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研究の総括

ドキュメント内 中学生の創造性と不安の関係に関する一考察 (ページ 107-111)

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第1節 研究の総括

終章 研究の総括と今後の課題

いては、その不安が高いほど非同調的な態度をとることがわかった。こ のことから、第1章で創造能力と視線や疎外感による不安とが負の相関 を示したのは、視線や疎外感による不安が非同調的態度を抑制している ためではないかという推論を行った。ただ、視線や疎外感による不安が 高いほど、柔軟的な態度をとることもわかり、仮説は、必ずしも支持さ れないことがわかった。

 第3章では、自尊感情が創造性と不安にどのような影響を与えるかを 分析した。第1章で創造能力と劣等感による不安との間に負の相関が認 あられたことから、劣等感の裏返しの概念である自尊感情は、不安によ る創造性阻害を抑制するのではないかという問題意識によるものであ る。その結果、自尊感情は創造性と正の相関、不安とは負の相関がある ことがわかった。また、自尊感情は、不安による創造的態度の阻害を抑 制し、不安による創造的態度の高揚を促進することがわかった。

 第4章では、教師による生徒の創造性と不安に関する認知傾向を分析 した。その結果、創造的態度では非同調性・柔軟性、不安では視線や疎 外感による不安が、教師によって認知されにくいという結果が出た。また、

女子よりも男子、成績下位者よりも上位者において、その傾向が強いこと がわかった。また、創造的態度と不安の関係については、教師は不安によ る創造的態度の阻害をやや楽観的に見る傾向があり、両者の関係の見方が 一面的であることがわかった。

 第5章では、日常の学校教育で創造性の育成や不安の低減を意図して行 われている教育活動の効果を、小集団活動における非同調性の高揚のため の工夫を例に、実験的に検証した。その結果、個人思考のとき具体的なア イデアを例示したり、小集団での話し合いとき批判を禁止したりすること は、非同調性を高める効果はないこと、個人思考のときに具体例とともに

思考の方略を示せば、それによって考え出したアイデアに自信が持て非同 調性が高まることなどが明らかになった。

6−1−2 全体考察

 以上の結果、研究全体を通して、次のような3点の考察を行った。

第1に、非同調性と柔軟性という両義性をもつ創造的態度のとらえかた についてである。

 本研究においては、非同調性と柔軟性という2つの創造的態度は、視 線や疎外感による不安との関係が、正反対であることがわかった。つま り、視線や疎外感による不安が柔軟性を高めている一方で非同調性を低め ていると推測される。序章において、日本人の創造性に関して恩田と乾 とを例に2つの対立する主張を述べたが、まさにこの両義性を表してい たものであるといえる。必ずしも単に不安を低減すればよいのではなく、

その両義性を生かす手立てを講じなければならない。

 第2に、消極的施策から積極的施策への転換の必要性についてである。

 創造性の阻害要因の除去によって創造性を伸長させようという発想 から、創造性と不安の関係を分析するうち、創造性そのものを向上させ る積極的で具体的な手だてをとっていく必要があることがわかった。

 まず、創造性の情意的側面から言うと、不安の低減よりも、不安をコン トロールする力の育成の必要性である。上述したように、創造的態度の両 義性を生かすためには、単なる不安の低減よりも、自尊感情の高揚を図る

ことなどによって、不安を適度な刺激として利用できるようにすること に、重点を置くべきである。それは、環境の統制が可能な学校の中にお いては不安の低減をめざした配慮はある程度できるが、実社会に出てか

らはそういう保障はないという意味からも、重要であると思われる。

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 次に、創造性を認知的側面から言うと、引き出す教育から育てる教育 への転換の必要性である。創造性を先天的なものが大きいと考えている 教師は多い。しかし、思考方略の提示がアイデアの質や量及び非同調的 態度の高揚をもたらした結果や、賞賛による自信より満足による自信が より非同調的な態度を生んだ結果を見ても、能力の育成は可能であり、

その具体的手だてを講じていくことは、生徒の自己実現を支援していく 上でも大切なことと考える。

 第3に、教師による生徒の認知についてである。

 女子よりも男子において、生徒の創造性と不安の関係に対する教師の 認知がなされていないのは、女子の不安が相対的に高いのはもちろんで あるが、男子が女子に比べ活発で表面的に不安が表れにくいこともその 一因であると推察される。

 また、学業成績の下位者よりも上位者において、生徒の創造性や不安 に対する教師の認知がなされていないのは、教師が生徒を学業成績のみ で評価しすぎる傾向を表しているのではないかと思われる。

 さらに、上述した非同調性と柔軟性の2つの創造的態度と視線や疎外 感による不安について、いずれも教師による生徒の認知があいまいであ ったことは、興味深いと同時に創造性の育成において重大な問題を含ん でいるといえる。つまり、これらの認知がなされていないということは、

阻害要因としての不安を除去したり、促進要因としての不安を生かした りすることが、教師には難しいことを意味しているのである。

 したがって、教師は生徒の創造的態度や不安を認知するための何らか の具体的手だてを講じる必要性がある。

ドキュメント内 中学生の創造性と不安の関係に関する一考察 (ページ 107-111)