第2章 中学生の創造的態度と不安の関係
第1節 創造的態度について
2−1−1 創造的態度とは
序章で述べたように、本研究においては、創造性を、教育可能である こと、創造的能力と創造的人格を含めたものであることを前提にして、
その定義を、「個人あるいは社会にとって新しい価値あるものやアイデ アを生み出し、それを表出する能力及び人格」とし、その構造を、図〇
一3−2に示した。
本研究においては、創造的意識と創造的態度をともに創造的人格のあ らわれととらえ、創造性の情意的側面を構成する要素と考える。穐山
(1975)は、性格・態度・意識の違いを次のように説明している。「 な にを、どのように考えるか というときに、 なにを にかかわらずど
う考えるか、また、どう考えるかが決まっているので、 なにを まで も決まってしまうような傾向が、性格といわれて追求される。この な にを をあまり特殊でなく定めて、対象が同じならば、どう考えるかが 一貫しているような傾向は、それによって、その対象がカバーする実際 的な範囲の行動を、予知することができるので、態度といわれて追求さ
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れる。これに対して、 なにを は特定するけれども、特殊なことがら であるので、実際の行動が行われるかどうかは別として、その対象に関 して感じていることが意識である。」*28こうした説明をもとに、筆者 は、創造的態度を「創造的人格が態度面に表出される日常的な行動傾 向」と定義する。
ところで、図0−3−2に創造的意識と創造的態度を入れたのは、情意的 側面における阻害により創造的意識と創造的態度には隔たりがあるの ではないかと考えたからである。つまり、個人的世界にある創造的意識 が、社会的世界に創造的態度として発現するのを、不安が妨げているの ではないかと考えたのである。
2−1−2 創造的態度研究の意義
創造性研究の一領域として、創造的態度の研究があるが,その研究の 意義として、大きく次の3点がある。
第1点は、教育の三二性である。
青柳ら(1980)は、創造的構えテストの作成を試みた理由として、
「人格要因のうち特に、教育可能な創造的態度や構えを取り上げた」*29 といっている。つまり、この研究は現実の教育に役立つような成果を目 指すことができるという点で意義がある。
第2点は、創造能力の発達である。
水野(1972)は、創造性が図2−1−1のように発達すると考え、次の ように説明している。「創造的態度が、潜在能力としての創造能力に働 きかけて、その能力を顕在化して発現させる。このとき、その個人は創 造経験を持ち、その経験が、創造的態度を強化し、このループの繰り返
しによって、全体としての創造性が発達していくと考える。」*30
すなわち、創造的態度の形成を図ることは、創造能力を育成していく ことに結びついているということである。
図2−1−1 創造性の発達過程(水野正憲)
第3点は、創造性研究の具体化である。
岡崎(1992)は、創造性研究に関する文献研究を翻訳した解説の中で、
次のような指摘を行っている。「創造性は単一の能力ではないと考えら れる。つまり創造的能力は、(中略)もっと細くサブカテゴリーに分け、
その一一つ一つのカテゴリーの研究が詳しく進められるべきなのである。
そして、そのサブカテゴリーが、どういう条件では、相関が高くなるの か、また、独立するかなど詳しく研究を進めた上で、それら全部を総括 した創造性の総合的な視点を見つけるべきである」*31。このことを態 一面に置き換えてみると、態度の種類によって不安との関係が異なるこ
とが予想され、創造的態度もその下位尺度ごとに不安との関係を見るべ きであるといえる。
2−1−3 創造的態度研究の問題点
木村・渋谷(1970)*32は、大都市と農村部を含む5つの中学校の中 学1年生974名を対象に、創造的態度尺度を構成し、その信頼性・妥当 性を検討している。この結果、独立的一同調的、自主的一非自主的、革
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新的一保守的など、13の創造的態度の次元があると報告している。こ の研究結果に対して、穐山(1975)は、「その調査項目は、広く人格構 造の中での一般的な態度であり、創造的態度と言わないで 中学生の態 度 というべきだと思う」*33と批判している。このように、創造的態 度といわれるものと創造能力との結びつきについて疑問視する声は多
い。確かに、創造的態度に関する先行研究を見ると、創造能力と創造的 態度の相関係数は0〜0.4の範囲にあり、0.2〜0.3程度の弱い相関を示 すものが多い。その意味では、創造的態度というもの自体が本当に存在 するのかという問題にもなる。
しかし、筆者の経験からしても、教育活動全般において、Aの態度が 聞接的にBの能力を育てているのであって、Aの態度をとる者が必ずB の能力を有するというものではない。やはり創造的態度というものは存 在すると考えられ、先に記した教育的効果から考えても研究の意義は大
きい。
次節では、創造的態度尺度の構成を試みるが、上記の問題を考慮して、
創造能力との相関が極端に低いものについては質問項目から削除した。