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第5章  創造的態度の高揚を意図した実験的研究

第1節  問題

表5−1−1 日常の教育活動における創造性育成の工夫

面 認 知 的 側 面

情 意 的 側 面

教育の方法 指導的方法

○授業中や学級通信の内容に、よい発 想や誰も考えないような内容を取り 上げて紹介する。

○教師自身が不思議に思ったこと驚 いたことを、たくさん話してみる。

○話題になっていること面白いこと を、教室に掲示したり話したりする。

話題を提供する。

○レクレーションの時間に発想の転 換が必要なパズルやクイズを用いる

○数学のいろいろな問題の解き方を

紹介する。

支援的方法

○広い視野で物事を考えられるよう に指導・助言する。

○すべて教師が準備してやるのでは なく、自分で考えさぜる場面を多く取

り入れている。

○思っていることを書く時間を多く

とる。

○考え方のポイントをプリントなど にまとめて示す。

教育の対象 直接本人に対するもの

○独創性を周りの生徒にも紹介し、よ  り自信をつける。

○授業中発見的な意見を言った人  に、将来の有望性を語る。

○生徒の創造に対し、驚きの表情を忘  れない。

○個々の生徒の良さを認め、声掛けを したり、後押しをする。

○発明家の発想がちょっとした発想  の転換によることを紹介する。

環境に配慮するもの

 よい点だけを評価さぜるようにし

ている。

○必ず自分の考えを書いてから話し  合わさせる。

 生徒の発言や行動を、全部は否定し

ない。

○奇抜な発想を奨励する。

○歴史上の人物が、当時の社会では必 ずしもよい評価を受けていなかったこ となどを話す。

5−1−2 創造性育成のための先行研究

 創造性開発法として、これまでにさまざまな試みが行われている。その うちのいくつかの方法について、その効果を検討してみたい。

 まず、表5−1−1と同様の方法でそれらを分類してみると、表5−1−2のよう

になる。

表5−1−2 創造性育成のための方法 教育の方法

指導的方法 支援的方法

認知的

、面

モデリング チェックリスト法

創造的思考プログラム

KJ法

創造性の側面

教育の対象

本人に対するもの 環境に対するもの 情意的

、面

セルフサイエンス ブレーンストーミング

カウンセリング シネクティクス

 下線部の方法について、その方法と期待される効果を簡単にまとめる。

① モデリング

 他者がそれを模倣することを期待して、他者に望ましい行動を意図的に提 示することをモデリングといい、さまざまな教育活動においてその有効性が 確認されている。創造性教育の面から考えると、他者の思考内容や思考方法

の模倣によって思考の広がりが得られる点で、効果が期待できる。

② チェックリスト法

 Osborn, A. F.の開発した方法で、「他の用途に使えないか」「拡大した ら・縮小したら」など、発想の方略を示したチェックリストを利用して思 考する。人間はどうしても固定観念などで思考が枠内に閉じ込められがち であるが、チェックリストにしたがって視点や観点を変えられる点で、効 果が期待できる。

③ セルフサイエンス

 EQ(emotional intelligece)の高揚をめざして行われる授業で、情動 を自己認識したり情動をコントロールする訓練を行う。まだ始まったばかり の取り組みで、しかも継続指導を必要とするが、創造性の情意的側面の阻害 要因除去に効果的と思われる。

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④ブレーンストーミング

 ブレーンストーーミングは、Osborn(1957)が開発した創造性開発法の一種 であり、次の4つの原則に従って行う集団思考の形式である。

ア 問題は多角的であり、解決法はいくつもある方が良い。アイデアの量を奨励する。

 内面的に評価するのを抑制し、量から質へ導く。

イ 相互に批判・禁止は許さない。アイデアを生み出すことより、アイデアを防衛す  ることに心を向けてしまうからである。ただし、最終的には評価を行う。

ウできる限り突飛で奔放なアイデアを考えるように奨励し、心の中で内面的に判断  してしまうのを減少させる。参加者は自由で許容的な雰囲気の中におかれる。

工 他人のアイデアの借用は許される。他人のアイデアに基づいて、アイデアを唱い  たり変更したりする

 集団思考においては、評価を懸念して、思考の枠を狭めたりアイデアを 出さなかったりしがちになる。その点ブレーンストーミングでは、評価禁 止、奇抜さの奨励などにより、評価懸念による阻害を防ぐ効果がある。

5−1−3 実験研究の動機

 以上、創造性育成のための試みについて、教育現場での実践と創造性研究 の理論の双方から触れてきたが、本研究で明らかにしてきた創造性と不安の 関係という情意的側面に焦点を当てると、これらの方法は本当に効果的とい えるのであろうか。次節では、具体的な小集団による話し合い場面で、上記 の方法の効果を実験的に検証する。

 ここで、本章において「集団思考におけるアイデアの表出場面」を設定し た理由を4点挙げる。

 第1に、表出は不安の影響を強く受けると考えるからである。つまり、創 造性は表出されてはじめて社会的に意味を持つが、日本社会の現状を見ると、

その表出時に社会的な圧力が大きい。たとえば、個人的には優れたアイデア

を持っている生徒が、集団の中では発言などを控えその力を発揮しないこと などは、不安の影響を強く受けているものと思われる。

 第2に、収束思考によって拡散思考が阻害されると考えるからである。現 実社会では拡散的思考のみ必要な場面は少なく、常に、拡散的思考と収束的 思考の両方がはたらくという場合が多い。たとえば、 「新聞紙には読む以 外にどんな使い道があるか。」「親指が2本になったら、どんなことが起こ るか。」なら、ほぼ拡散的思考のみがはたらくが、「この町を活性化させる アイデアはないか。」「文化祭をたくさんの人に見てもらうにはどうすれば よいか。」などには、『活性化させるには』『たくさんの人に見てもらうに は』という条件が加わり、このことが収束的思考を必要とする。情意的な要 因による阻害は、拡散的思考だけなら少ないが、この収束的思考が加わるか

らこそ多いと思われる。

 第3に、集団思考場面では他者介在不安の影響が大きいと考えるからであ る。吉本は「集団化の進んでいない学級では、班での話し合いや討議を導入 しても、いわゆるく優児〉中心に意見がまとめられてしまい、結局は、一斉 授業の場合と本質的に同じ結果になることがしばしばである。班の意見とし て発表されても、その内容は二二による公式的な見解にすぎず、子ども一人 一人の個性的な認識や、各人の生活台からの発想法ではないという場合も多 い。」*40というように、集団内の交互作用により思考に影響が出るのは、不 安などの情意的側面が大きく影響していると思われる。

 第4に、独創的な天才の時代から集団天才の時代に移ったといわれる現 代は、企業などの創造活動においても、QCサークルなど集団活動の成果が あらわれている。学校教育においても、小集団による活動を意味あるものに するための研究が緊要である。その意味でも、集団思考場面で不安などが創 造性に与える影響を明らかにすることは、大きな意義があると思われる。

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