第4章 教師による中学生の創造性と不安の認知
第1節 教師による中学生の創造性の認知
4−1−1 目的と方法
(1)目的
教師は、中学生の創造性を、どのような能力ととらえ、どのような態度 と関係していると思っているかを分析する。また、そうした認知傾向が生 徒の性別、学業成績によって違いがないかも合わせて検討する。
(2)方法
① 教師による生徒の創造性認知得点の算出 ア 手続き
教科担任教師に、担当生徒について、創造能力が高いと思うかどうかで
名簿に○×をつけてもらう。○を1点、空欄を0点、×を一1点に換算し て生徒ごとに平均点を出し、この得点を教師による創造性認知得点とした。
教示は次のように行った。
「次の⊂⊃の中のような能力が高いと思う生徒に○、能力が低いと思う 生徒に×をつけてください(○×の人数はそれぞれ5〜10人を目安にして ください)。なお、どちらともいえないと思う生徒は空欄にしておいてく ださい。この場合、能力が高いとは、rたくさん考えられる』r多くの視 点からとらえられる』r独自なものを考えだせる』こととします。」
と記し、その下の⊂二⊃にS−A創造性検査C版の設問項目を掲載した。
イ 対象者
創造的態度調査の対象生徒の教科担任教師17名
(1年4名・2年5名・3年8名)
ウ 実施日
平成9年8月
② 教師による創造性認知と生徒の創造能力の関係の分析
教師による創造性認知得点と、第1章第3節で用いた生徒の創造能力、
知能、学業成績との相関を、性別(男・女)、学業成績別(上位・下位)
で比較することで、教師が創造性をどのような能力と認知しているかを分 析する。ただし、他学年は創造性検査を実施していないため、3年生のみ のデータで分析する。
③ 創造性認知得点と創造的態度の関係の分析
教師による創造性認知得点と、第2章第2節で用いた生徒の創造的態度 得点との相関を、性別(男・女)、学業成績別(上位・下位)に比較する
ことで、教師がどのような態度を創造的態度と認知しているかを分析する。
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4−1−2 結果と考察
(1)教師による生徒の創造性認知得点の状況
教師の創造性認知得点の結果を、学年別、男女別に表4−1−1に示す。
表4−1−1教師による生徒の創造性認知得点
学年別 男女別 計
1年 2年 3年 男子 女子 N
Mean
SD
105 107 105 0.05 0.03 0.06 0.33 0.43 0.29
151 0.06 0.39
166 0.04 0.33
317 0。05 0.36
(2)教師の創造性認知得点と創造能力の相関
3年生のみを対象として、教師による生徒の創造性認知得点と生徒の創 造性検査結果、知能検査結果、学業成績との相関係数を算出したものを、
全体(表4−1−2)、男女別(表4−1−3)、学業成績別(表4−1−4)に示す。
(数字は相関係数 有意水準**p<.01*p<.05 †p<.1)
表4−1−2教師による創造性認知得点と生徒の諸能力との関係(全体)
3年生
全体
N
創造能力 知 能 学業成績105
0.38** 0.26** 0.56**表4司一3 教師による創造性認知得点と生徒の諸能力との関係(男女別)
性 別 N
創造能力 知 能 学業成績男 子
女 子
47 58
0。36* 0.26† 0.51**
0.43** 0.25† 0.59**
表4引一4 教師による創造性認知得点と生徒の諸能力との関係(学業成績別)
学業成績 N
創造能力 知 能 学業成績上 位
下 位
51
54
0.37**
0.26†
0.17 0.13
0.46**
0.17
これらの結果から、次のようなことが明らかになった。教師は、生徒の 創造性を、知能とは違ったものとしてとらえているが、実際の創造能力よ り学業成績との関連が強いものと認知していることが分かる。男女別では、
能力的な認知の仕方に大きな違いはないが、学業成績の上位の生徒に対し ては成績が高いほど創造性が高いとみる傾向が強い。
(3)教師の創造性認知得点と創造的態度の相関
教師による生徒の創造性認知得点と生徒の創造的態度の下位尺度得点 との相関係数を算出したものを、全体(表4−1−5)、男女別(表4−1−6)、
学業成績別(表4−1−7)に示す。
(数字は相関係数 有意水準**p<。01*p<.05 †pく.1)
表4−1−5 教師による生徒の創造性認知得点と生徒の創造的態度得点との関係
第1因子第11因子第皿因子第W因子第V因子第V[因子第W因子創造的独立性 探究性非同調性曖昧性 誇示性 執着性 柔軟性 態度計
全校0.32**0.10† 0.26**0.22**0.17**0。09 0.22**0.31**
表4−1−6教師による創造性認知得点と生徒の創造的態度得点との関係
(男女別)
性別第1因子第1因子第皿因子第W因子第V因子第W因子第VI因子創造的 独立性 探究性非同調性曖昧性 誇示性 執着性 柔軟性 態度計
男子0.30** 0.03 0。22** 0.20* 0.18* 0.08 0.14† 0.26**
女子0.35** 0.16* 0.31** 0.24** 0.17* 0.11 0.31** 0.36**
表4一望一7教師による創造性認知得点と生徒の創造的態度得点との関係
(学業成績別)
学業第1因子第1因子第皿因子第W因子第V因子第VI因子第VI因子創造的 成績 独立性 探究性非同調性曖昧性 誇示性 執着性 柔軟性 態度計
上位群0.18* 0.07 0.12 0.14† 0.12 −0.01 0.06 0.16†
下位群0.37** 0.11 0。35** 0.22** 0.12 0.10 0.28** 0.35**
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これらの結果から、次のようなことが明らかになった。
まず、独立性、非同調性、曖昧性、柔軟性については弱い正の相関が認 められ、教師は創造能力と創造的態度との関係を認知していることが分か
る。探究性や執着性において相関が低いのは、教師がそのような態度を把 握できにくいか、あるいは創造性とはあまり関係ないものととらえている
ためと思われる。
次に、性別による違いを検討してみると、探究性や柔軟性が、男子より 女子において強く創造性と結び付けて認知されていることが分かる。
最後に、学業成績の上位群・下位群に分けると、教師は下位群の生徒の 創造性をより創造的態度から見ていることがわかる。これは、成績下位者 の創造性を態度面から評価し伸長させようとしていると解釈できる反面、
成績上位者の創造性が態度面から評価されていないともとることができ る。特に、非同調性、柔軟性において、その傾向が強い。