴覚障害」因子と「価値づけられた聴覚障害」因 子は、聴覚障害を持つ学習者が学習する上で影響する点となる。したがって、学習環境 の振る舞いや変化が個人の持っ動機付けにも影響を与えるだろう。改めて、この視点で 聴覚障害児の学習動機について考えるとき、その聴覚障害児が帰属する学習環境の構造 からどのような刺激を受けるかについて考える必要が出てくる。もし、ある学習動機を 生起したら、その学習環境に何があったのか、何がなかったからか、学習環境を構成す る要素の有無と結びつけることができる。その中で、特定の要素を持つ学習環境では、

それに応じた学習動機が生起するという、「学習環境の構成と要素」と「聴覚障害児の学 習動機」の間に、関係を見出すことができる。そこで、この二つの関係を考慮した上で 聴覚障害児の学習動機について具体的に考えてみたい。

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